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 印刷 2022年04月18日デイリー版2面

国内船主の今】(310)バックホールに注目。2年前の手帳、再び読み返す

 横浜駅近郊の喫茶店。東京で所用を済ませた四国船主が取材に応じた。

 「一言で言えば、何でもあり。相手の顔さえ知らないでお見合いを持ち込まれているようなものだ」

■償却財源の確保

 1ドル=126円の円安が続き、ドル建て用船料の船主は円換算での収入が膨らむ。2019年前後に決めたBBC(裸用船)のPO(パーチェス・オプション=船舶購入の選択権)を海外オペレーター(運航船社)が次々と行使する。

 日本船主としては足元で数千万円、数億円単位で資金が積み上がるが、新造船に投資しなければ、多くを税金で支払うことになる。

 前述の四国船主が解説する。

 「邦船オペと新造船で定期用船契約を結ぶのは事実上不可能。邦船オペの条件が厳し過ぎるし、造船所の新造船価格も合わない。となると、海外オペの『仕組み替え=BBC』案件ということになる。しかし、全く聞いたこともない海外オペを紹介され、一部の金融機関はその海外オペを詳しく調べずに審査を通すという状況は、どう見てもおかしい」(西日本に拠点を置く船主)

 商社、ブローカーともに最近までは海外の「二流」のオペを日本船主に定期用船先として紹介してきた。

 「二流」というのは、主に自社船を持たない「カーゴ・オペレーター」を指す。こうした「二流」オペはさすがに、定期用船契約を確実に履行するかどうかのリスクがある。そのため、商社、ブローカーもこうしたオペからは新造船契約の場合、「頭金」、つまり用船料の前払いを要求し、一種のオペ側の自己資金として日本船主の定期用船リスクの担保としていた。

 しかし、今持ち込まれている案件というのは、こうした「二流」オペのリスクどころではない、と四国船主は言う。

 商社関係者が補足する。

 「今、一部で日本船主に持ち込まれているのは正直、海外オペの素性も正確に分からない案件。つまり、相手の顔さえ分からずに、10年近いBBC契約を結ぶというものだ。20年、ほんの2年前は定期用船料の減額の嵐が吹き荒れていたが、足元の案件の中には当時の減額リスクを上回るリスクを内包するものさえ散見される」(船舶部)

 償却財源の確保に奔走する船主の気持ちは誰もが理解する。しかし、再度、2年前の手帳を見返すべきときではないか。10社以上もの海外オペが用船料の減額を要請した当時の苦しみは、いまだ記憶に新しい。ドル金利が上昇している中でのBBC案件は、さらに慎重な対応が迫られることは言うまでもない。

■バックホールに動き

 「バックホール、つまりアジアから大西洋に向かう航路のウルトラマックス市況の上昇に注目すべきだ」

 外航海運の航路の呼称は伝統的に欧州を起点としていたため、大西洋からアジアに向かう航路をフロントホール(往航)、アジアから大西洋に向かう航路をバックホール(復航)と呼ぶ。

 4月上旬、このバックホールの動きについて中手船主が取材に応じた。

 当時、ケープサイズ市況など大型船市況がさえない中、中型バルカーのウルトラマックスのバックホールが1日当たり4万ドル超の高騰を見せていた。

 ロシアのウクライナ侵攻もあり、船回しの混乱が懸念される大西洋へ戻る中型船にプレミアムが付いているという記者の見立てに対し、船主は持論を展開する。

 「私の見立ては異なる。バックホールが上昇しているのは、これまで大西洋で積んでいた貨物を豪州や東南アジアなど太平洋で積み、大西洋に運んでいる船が増えているからだと考えている」

 従来、市況に対する予測や見立てはオペの仕事だった。

 しかし、定期用船の短期化、市況連動契約の導入などで日本船主、さらには金融機関までもが日々のドライ市況に敏感にならざるを得ない。

(国内船主取材班)

=毎週月曜掲載