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 印刷 2022年05月12日デイリー版1面

インタビュー 倉庫会社の戦略】東陽倉庫社長・武藤正春氏、多領域で同時成長へ

東陽倉庫社長 武藤 正春氏
東陽倉庫社長 武藤 正春氏

 名古屋市に本社を置く東陽倉庫は、国内外で展開する倉庫ネットワークをベースに、総合物流企業として多角的な事業を展開している。2023年に創業130周年を迎える同社の経営方針や今後の事業展開などを武藤正春社長に聞いた。

(聞き手 中部支局・神農達也)

 ――事業概要は。

 「国際物流、国内物流、トランクルーム、不動産を事業の柱としている。名古屋港には約20万平方メートルの倉庫があり、大ロット貨物から多品種小ロットまで扱う。うち4万平方メートルは定温倉庫群で、食品などの保管も多い」

 「国際物流は輸出入、通関、自動車輸出、海上輸送、航空貨物と幅広いサービスを提供している。海外は米国、中国、シンガポール、タイ、ミャンマーに拠点がある。中古車に特化した名古屋港最大級のモータープールがあるのも特徴だ。国内物流は中部と関東を中心に複数拠点を展開している。3PL(物流一括受託)に力を入れており、在庫管理、物流センター、流通加工、配送など一括で受託する」

 「トランクルーム・書類保管センターは名古屋都心部に立地。不動産は地域開発事業を進めていて、名古屋駅と栄の間にある納屋橋エリアの複合施設『テラッセ納屋橋』がメインだ」

■「利他の経営」

 ――経営方針と自社の強みは何か。

 「社員は家族という日本型の経営を大切にしている。東陽倉庫グループの一員として安心感を持って働けることは、事業を営む上でも強みになる。全社員が株式を保有しているほか、カムバック制度や時短勤務、有給休暇取得制度を充実させている。カムバック制度は事情があって退職した従業員が復帰できる制度で、勤続年数によっては同じポスト・給与で戻れる。経験のある人材を生かすとともに、安心感と働きやすさのための取り組みだ」

 「もう一つの特徴は八ケ岳型経営だ。当社は、異なる事業領域の同時成長を目指している。選択と集中はリスクと考えており、ある事業や特定業種が不況になっても経営を安定させることができる」

 「3つ目は利他の経営で、取引先への貢献を最優先する考えだ。当社は2023年で創業130周年を迎える。これだけ会社が続いているのは自社の利益だけに走らず、取引先の役に立っているからだろう。これらの経営方針は当社の創業から根付く精神でもある」

 ――取引先には具体的にどのように貢献するのか。

 「一つの例として3PLのデプロイ業務がある。これは顧客の物流全体を当社が管理して、他社も含む物流拠点への供給指示や生産計画の修正を提案するものだ。データに基づいて適正在庫を把握できるため、たとえ当社の倉庫に入庫する商品でも生産量を落として在庫を減らすように進言する。ときには廃棄を勧めることもある。倉庫会社としてもうからなくても、顧客のためになることなら提案する」

■マンパワー必要

 ――業績の動向はどうか。

 「営業収益は20年3月期まで7期連続で過去最高を更新した。21年3月期はコロナで減収となったが、22年3月期は回復して増収。経常利益は9期連続増益で、4期連続で最高益を更新した。さらに5期連続で増配している」

 「業績は好調だが、現状維持は後退だと常々言っている。仕事をしていれば問題は出てくるもので、それがない方が問題。世の中の変化に耳を傾け、ものを見て柔軟に対応していくことが大切だと考えている」

 ――今後の見通しは。

 「ウクライナ情勢、資源高、半導体を含めた部品調達、コロナ、インフレと悪い円安など、足元は先行きが不透明だ。混乱が落ち着くことを願っているが、コスト増の懸念は大きい」

 「業界全体の課題として人材不足がある。現時点で当社グループの採用は問題ないが、長期的な視点で見ると高齢化などの影響もあるだろう。生産性を向上させるため、一部の倉庫でロボットを導入するなど省人化への投資もしている。ただ、以前に立ち上げた自動倉庫では、結果的にマンパワーの方が、効率が良かった。多品種で大量の商品を扱う場合は特に、マンパワーは絶対に必要だと判断している」

 ――新拠点の開設や今後の予定は。

 「昨年9月に神奈川県の相模原営業所5号倉庫が稼働した。ファンドからの賃借で延床面積は3400坪(約1万1240平方メートル)。すでにフル稼働の状態にある。今年3月には成田空港第2貨物代理店ビルに成田営業所を開設した。これまで航空貨物は中部国際空港を拠点としていたが、新拠点の開設でサービス向上を図る」

 「6月には愛知県小牧市の国道41号沿いで新倉庫に着工する。延べ床面積4200坪の4階建てで、定温・常温に対応する。小牧は国内物流の施設が集積している場所で、当社としても重要な拠点の拡充だ。東名高速道路の小牧インターチェンジから至近の場所で、同敷地内で4棟目となる。今後も倉庫適地は常に探していきたい」

■ベトナム進出も

 ――注力・強化する分野はあるか。

 「当面は運送体制と流通拠点の強化による3PLの推進に力を入れる。スーパーやコンビニ、ドラッグストアの配送センター機能を拡充したい。海外拠点の拡充を含めたグローバルな業務も強化する。ベトナムへの進出も計画中で、時期はコロナ禍が落ち着いた頃を想定している」

 「今後も高付加価値の物流サービスを提供し、顧客のビジネスを戦略的にサポートしていく姿勢は変わらない。新入社員にも伝えていることだが、物流は社会基盤を支えるインフラだ。総合物流企業として社会と人々の生活に役立つことを目指したい」

 むとう・まさはる 75(昭和50)年東北大法卒、東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行。03年東陽倉庫入社。04年取締役常務執行役員、09年代表取締役常務執行役員、12年6月から現職。70歳。