Rightship webiner
 印刷 2022年05月12日デイリー版1面

パシフィック・ベイスン、NSY・三井物産と覚書。中小型バルカー、環境対応で連携

フルアガードCEO
フルアガードCEO

 香港のドライバルク船大手パシフィック・ベイスン(PB)のマーティン・フルアガードCEO(最高経営責任者)は11日に日本海事新聞社などの取材に応じ、日本シップヤード(NSY)、三井物産との間で、中小型バルカーの脱炭素化に向けたプロジェクトで覚書を結ぶことを明らかにした。3者の知見を持ち寄り、中小型バルカーのGHG(温室効果ガス)排出削減を実現し、荷主などの環境ニーズに対応していく。

 取材には小山大五郎ディレクター(売買船担当)、尾崎正宏東京支社長が同席した。フルアガード氏は昨年7月、前任のマッツ・バーグランド氏の後任としてCEOに就任した。

 PBは昨夏、2050年までにネットゼロエミッションを目指す新たな環境目標を打ち出した。同目標の達成に向けて、日本の大手造船会社や総合商社と連携する。

 PBのドライ船隊は自社保有船121隻を軸に、船主からの定期用船を含め250隻規模。船型は中小型のハンディサイズ(2万―3万重量トン級)とスープラマックス・ウルトラマックス(5万―6万重量トン級)に特化している。

 同社はこれまでも、燃費効率に優れた新鋭船への代替更新を推進し、デジタル技術を活用し運航最適化を追求するなど、運航船からのGHG排出削減に注力してきた。

 ただ、「多種多様な貨物を運ぶ中小型バルカーは、航路が多岐にわたり、船上のスペースも限られることなどから、環境対応が難しい」(フルアガード氏)ことが課題になっている。

 そこで船舶の設計に強みを持つNSYや各種エネルギーの知見を持つ三井物産と協力し、中小型バルカーの次世代船型の開発や低炭素・脱炭素を実現する代替燃料の研究を行う。

 PBは12年以降のドライ市況低迷期に、収益悪化で厳しい状況でも、自社船に継続的に投資してきた。その結果、同社の保有船は三十数隻から120隻超まで拡大した。

 フルアガード氏は「昨年も中古船12隻を取得した。競争力のある保有船が当社の収益力の源泉になっている」と語る。

 PBの21年12月期の最終利益は、前の期の2億820万ドルの赤字から8億4480万ドルの黒字に転換。市況上昇を追い風に過去最高益を確保した。

 ただし、「足元では中古船への投資も慎重になっている」(フルアガード氏)。用船市況の上昇や鋼材価格の高騰に伴い、中古船価格も急上昇しているためだ。

 船舶投資を様子見する一方、小型で高齢の保有船を売却。船隊の平均船齢の若返りを図り、フリート全体からのGHG排出量を減らすとともに、売船益を確保する狙いだ。

 一方で、昨年には今治造船で23年に竣工予定のハンディサイズ2隻の新造用船を決め、現在も複数の案件を交渉している。「次世代船が見定まるまでは新造船への投資は難しいが、中古買船や新造用船の機会は今後も探っていく」(フルアガード氏)。

 フルアガード氏はデンマークの海運大手APモラー・マースクに26年間在籍した後、15年から21年までチリ船社ウルトラナブグループのLPG(液化石油ガス)船社ウルトラガスのCEOを務めた。

 「日本には造船所、船主、運航会社、金融機関、商社、荷主などの関係者が集積し、大きな海事クラスターを形成している。日本のパートナーの存在がPBの発展には欠かせない」とフルアガード氏は語る。

 ドライ船社は20年前半まで市況低迷に苦しめられた。海外船社の中には用船料の支払いに窮するところも出てきて、日本船主にも減額要請が相次いだ。

 「当社も同様に苦しかったが、用船料の減額要請は一切行わなかった。船主や荷主をはじめとするパートナーとの信頼関係を今後も大事にしていく」(フルアガード氏)方針だ。