【市況2022】VLCC、中国 露産へ切り替えか。中東積み5月50件減。TD3C、マイナス圏
VLCC(大型原油タンカー)のスポット用船市場で、5月の中東積み成約数は80件と4月の130件超から50件以上減少した。市場関係者によると、原油調達で中国の用船者が中東積みからロシア積みへ切り替えている可能性があるという。足元の中東―中国(TD3C)の運賃水準はWS(ワールドスケール)40、日建て用船料換算でマイナス9000ドルと依然ゼロを下回っている。
中東積みの成約は1月112件、2月97件、3月93件と低調だったが、4月は137件でコロナ前とほぼ同水準に戻っていた。引き続き回復が期待されていたが、5月積みは80件と大幅な減少に転じた。
市場関係者は「成約減は中国国有系商社ユニペックの船腹手当ての減少によるところが大きい。中国は原油調達について、中東積みからロシア積みへ切り替え始めているのではないか。また、ロックダウン(都市封鎖)の影響で需要自体も減退している」と分析する。
スポット用船市場では、解撤(スクラップ)も進まず、船腹供給過剰が常態化。成約減少も相まって、市況レベルを押し下げている。
市場関係者は「今年報告された解撤の成約は4―5隻と少なく、実際に解撤されたかどうかも定かではない。しかも洋上備蓄などに割り当てられている老齢船が中心で、仮に解撤されても市況への影響は軽微だ」と語る。
解撤鈍化の背景には、コロナ禍の移動規制で解撤国でのオペレーションが停滞していることなどが挙げられるという。
19日付のマーケットリポートで中東―中国航路の運賃はWS40、低硫黄油(VLSFO)使用の場合、日建て用船料換算でマイナス9000ドル。
ウクライナ危機で、一部の航路で用船料にプレミアム(割増)が付く事態も散見されている下位船型とは、対照的な展開となっている。ロシア産原油の輸送では、主にスエズマックスやアフラマックスが起用される。
英クラークソンのリポートで、13日時点のスエズマックス、アフラマックスの黒海―地中海航路はいずれも日建て4万ドル超と高値を付けている。