エイトノット、自律航行EVのPF開発。25年までに無人運航実装
AI(人工知能)などを活用した自律航行技術を開発するスタートアップ、エイトノット(木村裕人代表取締役CEO〈最高経営責任者〉)は小型船舶向けの自律航行プラットフォーム(PF)「AI CAPTAIN」の実運用を開始する。自社のクルーザー型EV(電動船)に同PFを搭載するほか、広島県の企業が水上バス運航支援で2023年1月から同PFを採用する。エイトノットは25年までに、広島県の一部地域での無人運航船の実装を目指す。
エイトノットは28日、広島港で自律航行クルーザー「EIGHT KNOT I」の乗船会を開催。往復約600メートルの自律航行・自動離着桟を複数回実施した。木村CEOは「海のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していく。あらゆる水上モビリティーを自動化し、陸上と同じように水上を移動できる手段を作っていきたい」と意気込みを語った。
木村CEOは取り組む足元の課題として、安全性、人材不足、離島航路の維持存続―の3点を上げる。船舶の事故の74%がヒューマンエラーに起因していることや、内航船員の半数以上が50代以上であることなどを挙げ、技術の力で環境改善を目指す。
また、採算性などから離島の生活航路維持が難しくなっている局面にも触れ「われわれの技術で、これから先も安心して暮らしていただける未来をつくっていきたい」と語った。
外部向けのPF提供では、広島県の観光船運航事業者バンカー・サプライが、水上バスの運航支援に同PFを採用することが決まっている。
今後のロードマップとしては、25年までに、広島県の一部地域で無人運航船の実装、30年には瀬戸内地域で無人運航船100隻の稼働を目指すとしている。実装の仕方については「われわれが事業者として運航してもいいし、(バンカー・サプライ向けのように)ソリューションを提供する形でもいい」とした。
同PFは20トン未満の小型船舶であればほぼ全ての船に導入可能。船型が大きくなると求められる要件も変化するため、基本的には小型船舶に特化したシステム開発に集中する考えだ。
今後は既存船への搭載に加え、造船所と連携した新艇の企画開発、水上ドローンなど特殊用途USV(無人水上車両)の建造なども行う。
「EIGHT KNOT I」は全長7・47メートル、幅2・79メートルの小型クルーザーを改修したEV。電動船外機2基(12キロワット時×2)を備え、航行時間は8時間程度。
LiDARセンサーや四方に設けたカメラで周囲を監視し、設定した航路上に障害物を検知すると、回避するための航路変更を自動的に行う。陸上からでも監視できるため、「1人で複数台を管理することも可能。『陸の船長』という新しい領域が生まれる可能性もある」(木村CEO)。
■広島県のDXプロジェクト参画
エイトノットは広島県がDX推進のために設けた実証実験の場「ひろしまサンドボックス」に参画。昨年4月から離島である大崎上島町で水上オンデマンド配送の実証実験を行うなど、広島県で事業のベースを構築してきた。広島商船高等専門学校とは昨年から、自動運航船の共同研究を開始している。
乗船会に合わせて、広島県の湯﨑英彦知事がビデオメッセージを寄せ「瀬戸内海には多くの島が点在し、船舶の往来も激しく、安全性の確保が重要。人手不足の中、生活航路の存続が危うくなっており、先端技術を利用した自動運航の実証実験が多くの課題を解決してくれることを期待している」と語った。