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 印刷 2022年06月07日デイリー版4面

記者の視点/五味宜範】船員負担軽減の新製品、自動・自律運航の技術開発も活用

 5月下旬に、船員の負担軽減を目指す新製品の発表が2つ相次いだ。一つは、船の周囲の状況を監視する状況認識システムで、もう一つは大型危険物積載船の離着桟支援装置。システム・装置の内容、開発の背景などを知り、それぞれ興味深かった。

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 状況認識システムは「グローク・プロ」。自動・自律運航技術開発を手掛け、三菱商事などが出資するフィンランドの技術系スタートアップ「グローク・テクノロジーズ」が開発した。専用タブレットの画面に、複数のセンサーからのデータを一つにまとめて表示する。

 具体的には、225度光学カメラと180度赤外線カメラの画像を重ね合わせるほか、両カメラやAIS(船舶自動識別装置)などからの幅広いセンサーデータを組み合わせて表示する。その画面を船員が見ながら、夜間を含むブリッジでの監視作業を行う。目視などでカバーできない必要な情報を「グローク・プロ」から得ることで、作業負担軽減を見込む。

 離着桟支援装置は、三井E&S造船と三井造船昭島研究所が、外航船社のENEOSオーシャンと共同で開発した。全世界対応のGNSS(全球測位衛星システム)技術と運動予測技術などを活用。操船者の船長や水先案内人(パイロット)が、着桟作業などでの船の位置や挙動、速力や風力を正確に把握することを支援する。

 三井造船昭島研究所ではすでに入港支援装置を販売しているが、同装置はターミナルに配備し、入港するたびに船舶に持ち込んで設置する必要があった。今回共同開発した離着桟支援装置は、船に搭載する船載型で、持ち運ぶ手間を省いたほか、新たに計画機能、高精度運動推定機能、警報機能などを追加した。

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 船長経験があるENEOSオーシャン関係者から聞いた話が印象深かった。例えば、VLCC(大型原油タンカー)がENEOSの根岸製油所(横浜市)に入港する場合、輻輳(ふくそう)する東京湾へのアプローチ開始から、着桟終了まで約5時間もかかる。その間、安全な操船を継続する必要があるほか、着桟の最終段階では、船を桟橋の真横並行に導き、秒速5センチ以下のスピードで桟橋に寄せるという。

 新装置を導入することで、このように大変な着桟作業などでの負担軽減のほか、ヒューマンエラー防止による海上輸送の安全性向上につなげる。

 状況認識システム、離着桟支援装置は、共に自動・自律運航の技術開発に関係する。成果の一部が前倒しで活用されたとも言えそうで、その点も興味深く感じた。

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 「グローク・プロ」は鶴見サンマリンが社船で搭載することを決定したほか、離着桟支援装置はENEOSオーシャンのアフラマックスタンカーで試験運用が行われている。それぞれの利用が拡大されれば、実績などのフィードバックで自動・自律運航の技術開発加速にもつながりそうだ。