【記者の視点/神農達也】産直港湾指定第1号の清水港、農産物輸出拡大へ取り組み進む
清水港が国土交通省と農林水産省から「産直港湾」の認定を受けて1年が経過した。農産物の輸出拡大に向けた取り組みはこの1年でさらに深化し、清水港の輸出創貨へ関係者の期待が高まっている。
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国は農林水産物・食品の輸出額を2025年までに2兆円、30年までに5兆円とする目標を掲げている。このうち野菜・果実などは、25年に924億円、30年に2306億円としている。
目標達成に向けて、産地から直航サービスを活用した輸出を促進する港湾「特定農林水産物・食品輸出促進港湾(産直港湾)」として21年8月に認定したのが清水港だ。清水港では数年前から農産物の輸出拡大に向けた試験輸送やハード整備などを進めてきた。認定を受けてコールドチェーン(低温物流)確保のため、静岡市中央卸売市場にドックシェルター、清水港袖師ROROターミナルにリーファープラグ5口を整備し、今年7月から稼働している。
静岡県は「山の洲(静岡、山梨、長野、新潟)産品の清水港輸出拡大事業」で後押しする。事業では鮮度保持技術の実証や輸出先の規制などに対応した取り組みを重点化。7月にJA全農インターナショナルが山梨産のモモなどを市場のドックシェルターを活用して香港向けに、今月は日本農業(東京都品川区)が山梨産のシャインマスカットをタイ向けに試験輸出した。拡大事業ではこのほか台湾やシンガポール向けの輸出も予定している。
港にとっては、こうしたハード整備や補助事業を生かして確実に貨物を増やし、港勢の拡大、輸出額の目標達成につなげることが重要だ。
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日本農業は輸出商社としての機能を持つほか、農産物の自社生産も行っているという。前述の事業の一環でも輸出を予定するサツマイモは、同社グループのジャパンベジタブルが静岡県内の自社農場で生産するもの。今後、生産量の拡大も見据えていることから、トライアルの結果が良好であれば、清水港からの出荷増加も見込める。関係者にとっては農業ベンチャーと輸出の仕組みを構築する絶好の機会だろう。
生産者と物流事業者が寄り添い、輸出を前提とした産地づくりと強固な体制構築が望まれる。
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21年に設置した輸出促進に向けた官民連絡会議では、陸送網の充実も課題に挙がっている。同年8月に中部横断自動車道の南側部分が全線開通したが、今後はそれを生かす物流事業者のネットワーク構築も求められている。高機能コンテナの帰り荷や多品目の混載など、より多角的な取り組みを具体化していく必要もあるだろう。
21年の清水港の食料品の輸出額は247億円。県は25年の目標を350億円としている。21年時点で1%にとどまる青果物の割合は、どこまで増えるか。日本第1号の産直港湾として重要な役割を担うためにも、関係者一丸で農産物輸出の規模拡大を目指した取り組みが進む。