CP_Ultra_01now
 印刷 2023年08月25日デイリー版1面

新トップに聞く】飛島コンテナ埠頭社長・西村繁氏、自働化軸にサステナブルな港へ

飛島コンテナ埠頭社長 西村 繁氏
飛島コンテナ埠頭社長 西村 繁氏

 名古屋港のコンテナターミナル(CT)のうち、飛島埠頭南側を管理・運営する飛島コンテナ埠頭(TCB)。日本初の自働化CTとして名古屋港の輸出入を支えるTCBは、今年で設立20周年を迎えた。節目の年に就任した西村繁社長に、抱負や経営方針、次世代CTに向けた取り組みを聞いた。

(聞き手 中部支局・神農達也)

■フロントランナー

 ――社長就任に当たっての抱負を。

 「TCBのミッションをしっかりと引き継ぎ、それを発展させて次につなげるのが私の使命だ。ミッションは自働化を軸に、海側の顧客である船会社、陸側の顧客である荷主に選んでいただけるサステナブルな港となること。遠隔操作RTG(タイヤ式トランスファークレーン)、AGV(自動搬送台車)、これらとガントリークレーン・外来トレーラーの円滑な作業連携を図るJIT(ジャスト・イン・タイム)など、さまざまな港で始まった取り組みを当社は先駆けて導入している。名古屋港、そして日本の港に貢献できるよう、フロントランナーとして走っていきたい」

 ――今後の経営方針は。

 「多くの設備を保有・運用しているため、まずは各設備の予防保全に注力する。現場がある会社なので、基本となる安全・環境、品質、オペレーション、コスト、そして人材育成にしっかりと取り組み、足元を固めていきたい」

 「現在の人員は約70人。半数は各港湾からの出向者・応援者で、ヤードオペレーションを担っている。一方で設備保全やシステム、管理系はプロパーが担う。今後は出向者・応援者・プロパーの若手人材の育成にも力を入れたいと考えている」

 ――設備の更新についての考えは。

 「設備の柱はRTG、AGV、ガントリークレーンの三つ。設備の予防保全は5カ年計画で進めていて、今年は3年目で投資がピークを迎えている。まずはしっかりと手を入れて、長く使えるようにしたい。予備品については、他のCT、港湾とも連携できれば効率的だと考えている。自働化に関する機器については、各地で導入が増えれば、規模の経済でコストを抑えられるだろう」

 「現在はRTG25基、AGV34基、ガントリークレーン6基が稼働している。RTGは予備基があり、AGVは追加導入もしている。今後、最初にリプレースするのはガントリークレーンになるだろう。開業時の設備が稼働している状態なので、リプレース経験がある他のCTの状況も勉強したい」

■AIでJIT構想

 ――次世代CTに向けた検討状況、脱炭素化の取り組みは。

 「本船荷役作業・構内シフトを効率化する自動搬送を継続するのは当然だが、将来的な機器の選択肢としてはAGV以外にAMR(自律走行搬送ロボット)もあるほか、トレーラーの自動運転の技術動向を見極めるのも重要だ」

 「自動運転についてはメーカーとの会話を始めている。トレーラーの自動運転であれば当然、FCV(燃料電池車)も視野に入ってくる。自働化と脱炭素化の両方を実現するもので、手段として非常に面白い。世の中に自動運転が浸透すれば規模の経済が働くし、装置の車載で既存トレーラーが使えるためコストも抑えられるのではないかと思っている」

 「RTGは現状、水素を生成してディーゼルエンジンの燃焼をアシストする装置を1基に取り付けて実証実験を行っている。メリット・デメリットを見極めた上で、次の展開を考えたい」

 「TCBは円滑な荷役・搬出入のため、蔵置場所の工夫で荷繰りや手待ちを減らす事前準備に力を入れている。将来構想としては『AI(人工知能)JIT』がある。AIを活用してデータを基にバラつきを微修正して、さらなる平準化・効率化を目指すものだ」

 ――第3バースについてはどのような考えか。

 「これは港全体のニーズによるところが大きい。名古屋港は飛島南側、飛島東側、鍋田で計5ターミナルあるが、港全体の荷量の動向と、それに対して各ターミナルがどのようなフォーメーションを取るかによって決まるものだと考えている」

■荷量維持が重要

 ――課題と感じている点は。

 「短期的には荷量が気になるところだ。2022年度(4月―23年3月)の取り扱いは51万TEUで、輸出入は2対1の割合。今年度は同じ割合で47万8000TEUを見込んでいて、これは5―6年前と同水準となる。5、6月に比べて7月は少し上向いたので、後半の伸びを期待したいが、基幹航路の北米向けは決して楽観的な状況ではない。逆に、負荷が低い時期にこれまでできなかった取り組みを進め、ピンチをチャンスに変えたい」

 「各国で部材・資材などの現調化(現地調達化)がトレンドになっているのも事実なので、取り扱いを減らさないようにすることも重要だ。物流費が高くなればメーカーは外に出ていき、日本からの荷物が減ってしまう。個人的に物流に関連した企業への支援も、日本の輸出企業の競争力に貢献するため重要だと考えている」

 「中長期的には次世代ターミナルの形成と設備の予防保全が課題だ。次世代ターミナルは名古屋港全体のフォーメーションにも関係するため、港湾関係者、船会社、荷主、出資会社と会話しながら決めていかなくてはいけない。当社としては、次世代まで今の設備でどうつなぐのかというのが一つの大きなテーマとなる」

 「港は公共性が高く、自社だけで進めるわけにはいかない。特に名古屋港は連携する点に強みがある。全体を見ながら、皆さんと一緒に取り組んでいきたい」

 ――トヨタでの経験をTCBでどのように生かしていくか。

 「生産管理と物流の分野を経験してきた。12年からは飛島物流センターで生産部品の出荷、15年からは中国で完成車物流、生産部品物流、サービスパーツの物流などに携わった。作る、送る、使う、全ての立場を経験したので、TCBでも全体スルーで物事を考えるようにしたい。荷主にとって使いやすい港の在り方についても情報発信していきたい」

 にしむら・しげる 89(平成元)年早大商卒、トヨタ自動車入社。04年生産管理部グループ長、09年グローバル生産企画部主査、15年生産部品物流部企画室室長、15年同方環球(天津)物流有限会社社長、23年6月から現職。57歳。