澁澤倉庫、今期 中計目標上回る。業域拡大・効率化でカバー
澁澤倉庫では今期の売上高、営業利益、経常利益が2023年度を最終年度とする中期経営計画の目標値を上回る見通しだ。22年度に上昇した海上・航空運賃単価の反動減があるものの、構内作業などの業域拡大やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進による業務効率化・差益率向上でカバーする。国内では危険品倉庫の拡充に加え、物流の「2024年問題」に向けモーダルシフトの推進や荷主への価格転嫁を進める。
今期予想は売上高が前期比0・6%増の790億円、営業利益が4%減の47億円、経常利益が9%減の53億円、純利益が29%減の37億円で、期初予想を据え置いた。売り上げ面では下期から取り扱いを開始する顧客生産拠点の構内作業や新規飲料業務の取り扱い増加などが寄与する見込み。営業面では人件費や陸上運送費の増加に加え、ベトナムの内航船運賃市況の悪化により、持ち分法利益の減少が影響すると想定する。
同社は22年度決算で中計の数値目標を1年前倒しで達成していた。今期は営業利益率が目標値の6・2%を下回るが、中計の目標値である売上高730億円、営業利益45億円、経常利益47億円を上回る見込みだ。
国際輸送については、メインの取り扱いである自動車部品が足元で堅調に推移している一方、航空貨物は半導体関連の落ち込みで物量が前期に比べ半減。コロナ禍にあった緊急輸送の反動減も続いている。
大隅毅社長は20日に東京都内で開いた会見で、「国際物流の低調は想定外のものがあったが、新規ビジネスで7―8割、顧客との条件交渉などで2割程度埋めていきたい。効率化・DX化にも取り組む」と強調した。
国内では、需要が高まる危険物倉庫を相次いで建てる。大阪府茨木市では延べ床面積約850平方メートルの倉庫を23年3月に、神戸市では約1700平方メートルの倉庫を同4月にそれぞれ完成させる計画だ。栃木県芳賀町では延べ床面積約2000平方メートルの倉庫を来年9月に完成させる予定。危険品倉庫としては珍しい定温庫を備え、フレグランスオイルなど高付加価値貨物を取り扱う。自動ラックも導入する。
24年問題については、グループ会社である大宮通運の貨物鉄道事業や日正運輸のフェリー航送などを活用し、長距離輸送でのモーダルシフトを推進する。「長距離輸送では陸上から鉄道、船へのモードの切り替えが増えており、今後業績面でプラスも出てくるだろう」(同)
一方、マイナス面ではドライバー不足による供給力不足や労働時間の減少に伴うコストアップに言及。「足元は顕在化していないが、今後物量が増えていくと業績に影響してくるだろう。当社としてはお客さまに現状をよく理解いただき、(コストアップ分の)転嫁をお願いしている状況だが、足元はそこまでの逼迫(ひっぱく)感が出ておらず、なかなか交渉が進んでいない。これから長い期間をかけて取り組んでいきたい」と話した。