ドローンの利活用の現状-想定される海事業界への影響の考察-
 印刷 2022年05月30日デイリー版2面

国内船主の今】(315)海運大手、米景気を注視。PO不平等条約化、海外オペの言い分

 「ドル金利の上昇は米国の住宅や車の購買意欲を落とし、物流の需要を大きく減退させてしまうのではないか」

■FRBのインフレ抑制

 最近、複数の海運幹部が米国の景気動向を気にし始めた。米国経済の需要動向はコンテナ船、ひいてはドライ市況の行く末にも影響するからだ。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は5月上旬、政策金利を0・5%引き上げ、0・75―1%の幅にすると発表。0・5%の大幅利上げは22年ぶり。米政府が何より抑えたいのはインフレだ。

 なぜ、金利上昇がインフレを抑え込むのか。FRBは「銀行が利上げすると、個人や企業の資金借り入れコストが高くなる。これによって、モノやサービスの需要が抑えられ、物価上昇が緩和される可能性がある」と考えている。

 海運関係者が続ける。

 「ドル金利の上昇は、日本船主にとってはリスクヘッジで実施していた金融機関からのドル借入金のコスト上昇につながる。オペレーター(運航船社)にとっては、例えば米国向け自動車の荷動きにマイナス影響が出れば、足元で堅調な自動車船事業が軟化する懸念もある。いずれにせよ、日本の海運幹部が現在注目しているのは、米ドル金利の引き上げに伴う米国の景気動向にほかならない」(海運幹部)

 コンテナ船市況が好調なのも、堅調な米国の景気の下支えがあったからこそ。ゼロ金利政策が続く日本は円安を招き、邦船オペ、船主にとって収益環境は好調だが、肝心の輸送需要の見通しとなると、米国経済の先行きに懸念を示す声が少なくないことも確かだ。

 商社関係者が話す。

 「足元では、中型バルカーだけでなく、チップ船、近海船といったこれまで市況低迷が続いていた船種までタイト感が強い。中国がチップ輸入を増加させ、中型船市況の高騰が近海船にも波及している。ウクライナ情勢で穀物輸送のトレードパターンも遠距離化している。地政学リスクが複雑に絡む中、ドル金利の引き上げの影響が今後、世界経済にどのように影響するのか、輸送需要に直結するだけに、注視する必要がある」(船舶部)

■オブリゲーションでなく

 「PO(パーチェス・オプション=船舶買い取り選択権)は不平等条約と呼んでもいいのではないか」

 5月下旬、地方船主が電話取材に応じた。堅調なドライ市況を背景に、海外オペから行使されるPO。日本船主、とりわけ中規模船主の場合、PO行使に伴う売却益は入ってきても、船隊規模の縮小という「真綿で首を絞められるような恐怖」(同)を感じている船主は少なくない。

 そもそも、POはオペ側が一方的に行使、または不行使を決められる条件だ。BBC(裸用船)船などを対象に、BBCチャーター開始から3―5年経過後にPO行使期限を設定することが一般的。海外オペにとっては、その時点で市況がPO行使額を上回っていればPOを行使し、中古船市場で売却できるほか、フリー運航などで収益を得ることができる。逆に、PO行使額を下回るような市況低迷下なら船舶を買い取らず、そのまま日本船主に返船できる。

 あくまで海外オペ側の「オプション(選択権)」であり、「オブリゲーション(義務)」でない点がポイントだ。

 古参船主が海外オペの言い分を代弁する。

 「彼らにだって言い分がある。もともと1980年代にはPOなどという契約条件はなかった。それが90年代後半の海運不況で日本の海運大手の合併や経営危機が顕在化。その際、海外オペが行き場の失った日本船主の新造船を定期用船で、5年間で引き取ってくれたケースもあった。その際、将来的に市況が低迷していた場合のリスクを考慮して発想されたのがPO付与という海外オペに有利な条件だったのだ」(今治船主)

 時は流れて、海運業界は2008年のリーマン・ショック前までの海運バブル、その後の市況低迷、そして再び過去最高益という変遷を経た。それでも、依然としてPOという「一方的な条件」は存在する。

 古参船主が続ける。

 「BBCなどで何とか償却資産を確保しようと海外オペの案件に手を出しているうちは、POはなくならない。なぜなら、日本船主自身がPOはあってもBBC取引をしたいからだ。新造船に投資し、定期用船で船舶を回す。こうした正常な商慣行が戻ってこない限り、POがなくなることはないだろう」

(国内船主取材班)

=毎週月曜掲載