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 印刷 2022年05月16日デイリー版2面

国内船主の今】(313)海外オペ来日ラッシュ。イースター明け、欧州勢動くか

 「海外の有力オペレーター(運航船社)や船主が、せきを切ったように次々と来日し始めている。国内の船主や造船所との久しぶりの対面を機に、新たな商談が動き出す可能性がある」(商社船舶部)

 ゴールデンウイーク(GW)明けの9日。取材に応じた複数の商社関係者がこう明かした。

■2年ぶりの対面

 コロナ禍が深刻化した2020年春以降、日本から欧州への渡航が厳しく制限され、日本の船主や造船所、商社関係者は2年強にわたり、主要な取引先である欧州のオペや船主との対面がかなわなかった。

 それが今回、4月半ばにイースター(復活祭)の連休が明けた北欧勢、同月末に連休が明けたギリシャ勢を中心に海外の有力オペ・船主の訪日が、GW明けから今月末にかけてラッシュするのだ。

 商社関係者が続ける。

 「その数は少なくとも10社超。日本の船主、造船所との取引が多い先ばかりだ。渡航制限が緩和傾向にあることを受け、いずれも首脳級が来る」(同)

 うち1社のギリシャ船主と久しぶりに再会し、マーケット談議が白熱して寝不足気味という別の商社関係者が明るい声で話す。

 「今回は欧州のオペや船主にとっても、日本のステークホルダーと約2年ぶりに対面する貴重な機会。当然ながらオペであれば国内船主、船主であれば国内造船所を可能な限り訪問する。商談が直ちに決まらないまでも、国内勢・海外勢の双方にとって、ポシドニアに向けた良い準備運動になるだろう」(別の商社船舶部)

 首脳同士が対話すれば、用船料や新造船価の相場観を互いにつかめる。6月6―10日にギリシャ・アテネ市で開催される国際海事展「ポシドニア」。その場で日本と欧州の海事関係者が膝詰めで話すのを前に、両者を仲介する商社船舶部の動きが慌ただしくなっている。

■用船者が二極化

 とはいえ国内船主は、足元の「準備運動」やポシドニアという間近のタイミングで、商談を決められる環境にあるのか。

 2月から3月にかけては、財務体力に優れる大手に限らず複数の国内船主が、海外オペの長期のTC(定期用船)を裏付けとして、ハンディサイズを中心に中小型バルカーを新造発注した。欧州の有力オペによる新造用船需要がにわかに盛り上がり、ハンディサイズでは期間5年のTCレートが船価に見合う日建て1万3000ドル台まで上昇したからだ。

 商社マンが当時を振り返る。

 「中小型バルカーのスポット用船市況の上げ基調が続いた2月初めから3月末までは、同船型のTCレートがスーパーサイクル(長期の値上がり局面)に入る期待すらあった。船価に先高観があるとみた欧州オペの多くに、今のうちに新造用船を手当てしておかねば、という焦燥感が見て取れたからだ。結果として上昇する船価に対して、国内船主も採算が取れる水準の長期用船料の案件が出てきた」(船舶部)

 しかし足元では、再び潮目が変わってきているという。

 「今はまた船価と用船料のミスマッチが生じている。船価が上げ基調にある一方、欧州オペによる新造用船の引き合いが先月半ばのイースターを境に鈍化し、TCレートは頭打ちになっているからだ」(同)

 海運ブローカーがこれに同意した上で補足する。

 「足元でもハンディバルカーの新造商談を進めている国内船主は複数いる。しかし隻数ベースではその多くが、ドライ市況の高騰で蓄えた潤沢なキャッシュを自己資金として厚めに投入し、用船契約を付けずに発注しようとする大手船主の案件だ」(在京ブローカー)

 一部大手を除く大多数の国内船主も、高市況下で運航・売船益を上げ、手元資金が潤沢になってきている点は大手と同じ。しかし船価の一段高により、TC付きの新造発注は難しい環境にある。

 ブローカーが続ける。

 「中小規模の船主が償却財源を確保するために投資できる先は現状、海外オペのBBC(裸用船)案件が大半で、最近も複数の案件が決まっている」(同)

 一部大手に限らず国内船主が広く、新造船を発注できる日は来るのか。

 商社関係者は一呼吸置いて、こう答えた。

 「コロナ禍にウクライナ情勢の緊迫化が重なり、マーケットの先行きに対する不確実性はかつてないほど高まっている。こうした中、欧州勢も新造整備を様子見するオペと、船価の高止まりが続くとみて仕込みに動こうとするオペに二極化してきた。後者には、日本になじみの深い用船者も含まれている。イースター明けに後者がどう動くかは近く明らかになる。答えはその時に見えてくるだろう」(船舶部)

(国内船主取材班)

=毎週月曜掲載