ドローンの利活用の現状-想定される海事業界への影響の考察-
 印刷 2022年05月24日デイリー版1面

海運トップに聞く22年度の舵取り】(1)商船三井社長・橋本剛氏、非海運育成、ROE10%へ

商船三井社長 橋本 剛氏
商船三井社長 橋本 剛氏

 外航海運各社の2021年度決算は、歴史的な好業績となった。22年度も高水準の利益が予想されるが、世界経済の変調などが懸念されている。本シリーズでは主要船社のトップに今期の舵取りを聞く。初回は商船三井の橋本剛社長。

 ――22年3月期の連結経常利益は7217億円となり、過去最高を更新した。今回の好業績をどのように受け止めているか。

 「私自身の受け止め方としては、功罪相半ばしている。当社は12年度以降の一連の構造改革で自己資本を毀損(きそん)した。毀損した自己資本を一気に取り戻せたことは良かった。環境対策や地域戦略を推進していくための体力をつけることができたことも非常に喜ばしいことではある」

 「一方で、約7200億円の利益のうち6000億円強をコンテナ船事業が稼ぐなど、事業ポートフォリオがいびつなことは否めない。物流の混乱が長引き、お客さまにご迷惑をおかけしたことは、海運会社として真摯(しんし)に受け止めなければならない」

 ――23年3月期の経常利益予想は5250億円と高水準の利益を予想する。

 「物流混乱の最悪期は脱した。混乱は徐々に収束に向かうだろう。コンテナ船の運賃市況も軟化していく。一方で、船舶の稼働率が改善することで輸送量は増える。プラスとマイナスの効果が打ち消し合い、業績的には22年3月期の過去最高益に次ぐ利益を維持できる見込みだ」

 「懸念材料はインフレの高進や中国経済の減速、ウクライナ紛争に起因する欧米経済の冷え込み、食料不足などだ。これらがボディーブローのように効いてきて、世界経済が変調を来すシナリオも排除できない。下期から現実化するシナリオも考えておく必要がある」

 ――コンテナ船事業会社オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)に対して、株主の立場でガバナンスをどう利かせるか。

 「ONEはこれまでライトアセットでやってきたが、将来のことを考えれば船隊整備を含め積極的に投資していく必要がある。システム投資も必要だ。コンテナも保有とリースがあると思うが、もっと踏み込んで考えた方がいいと思う。手元にある潤沢なキャッシュを有効活用する手だてを考えてほしい」

■自己資本2兆円へ

 ――非海運事業(海洋・洋上風力発電・物流・不動産)を強化する方針を打ち出した。

 「最も重視する経営指標の一つはROE(自己資本利益比率)で、中長期的に目指すゴールはROE10%ぐらいだと思う。前期の好業績を受け、自己資本は1兆3000億円近くに増えた。今期も予想数字に沿った利益を確保できれば、遠くない将来、自己資本は2兆円まで積み上がる見込みだ」

 「自己資本が2兆円でROE10%を達成するには、2000億円の純利益を稼ぐ必要がある。世界経済の混乱が収束した時に、これぐらいの利益をコンスタントに計上できれば、ステークホルダー(利害関係者)の期待にも応えられるだろう」

 「これを実現するために、非海運事業に集中的に投資する。非海運事業を事業の柱の一つに育てる。それにより、在来型の海運事業(コンテナ船、一般不定期船、自動車船など)の収益の変動を補う。市況変動にさらされる在来型海運事業、非海運事業、長期契約により収益が安定しているLNG(液化天然ガス)船などの非在来型海運事業の3事業で、3分の1ずつの事業ポートフォリオを構築できればと考えている」

■ベッティング強化

 ――M&A(合併・買収)に今後6年間で最大3000億円を投じる計画だ。

 「新規事業を一から立ち上げるには、膨大な時間と手間がかかる。海運業を中心に当社と親和性のある事業で、ある程度目利きができる事業を対象に、M&Aの機会を追求していきたい」

 「具体的な案件はまだないが、例えば洋上風力発電関連などがターゲットになる。地域としては、インドやアフリカ、東南アジアなどを視野に入れている」

 ――用船チェーンマネジメント体制を全社的に見直す。その理由を教えてほしい。

 「安全運航管理体制をさらに強化するために、ベッティング(監査)体制を改める。オイルメジャーや資源メジャーが導入しているものに近いものになる。ベッティング部門を独立させ、安全基準もより一層厳格化する。同基準を満たす船を用船していく仕組みにする。特に長期用船して基幹的な船隊を構成する船の審査は厳密に行う必要がある」

 ――ロシアがウクライナを侵攻したことを受け、ロシア産LNGの輸送にはどのように対応していくか。

 「これから立ち上がる北極圏のLNGプロジェクト『アークティックLNG2』は、稼働遅延など何らかの影響が出るだろう。LNG輸送に関してはステークホルダーである顧客や株主、従業員の声を聞き、国際情勢や日本政府の経済安全保障に関わる政策も勘案しながら対応する」

 「仮にロシアからのLNG輸出がストップすれば、欧州とアジアのLNG不足は深刻で争奪戦が起きるだろう。LNG価格がさらに上昇し、各国のエネルギー安全保障上の大きな問題になる可能性がある。中国やインドはロシアのLNGへの依存を強めるのではないか」

(随時掲載)

 はしもと・たけし 82(昭和57)年京大文卒、大阪商船三井船舶(現商船三井)入社。09年執行役員、12年常務執行役員、15年取締役常務執行役員、16年取締役専務執行役員、19年代表取締役副社長、21年4月から現職。東京都出身、64歳。