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 印刷 2022年05月16日デイリー版4面

記者の視点/幡野武彦】上海ロックダウンの影響、コンテナ船竣工時期にも影響か

 新型コロナウイルス感染拡大を防止するために始まった、中国・上海市のロックダウン(都市封鎖)が長期化している。当初は4―5日程度の短期間という触れ込みだったものの、実際にはズルズルと延長。5月の大型連休(ゴールデンウイーク)明けには解除という期待もあったが、13日現在もまだ続いている。

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 上海日本商工クラブがまとめたロックダウン影響に関する日系製造業の実態調査(アンケート)によれば、9割以上がこの1カ月間、ほとんど工場を稼働できていないことが明らかになっている。物流面の課題も深刻で、国際輸送でも「まったく手配できない」と「必要量の3割以下」の合計回答が7割に達するなど、状況はより深刻だ。

 「世界の工場」である中国、その中心である上海の機能不全の影響は、いまや日本にも波及する。トヨタ自動車は10日、国内8工場14ラインで16―21日に稼働を一時停止すると発表した。同社は部品供給不足による見直しと説明しているが、上海ロックダウンによる影響の可能性は大きそうだ。同社だけでなく、ロックダウンに伴う部品供給の途絶で生産ラインの停止に追い込まれている国内製造業は多いといわれている。

 上海ロックダウンがどれだけ国際輸送に影響を与えるかは不明だが、これからかなりのインパクトになるのは間違いない。今年4月の北米東航コンテナ貨物量は前年同月比7%増の176万TEU。4月の荷動きとしては過去最多を記録したが、5月以降は急減する可能性もささやかれており、船社も身構える。

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 一方で、ロックダウンがいつ解除になるか、この予測は難しい。ただ、解除後の状況や対応について、いま物流企業関係者はいろいろ想定しているようだ。

 解除となれば工場の生産が再開され、モノが動き出す。これは間違いない。ただし、すぐに部品調達ができるかどうは微妙なところ。正常化には一定の期間が必要となる。部材生産が再開され、それらが円滑に供給されて最終製品の生産ラインに直結し、サプライチェーン全体が回り始めるには1カ月はかかるだろうと指摘されている。

 ただし、これは順調にいけばの話であり、不測の事態が発生して遅れが生じれば、正常化への時間はさらに必要となる。また再開で出荷ラッシュとなれば再び船腹不足によるサプライチェーン混乱も生じてくる。

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 2020年2月ごろからのコロナ禍により、当初は国際貨物が急減し、その後は巣ごもり需要で逆に急拡大。その変動幅の大きさがサプライチェーン混乱のきっかけになった。上海ロックダウンが長期化すればするほど、その反動が大きくなる可能性もある。

 ロックダウンはコンテナ船の竣工時期にも影響が及ぶのではないか、とも指摘されている。新造コンテナ船の竣工ラッシュは23年からだが、ロックダウンで部品供給が滞り、竣工時期が後ろ倒しになる可能性もある。そうなれば船腹不足が長引き、サプライチェーン混乱が継続するシナリオだ。

 これらは、あくまでもいま考えられる複数の想定の一つであり、現時点ではどうなるという確証はない。ただ、ロシアによるウクライナ侵攻に加え、上海ロックダウンによって、世界情勢の先行きに対する不透明感は高まっている。世の中の動向を見極める難しさを改めて強く実感した。