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 印刷 2022年07月18日別版特集4面

海の日特集 海運・造船編】不定期船市況、ウクライナ危機の影響。バルカーはバックホール高騰。タンカーは製品船が急騰

米国や中東などから欧州向けの石油製品の荷動きが活発化した
米国や中東などから欧州向けの石油製品の荷動きが活発化した
今年前半の中小型バルカー市況は前年同期と比べ1―3割高かった
今年前半の中小型バルカー市況は前年同期と比べ1―3割高かった

 2022年前半の不定期船市況を巡っては、ロシアによるウクライナ侵攻の影響が大きかった。ドライバルク船では太平洋から大西洋に向かう航路(バックホール)の荷動きが活発化。タンカーでは石油製品を運ぶプロダクト船の市況が高騰した。年後半の市況の行方が注目される。

■欧州が露炭の輸入を手控え

 調査会社トランプデータサービスによると、22年1―6月のドライ船のスポット市況(6カ月平均、日建て用船料)は、18万重量トン型(180型)ケープサイズが1万8089ドル(前年同期比25%安)、82型カムサマックスが2万4876ドル(同12%高)、58型スープラマックスが2万6983ドル(同28%高)、38型ハンディサイズが2万5782ドル(同32%高)となった。

 主に鉄鋼原料輸送に起用される大型のケープサイズのスポット市況は前年同期を下回ったものの、中小型バルカーはいずれも前年同期を上回り、採算分岐点を大幅に超える高値を付けた。

 ロシアによるウクライナ侵攻後、ウクライナからの穀物出荷がストップし、大西洋水域の船腹需給が緩む局面もあった。ただ、市況軟化は一時的で、ドライ市況は総じて高水準で推移した。

 ドライ市場でウクライナ危機の影響を最も受けたのが、バックホールの荷動きと市況だ。欧州各国がロシア炭の輸入を手控え、豪州やインドネシア、南アフリカ共和国など代替ソースからの輸入を増やしたためだ。

 船価鑑定を手掛ける英ベッセルズ・バリュー(VV)のまとめ(5月時点)によると、年初来の欧州向けドライ荷動きは豪州積みが前年同期比2割増の849万トン、南ア積みが5割増の873万トンに伸長した。

 ドライ荷動きは、VVが船舶の位置情報データを基に算出した。船型は大型のケープサイズから小型のハンディサイズまで起用されている。

 欧州向けの豪州炭やインドネシア炭などの荷動きが拡大したことにより、ドライ市況では通常なら不採算航路となるバックホール航路の用船レートも上昇した。

 今年1―6月平均のスープラマックスのバックホールの用船市況は、前年同期比86%高の3万774ドルに急騰。太平洋ラウンド航路や大西洋ラウンド航路の2万5000―2万6000ドル台、フロントホール(大西洋―太平洋)の2万9000ドル台を上回った。

 6月以降、ドライ市況は全般的に軟化基調で推移している。ケープサイズは変動幅が大きく、損益分岐点を割り込んでいる。中小型バルカーは軟化はしているが、平均コストを上回る高水準をキープしている。

 さまざまな航路で多種多様な貨物を運ぶハンディサイズやスープラマックスの市況が堅調なのは、コンテナ船の需給逼迫(ひっぱく)を受けた貨物の流入が下支えしているためとされる。

 今後のドライ市況の行方について、海運関係者は「8―9月ごろに上昇に転じる可能性がある」との見方を示す。一方で、「原油を除き、銅やアルミ、ニッケルなどのコモディティー(商品)価格が下落している。利上げによる景気減速が懸念されているためだが、荷動きにも何らかの影響が及ぶ可能性はある」と見通す。

■軽油のロシア依存脱却へ

 タンカー市況に関しては、ウクライナ危機の発生後、石油製品を運ぶプロダクト船の市況が急騰した。海運会社のタンカー部門関係者も「これほどまで上昇するとは」と驚きを隠さない。

 プロダクト船市況が急騰したのは、欧州がロシア産の石油製品の輸入を減らし、米国や中東などからの輸入に切り替えたことが主因だ。それによりトレードが遠距離化し、船腹需給が引き締まった。

 海運会社のプロダクト船担当者は「欧州は輸入する軽油の7―8割をロシアに依存していた。それが米国や中東、シンガポール、極東からの輸入に置き換わったことで、船腹需要が急に高まった」と語る。

 また、「昨秋以降のLNG(液化天然ガス)価格上昇を受け、LNGを燃料として使用する製油所の稼働率が低下し、軽油がショートしていたことも、ロシア以外からの輸入増加に拍車をかけている」という。

 船腹需給逼迫により、プロダクト船の用船市況も急上昇した。

 欧州―北米航路のMR(ミディアムレンジ)型の市況(ラウンド航海)は、7月初め時点で日建て約5万3000ドル(エコタイプ=燃費の良い船)を付けている。ウクライナ危機以前の1万ドル強の約5倍の高値になる。

 同航路の今年1―6月平均のMR型の市況(ラウンド航海)を見ても、エコタイプが約3万3000ドル、ノンエコタイプが約2万8000ドルと、昨年平均の9000―1万ドルを大幅に上回っている。

 プロダクト船市況はMR型だけでなく、大型のLR(ラージレンジ)2型やLR1型も高騰。「イースト(太平洋地域)からウエスト(大西洋地域)へジェット燃料油の荷動きも増えている」(同)

 プロダクト船市況が急激に上昇した影響は、石油化学製品を運ぶケミカル船市況にも波及している。

 プロダクト船市況の低迷を受け、一定数のプロダクト船がケミカル船市場に流入。ケミカル船市況の押し下げ要因となっていた。それらプロダクト船が本来の石油製品輸送に回帰。ケミカル船市況も回復傾向にある。

 一方で、VLCC(大型原油タンカー)市況は低迷が長期化している。

 VLCC市況の低迷は、主要産油国で構成するOPEC(石油輸出国機構)プラスが協調減産を継続し、輸送需要が低調に推移していることが主因だ。

 OPECプラスは20年5月から実施している協調減産について、減産規模を段階的に縮小し、VLCCの輸送需要も回復しつつある。

 だが、「船舶の供給過剰は解消されていない。スクラップ(解撤)も進まない」(市場関係者)ため、用船料収入に換算した運賃市況(中東―極東航路)は依然としてマイナス圏に沈んでいる。

 VLCCの運賃相場は、長期にわたってWS(ワールドスケール)40台で低迷していた。ただ、6月下旬には減産緩和の効果が出たためか、WS50台まで回復した。年後半にかけてどの程度まで回復するのかが注目される。