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 印刷 2022年08月08日デイリー版1面

インタビュー グローバル市場に攻勢】NIPPON EXPRESSホールディングス副社長・近藤晃氏、HDの統括機能を強化

NIPPON EXPRESSホールディングス 副社長 近藤 晃氏
NIPPON EXPRESSホールディングス 副社長 近藤 晃氏

 NIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)がグローバル事業の拡大に向け、変革を加速している。7月1日付の組織改正により、HD会社のグローバル事業本部(GBHQ)がグローバル本社として全世界の事業を統括する体制を始動させた。GBHQは世界5リージョン(地域)一体となった成長戦略をけん引し、フォワーディングの規模拡大とソリューションビジネスの構築を推進する。近藤晃副社長に組織改正の狙いと今後の方向性を聞いた。

(聞き手 梶原幸絵、岬洋平)

 ――組織改正の背景と目的は。

 「NXHDは創立100周年に当たる2037年の長期ビジョン『グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー』を打ち出している。100周年時点での成長のイメージとして掲げた売上高約4兆円、海外売上高比率50%の達成に向け、19―23年度の現グループ経営計画に取り組んでいる。ただ、21年度の売上高は2兆3371億円、海外売上高比率は29・4%にとどまっており、長期ビジョンの実現にはオーガニックな成長は無論のこと、M&A(合併・買収)などを活用してダイナミックに成長していかねばならない」

 「日本を中心とする成長戦略から、日本を含めた世界5リージョンがグローバル市場で一体となって成長していく戦略への転換が必要だ。HD体制への移行をそのための『DAY1』とすると、今回の組織改正は『DAY1・5』と言える。スピード感を持って取り組むため、HD体制への移行を先行させ、次に組織改正により事業会社の日本通運が所管する機能をGBHQに移管。グローバル事業の統括機能を集約した」

 ――GBHQの役割は。

 「グローバル本社として全世界の航空・海運フォワーディング、ロジスティクスソリューションの各事業とマーケティング・営業戦略を一手に担う。傘下にはマーケティング、営業戦略、ロジスティクスソリューション、航空フォワーディング、海運フォワーディング、事業戦略の各部を新設した。人員は約180人。多国籍な人材が複数、エグゼクティブメンバーに入っている」

■購買力を強化

 ――各事業にどう取り組むか。

 「まずは航空・海運フォワーディングで規模拡大を推進し、絶対的な地位を確立したい。フォワーディングはわれわれのグローバル事業の根幹を成すビジネスだ。フォワーディング機能の集約により、グローバルで規模の経済と範囲の経済を発揮し、購買力を高めていく」

 「海運ではシンガポールに新会社『NX GLOBAL OCEAN NETWORK(NGO)』を設立し、日本・アジア発北米向けなど長距離航路から購買機能を集約している。航空についてはGBHQがグローバルに各レーンを俯瞰し、スペース管理や商品開発を行う。購買はリージョン単位を維持する」

 ――国際物流の混乱する今は、なおさら購買力が重要になる。

 「これまで部分最適で行っていたスペースの調達・管理を全体最適化し、輸送スペースやコンテナをより安定的に確保し供給する」

 「昨今の環境下ではコストやスピードを単体で考えるのではなく、お客さまの事業継続のため、必要なものを必要な量、必要な時に必要な場所に、適切なコストで届けることがわれわれの果たすべき役割になる。GBHQの構想は新型コロナウイルス禍前から練っていたものだが、現在の事業環境でも通用すると自負している」

■事業構造を変革

 ――ロジスティクス事業の取り組みは。

 「荷主の物流戦略を企画・推進するLLP(リード・ロジスティクス・プロバイダー)や4PLへの進化も含め、事業構造を変革し、ソリューションを提供していきたい」

 「われわれの思いの根底にあるのは、グローバルにロジスティクスを展開していくことだ。サプライチェーン上の『幹線』であるフォワーディングを押さえた上で、幹線につながる倉庫、配送を含めたロジスティクス全体を設計し、お客さまのサプライチェーンの全体最適を実現する。このソリューションによって得られる利益をお客さまとシェアするビジネスを展開したい」

 ――ロジスティクス分野で、顧客の需要に変化はあるか。

 「ソリューションビジネスに対するニーズが昨年ごろから増えている。サプライチェーンを取り巻く環境がここまで劇的に変わると、自社ではとても解を出せないというお声をいただいている。そこにロジスティクスカンパニーとして、NXグループのノウハウを提供する。併せて、キャッシュフローの改善や、CO2(二酸化炭素)排出量の可視化・削減など『お客さまがサプライチェーンに求める価値』に貢献する提案を行っていく」

 「サステナビリティー(持続可能性)対応には大きなビジネスチャンスがある。フォワーディングでも、SAF(航空代替燃料)やバイオ燃料を使う航空機や船舶を調達するスキームを検討する。これについては何らかの投資が必要になるだろう」

 ――フォワーディングでは2023年度の航空貨物取扱量120万トン、海上貨物取扱量110万TEUの数値目標を掲げている。ロジスティクス事業の目標は。

 「個人的には、当社としてロジスティクスの定義を明確にし、売上高などの指標を示していく必要があると考えている。単なるフレイトフォワーダーではなく、ロジスティクスカンパニーとして存在感を高め、ブランドの源泉としていくには定量目標があった方が分かりやすい」

 「定性的には、ソリューションを提供していくため、営業部門はお客さまの求める価値を徹底して考え抜くことが求められる。供給の安定化ばかりでなく、特定地域での販売強化などお客さまによってさまざまな価値が考えられる。加えて、それを分析し、適合したソリューションを設計するエンジニアを育成・確保しなければならない」

 「お客さまのサプライチェーン上の情報を集約するデータ基盤も必要だ。サプライチェーンをエンド・ツー・エンドで可視化し、AI(人工知能)などを使ってデータを分析した上で、最適なソリューションを提供する仕組みを確立したい」

■M&A戦略も主導

 ――グローバル事業本部(GBHQ)はM&A(合併・買収)にも関わるのか。

 「M&Aに関する戦略機能もGBHQがリードする。事業戦略部が世界の物流企業を調査・検討し、ファースト・コンタクトからデュー・デリジェンスをはじめとする各プロセスに関わっていく。M&Aが成立すれば、PMI(統合作業)まで主導する形を想定している」

 「長期ビジョンの実現には、売上高数千億円規模の企業を複数買収する必要があるだろう。グループにない機能や強みを持たないエリアをM&Aで補完する。外資を中心に、国内外で再編の動きも加速している」

 ――GBHQ始動の「DAY1・5」に続く「DAY2」は考えているか。

 「現状が完成形というわけではない。GBHQにグローバル統括機能を集約したことは、成長に向けてグループの考え方を抜本的に変えるための仕掛けの一つだ。NIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)は純粋持ち株会社にもかかわらず、あえて営業機能までGBHQに集約した。いずれは『DAY2』『DAY3』のタイミングを作りながら、日本を含めた世界5リージョンに統括機能を拡散していく。各リージョンにGBHQに対応する組織を置くイメージだ」

 「GBHQ自体の海外移転も検討したい。必ずしも1カ所に集約する必要はなく、フォワーディング、ロジスティクスなどの事業別に、お客さまや船社など関係者に近い場所に置くこともあり得るだろう」

 こんどう・あきら 81(昭和56)年日本通運入社。執行役員四国ブロック地域総括兼四国支店長などを経て、19年専務執行役員就任。22年1月から現職(日本通運副社長を兼務)。慶大法卒。63歳。