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 印刷 2023年11月16日デイリー版1面

DHL、香港ハブ 第3期稼働。処理能力7割増、ECなど成長取り込む

会見するDHLエクスプレス首脳(左からリー氏、ピアソン氏、コブ氏)
会見するDHLエクスプレス首脳(左からリー氏、ピアソン氏、コブ氏)
式典であいさつするマイヤーCEO
式典であいさつするマイヤーCEO
DHL施設外観
DHL施設外観

 国際エクスプレス最大手DHLエクスプレスが香港で進めてきた、グローバルハブ施設「セントラルアジアハブ」(CAH)の第3期拡張工事がこのほど完了し、14日に全面稼働した。第3期拡張は3億7700万ユーロ(約616億円)の大型投資で、これにより、CAHの処理能力は1日当たり12万5000件と、70%向上する。越境EC(電子商取引)などにけん引された、アジア市場の成長を取り込む。

 香港CAHは、独ライプチヒ、米シンシナティとともに、DHLエクスプレスのグローバルハブを構成する。3グローバルハブと、19地域ハブで、同社取扱量の95%をカバーするという。

 DHLエクスプレスは2017年にCAH第3期計画を発表。当初22年1―3月期の完成を予定していたが、コロナ禍の影響で1年遅れての稼働となった。拡張後のCAHの倉庫面積は従来比50%増の4万9500平方メートル。年間処理能力は従来比50%増の106万トンで、04年の創設時の出荷量から6倍まで向上する。

 業務効率性改善へ、クロスベルト式自動ソーターや6面カメラスキャナーなど、最新鋭の機器を導入している。香港のエクスプレス施設としては初めて、CT(コンピューター断層撮影)エックス線スキャン技術も導入し、検査速度を2倍に向上し、禁制品の迅速で正確な検出も可能になった。

 DHLエクスプレスのジョン・ピアソンCEO(最高経営責任者)ら首脳陣は14日、現地で記者会見を開催。ピアソンCEOは、CAH第3期について「グローバリゼーション、デジタライゼーション、EC、サステナビリティー(持続可能性)の四つのテーマを具体化した施設だ」と語った。

 シンガポールや上海など、アジア域内の主要ハブと比較した香港の優位性については、「アジア太平洋地域の主要都市に4時間で到着する地理的優位性がある。また、香港特別行政区政府が、東莞(広東省)に用地を確保するなど、大陸側と連携してロジスティクス機能を強化する姿勢を示している点も重要だ。香港は(DHLがまとめる)グローバル接続性指数でも、貿易、金融、人材、デジタルサービスなどの分野で高い数値を示しており、グローバルオペレーションのロールモデルの役割を果たしている」と、今後も長期的視点で香港に継続投資していく考えを示した。

 トラビス・コブ執行副社長は「DHLエクスプレスは『バーチャルエアライン』として、自社と18のパートナー航空会社を通じて、300機以上・毎日2400便以上を運航し、500以上の空港をカバーしている」と、同社のネットワークについて説明。また、太陽光発電などにより、CAH第3期では従来施設比で年間850トンのCO2(二酸化炭素)を削減するなど、サステナビリティーの取り組みも紹介した。

 ケン・リー・アジア太平洋地区CEOは同地区でのDHLエクスプレスの優位性を強調した。同地区エクスプレス市場でのシェアは57%に達し、CAH以外にも、韓国・仁川ゲートウエーの拡張が先ごろ完了。マレーシア・クアラルンプールや豪アデレードでも移転・拡張が24年に完了するなど、大規模な投資を進めているという。

 アジア太平洋地区ではCAHに加え、上海、シンガポール、バンコクに地域ハブを置き、アジア域内で毎日690便ものフライトを運航している。リー氏は「CAH拡張によりアジア域内の接続性が改善するため、香港だけでなく、日本やインドなど他のアジア地域の顧客にも多くのメリットをもたらすだろう」と語った。

 DHLエクスプレスは同日、現地で開業式典を開催。DHLグループのトビアス・マイヤーCEOが「拡張による機能強化により、アジア地域の成長を捉えていく」とあいさつした。式典には香港特別行政区の陳国基政務官、香港空港管理局の林天福(フレッド・ラム)CEOら要人も参列。陳政務官は24年までに完成する第三滑走路整備や、ロジスティクス機能強化などに触れ「DHLエクスプレスは(香港の航空センターとしての地位強化という)目標を達成するための重要なパートナーだ」として、CAHの拡張を歓迎した。