【記者の視点/浦野綾】コンテナ船の新造発注、新トレンド、投入先にも注目
海上運賃の高騰が続く中、コンテナ船社各社は軒並み好業績を記録している。2022年1―3月期も利益水準が過去最高を更新するなどその勢いは依然として続いている。
こうした中、コンテナ船社による大規模な投資も加速。オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)が3月、30年度までに船舶やターミナル、デジタライゼーションなどに200億ドル以上を投資する方針を示したのも記憶に新しい。
脱炭素化やデジタルトランスフォーメーション(DX)など時代の変化に対応したさまざまな投資が求められる中でも、やはり今後の行方が注目されるのが新造船発注を含む各社の船隊整備の動向だろう。
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欧州海事調査会社アルファライナーによると、世界のコンテナ船の船腹量に対する発注量(TEUベース)の比率は近年では減少傾向が継続。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の真っただ中にあった20年10月にはわずか8・2%という低水準を記録した。
その後、20年後半から22年の第1四半期(1―3月)にかけて発注は急増。今年5月には世界の船腹量に対する発注量の比率は27%まで回復し、12年2月以来の高水準を記録した。
03―08年ごろの海運バブル期に竣工した船齢が高い老朽船からゼロエミッション船など環境対応型の船舶への代替需要などが新造発注の追い風になったとみられている。
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新造船発注が増加する中、新たなトレンドも生まれている。これまで発注が途絶えていた7000TEU型前後の発注が伸びているのだ。
これまでの新造発注の動向に注目すると、長距離航路向けの超大型船と域内航路向けの小型船に発注が集中。二極化が続く中、その中間に当たる7000TEU前後の船型は16年から20年半ばまでほとんど発注が手控えられていた。
しかし、長距離・域内航路の双方で柔軟な運用が可能である点などから使いやすく、低リスクの投資先として船社・船主の双方から選ばれる船型になったようだ。
7000―8000TEU前後の新造船は21年10月には60隻の発注が確定。24年末までに、世界のコンテナ船隊に約120隻供給される見込みだ。
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今後新たに船隊に加わる新造船がどのような航路に投入されていくかは一つの注目のポイントとなり得る。
近年長距離航路への展開も視野に入れるアジア域内船社の中でも同船型の新造発注や中古買船が加速。これらの本船は、北米・欧州などへの航路ネットワーク拡充の足掛かりとしてのポテンシャルも秘めている。
足元では堅調な荷動きは現在も続いているが、今後世界的なインフレによる買い控えや世界経済の減速の懸念も高まっている。
関係者の中では、今年の後半や23年ごろにコンテナ船の需給が正常化するのではないかという見方もあるが、輸送需要の動向とともに、船隊規模や各航路のスペース動向も注視していきたい。