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 印刷 2022年05月10日デイリー版3面

菊田の眼 Logistics Insights】(23)物流2024年問題克服への道、荷主・物流協働とテクノロジー活用 時短と生産性の向上を

日本海事新聞社顧問 L-Tech Lab代表 菊田 一郎氏
日本海事新聞社顧問 L-Tech Lab代表 菊田 一郎氏
ニトリの物流子会社、ホームロジスティクスが導入したスワップボディーコンテナ。中継輸送も実施している(同社HPより)
ニトリの物流子会社、ホームロジスティクスが導入したスワップボディーコンテナ。中継輸送も実施している(同社HPより)

 5年の猶予期間が終わる2024年4月1日から、トラックドライバーの時間外労働に改正労働基準法が定める「年間960時間」の上限規制が導入される。過労死などの防止が目的の罰則付き規制である。遠距離の幹線輸送ほかで長時間労働が常態化してきたトラック運送業界では、この「物流2024年問題」の克服に向け、労働環境是正の取り組みを進めてきた...はずだった。もう3年がたったのだから。

 ところが、これは容易にクリアできるものでなく、なお模索中の企業が多い。放置すれば「27年にドライバー27万人が不足」の予測通り「運べない時代」の到来も視野に入る。時間はない。「あと2年」を切った今、改めて真っ向勝負の解決策3項目を提示したい。

     ◆

 【解決策1】オペレーション改革で労務時間短縮

 〈1〉輸配送拘束時間の短縮―本丸中の本丸施策。手段は、 1.幹線輸送の海運・鉄道へのモーダルシフト 2.中継輸送(日帰り可能地点でドライバー交代) 3.拠点の分散配置とルート最適化で輸送距離短縮など。

 〈2〉付帯作業の削減・生産性向上― 1.標準パレット、カゴ車納品 2.貨物の荷役はセンター作業者が担うスワップボディー(写真)の採用でドライバーの荷役を排除 3.バース予約システム導入で待機時間短縮 4.事務作業の短縮―荷主のASN(事前出荷情報)でノー検品化、AI―OCRで日付・伝票などの入力自動化、IT点呼 5.運行管理システムで作業進捗(しんちょく)報告、日報作成の自動化。

 〈3〉ダブル連結トラック、自動運転技術による隊列走行でドライバー1人が数台分を輸送可能に。

 【解決策2】労務施策の改革で人材確保・定着

 〈1〉待遇改善―賃上げ、労働時間短縮・休暇確保、施設、ルール、ダイバーシティーなど業務環境改善。

 〈2〉ディーセント・ワークの実現=人間らしく尊厳とやりがいのある仕事=従業員が家族に「こんな仕事をしてるんだよ!」と誇れる職場・会社に。

 〈3〉ハラスメントを排し心理的安全性(自分の考えを自由に発言し行動に移せる環境)を確保―以上による従業員満足でエンゲージメント強化→顧客満足向上→業績向上へ...と連鎖する(SPC=サービス・プロフィット・チェーン理論)。

 〈解決策3〉戦略的改革=荷主と物流の連携・協働、企業連合

 〈1〉荷主連携で輸配送の共同化―混載で積載率向上・波動の平準化・帰り荷確保、便数と排出CO2(二酸化炭素)削減→モノと情報とプロセスの標準化が条件→将来は究極の物流協働プラットフォーム「フィジカルインターネット」へ。

 〈2〉物流同志の連合orM&A(合併・買収)による統合で経営規模・交渉力拡大→標準的な適正運賃確保で賃上げ、IT・自動化投資力向上で生産性向上...。

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 続いて、以上の施策の実現に向けた3つの要諦・必要条件を列記する。

 【ポイント1】荷主の理解

 運賃適正化、物流共同化はもちろん、バース予約システムやASNなどIT連携も、モーダルシフトもリードタイム延長への、「荷主の理解・協働」が不可欠な条件となる。物流側だけでクリアできる課題は多くない。2024年問題を含むアフターコロナの物流危機回避は、突き詰めれば困る側の「荷主の課題」なのである。荷主がジブンゴトとして飲み下し、全霊で解決への努力を傾けなければ、本当に「物流が止まる」事態が待っている。

 【ポイント2】デジタル技術の活用

 DX(デジタルトランスフォーメーション、ビジネスモデルの異次元進化)とは言わぬまでも、単発業務のデジタル化(デジタイゼーション)、一連の業務プロセスのデジタル化(デジタライゼーション)を含むデジタル・自動化技術(テクノロジー)の活用も、生産性向上の必須要件として不可欠。そのためには合同・統合による運賃交渉力・投資力の拡大が望ましい。

 【ポイント3】運賃と賃金

 経済産業省は物流サービス価格指数(日本銀行調べ)が現在、バブル期を上回り過去最高となっていることを荷主視点で「物流コストインフレ」と称している。だが現実を見ると、1990年の物流二法のネオリベラリズム(新自由主義)・競争至上主義的改変後にトラック事業者数は急拡大、市場はレッドオーシャン化し四半世紀にもわたり運賃は抑制されてきた。97年までは全産業平均を上回り「憧れの職業」の一つだった大型トラックドライバーの所得も大きく低下し、今や全国平均を1割下回り労働時間は同2割長い。運賃が企業と雇用の持続不可能レベルに陥ったからこその物流危機であり、インフレでなく「適正化」との歴史認識が必要だろう。

 現在の海運も類似の状況にあるのでは? 先日本紙も取り上げた日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の海運ウェビナー(4月14日開催)で、荷主側は歴史的なコンテナ運賃高騰を「サービスと対価が合っていない」とする一方、海運側は過去20年の安すぎる運賃による負担を取り戻す過程であり、今も日本の運賃は国際的に低すぎるとの認識を語った。なるほどである。

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 以上まとめて、物流2024年問題の克服には 1.荷主の理解・協働、 2.デジタル技術の活用、そして 3.荷主・物流双方がアフターコロナの適正運賃・賃金を見いだすこと―これらが必須要件となることを強調しておきたい。

 (月1回掲載)

 きくた・いちろう 82(昭和57)年名大経卒。83年流通研究社入社。90年から20年5月まで月刊「マテリアルフロー」の編集長を務める。同年6月に独立し、L―Tech Lab設立。同月、日本海事新聞社顧問就任。