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 印刷 2022年07月04日デイリー版1面

インタビュー 新トップに聞く今後の事業展開】商船三井テクノトレード社長・川越美一氏、「風力」と「水素」に注力

商船三井テクノトレード社長 川越 美一氏
商船三井テクノトレード社長 川越 美一氏

 商船三井テクノトレードの社長に6月に就任した川越美一氏に、今後の事業展開について聞いた。(聞き手 五味宜範)

 ――会社の概要は。

 「商船三井グループの中核商事会社として、舶用を中心とした燃料油・潤滑油、部品・航海計器・機器類や、プロペラ効率改善装置プロペラ・ボス・キャップ・フィン(PBCF)をはじめとする省エネ舶用機器の開発・販売を行っている。このほか、白島国家石油備蓄基地(北九州市)の維持・管理などのエンジニアリング業務なども手掛けている」

 「年間の売り上げは500億円規模となっている。舶用の燃料・機器・部品、PBCFの割合が大きい。持続的な成長のためには、既存事業の維持拡大とともに、社員がイノベーティブにジャンプする必要がある。これができれば売り上げ規模を今の1・5倍、2倍にもできると考えている」

■初の理系出身社長

 ――社長就任の抱負は。

 「当社は海事に関する技術商社。現業については従業員全員がプロフェッショナルなので、これまでのように実力を発揮してほしい。初の理系出身社長なので、これまでと違った切り口を提供し、『逃げないこと』『決断と実行』をモットーに、従来の強みとの相乗効果発揮につなげたい」

 「八田宏和前社長が掲げた『海事分野を中心に、環境・安全ビジネスでNo.1の技術商社を目指します』というビジョンは、シンプルで分かりやすく、ユニーク。これを引き続き堅持する。世の中が変化するスピードが加速する中で、商船三井グループの業容も拡大・変革され、商船三井本体だけでカバーできない規模になっている。子会社各社はそれぞれの分野でグループをけん引していくことになるが、当社は特に環境・安全面で存在感を示したい」

 ――社長として具体的に何をするのか。

 「まずは足元を固める。主力の舶用燃料、舶用を中心とした機器・部品やPBCFの販売、白島国家石油備蓄業務などを着実に進める。シンガポールの現地法人については、商船三井グループ向けをはじめとした船舶管理のサポート業務を強化する。オランダの欧州支店は、新規商材の開拓センターとなることを目指す。自身も含めた社員個人の目線で考えると、『わくわく感があって、サステナブル(持続可能)な会社』としたい」

 「力を入れる分野は、『環境』と『安全』に関する技術商材・ビジネス商材の開発。この中で特に、『風力』と『水素』の取り組みを強化する。主力のPBCFでは、改良などさらに進化させるほか、他の船尾向け省エネ製品との組み合わせ(ハイブリッド化)を進める」

■硬翼帆が具体化へ

 ――風力分野では、何をするのか。

 「国内取次店業務を担うフィンランドのエンジニアリング企業ノルスパワー開発の円筒帆『ローターセイル』や、東京大学主催の産学共同プロジェクトが源流で商船三井と大島造船所が引き継いだ硬翼帆式風力推進装置『ウインドチャレンジャー』の販売に取り組む」

 「ウインドチャレンジャーの搭載船第1船となる9万9000重量トン型バルカーは今秋竣工する。『ローターセイル』も、引き合いが増えており、受注につなげたい。船体に受ける風圧を軽減し、さらに推進力に利用する船首形状『ISHIN船型』も営業展開していく」

■水素でも計画進行

 ――水素についてはどうか。

 「プロジェクトが3件進行している。具体的には、当社などが参加している協議体『Eco―SeTRAプロジェクト』が進める水素とバイオ燃料を利用したハイブリッド型電気推進船(EV船)の検討のほか、再生可能エネルギーなどを活用した洋上水素製造と水素燃料船などへの水素供給を兼ねた船舶の導入と拠点形成を検討する『SeaEra(シエラ)』、水素燃料貨物船の導入・実装を目指す『SHE′s(シーズ)』だ。水素関連ビジネスを実際に展開することで、商船三井グループの環境戦略の一翼を担う」

 「水素とバイオ燃料を利用したハイブリッド型EV船に関しては、同船を保有し事業主体となる『MOTENA―Sea』(北九州市)を当社が立ち上げた。同船は199総トン型の約100人乗りの旅客船。先月には、MOTENA―Seaが本瓦造船と船舶建造請負契約を締結し、2024年4月の運航を目指している」

 ――商船三井グループ内での、新たなビジネスはあるか。

 「例えば、商船三井本体で、効率運航の深度化などを目指す『FOCUS(フリート・オプティマル・コントロール・ユニファイド・システム)』の活用を推進している。この中で、船隊が脱炭素に向けた運航をするため、プロペラ周りの省エネ機器や船底塗料などハードのほか、運航方法などソフトも加えたソリューションを提供する役割を当社が担う」

 「この分野では、PBCFの改良型開発で共同研究した実績がある、三井E&Sホールディングス子会社の三井造船昭島研究所と協力する。同社が商船三井グループの運航船1隻ごとにデータを収集し分析する。これにより、各船に最適なソリューション提供につなげる」

 ――安全面についてはどうか。

 「サイバーセキュリティー対策をはじめとしたDX(デジタルトランスフォーメーション)商材の展開や、安全関連・新ルール商材の掘り起こしを行っていく。海事産業の安全重視のベクトルに沿って商船三井グループ内外に貢献する」

 かわごえ・よしかず 83(昭和58)年東大工卒、大阪商船三井船舶(現商船三井)入社。11年技術部長、12年執行役員、16年常務執行役員、18年4月専務執行役員兼チーフテクニカルオフィサー、21年4月商船三井顧問・商船三井テクノトレード顧問、21年6月商船三井テクノトレード副社長を経て、今年6月から現職。62歳。