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 印刷 2022年06月10日デイリー版6面

記者の視点/佐々木マヤ】需給緩和に向かう航空貨物市場、安定収益確保が重要に

 ANAホールディングス(HD)、日本貨物航空(NCA)、日本航空(JAL)の航空大手3社の2022年3月期の国際貨物事業の売上高は、前の期の1・5―2倍に拡大した。スペース供給減に需要増が重なったことで、需給が逼迫(ひっぱく)し運賃単価が上昇したのが主因。ANAHDは売上高、NCAは経常利益が2期連続で過去最高を更新した。

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 ただ、運賃単価は今後、下落する見通しだ。ANAHDは23年3月期の貨物・郵便収入が前期から減ると計画している。NCAは増収を見込むが、経常利益は16%減の620億円を予想する。各国の行動規制の緩和により旅客便の復便などが進めばスペース供給が増えるため、貨物輸送の需給は徐々に緩んでいくとみられる。

 足元では輸送需要の減退も懸念される。IATA(国際航空運送協会)によると、3月の世界の航空貨物需要は前年同月比5・2%減で15カ月ぶりにマイナスに転じた。ロシアのウクライナ侵攻や新型コロナウイルスの感染が広がる中国でのロックダウン(都市封鎖)長期化などに伴うサプライチェーンの混乱の影響が出ている。

 日本発着輸送では、NIPPON EXPRESSホールディングスの5月の日本発のチャーター便数が前月の半分に減るなど、需要減少が顕著になっている。航空会社は上海のロックダウン解除を前にスペース供給を拡大させたが、フォワーダーはスペース確保に慎重姿勢を強めている。

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 こうした中、航空会社は貨物事業の安定収益の確保に動いている。NCAはEC(電子商取引)関連顧客を中心に長期契約を増やしている。19年7月には香港子会社を通じて、米デジタルフォワーダー・フレックスポート向けに機材と運航サービスを提供する長期契約を結んだ。

 貨物事業は景気変動の影響を受けやすい。事業ポートフォリオを定期便以外にも分散し多角化することで、市場が急速に縮んだ場合にも耐え得るビジネスを拡大させる。

 ANAHDはフレーター(貨物専用機)を成田空港に集約し機材の稼働率を向上させたほか、羽田、関西の両空港の施設を集約するなど効率化を進めている。

 また海外の大型フレーターの就航地を広げている。貨物のチャーター便は、一度就航すれば再開する場合の手続きを短縮できる。大型貨物輸送などの顧客を獲得するとともに、需要の変動に応じて迅速に就航地点を変えられるようにすることで、需要の取り込みを確実なものにしていく。

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 航空貨物はECなどの高需要を背景に引き続き高い水準で推移するとみられる。半導体不足解消に伴う挽回生産や上海のロックダウン解除、夏の米西岸港湾混雑による航空シフトなどプラス要素も多い。それでも需給が緩むことで、これまでのような高水準の利益は期待できないとの見方が強い。安定的な収益確保のため、先を見据えた取り組みが欠かせない。