印刷 2022年04月18日デイリー版4面

記者の視点/浦野綾】域内船社の拡大戦略、長距離参入 定着するか

 主要コンテナ船社が記録的な好業績を記録する中、アジア域内船社の中長距離航路の開設や、それを見据えた船隊強化が続いている。

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 中国内航、台湾航路からスタートした中国船社のチャイナユナイテッドラインズ(CUL)は昨年から航路を急速に拡大。アジア域内だけでなく、南米や中東、欧州、北米西岸航路にも進出した。

 航路拡大に加え、船隊強化も加速している。今年2月には、中国船舶集団(CSSC)傘下の中船黄埔文冲船舶に2700型コンテナ船2隻を発注。同時期に、同じくCSSC傘下の上海外高橋造船にも7000TEU型4隻を発注している。

 また今年に入り、香港証券取引所に上場を申請。上場により、船隊規模の拡大や海外ネットワークの拡充、デジタル投資などの取り組みをさらに推進するとみられている。

 台湾船社TSラインズは3月からCULと提携し、同社が運航する中国各港と欧州を結ぶ「アジアヨーロッパエクスプレス(AEX)サービス」に自社船の投入を開始した。長距離航路でのサービス拡大を進めており、昨年秋にはニュージーランド航路を開設したほか、以前撤退した北米西岸航路にも再参入を果たした。

 シンガポールの新興船社シーリードシッピングも、急速に配船ネットワークを拡大。3月から、中国―北米東岸航路に新規参入し、一部では、欧州航路進出も検討中と報じられている。

 タイ船社リージョナルコンテナラインズ(RCL)は同月、今治造船とジャパンマリンユナイテッド(JMU)の営業・設計合弁会社日本シップヤード(NSY)に1万2000TEU型2隻を発注した。新造船の投入航路を明らかにしていないが、その船型から中長距離航路への投入の可能性もあるとみられている。

 各社の航路拡充に加え、アジア域内船社間では共同配船によるサービス拡充も進展。各社が自社船を投入し、協調する形で豪州航路や中東航路などのネットワークを拡大する動きも相次いでいる。

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 こうしたアジア域内船社の動向について、長距離航路を運営しているある主要船社の関係者は、「東西航路に新規参入する動きに、直近で危機感を抱いているわけではない」と述べ、影響は限定的との見方を示した。

 アジア域内航路に比べ、北米などの長距離航路を定期的に運航するためには現地での基盤づくりも重要となる。そしてそのためには、長期的な投資が求められる。

 海上運賃の高騰を背景に、アジア域内船社が今の勢いのままどこまでネットワークを拡大するかは、今後の海運市況の推移と同様、容易には予想できないだろう。

 ただ、長期化する世界的なサプライチェーンの混乱や記録的なインフレ、ロシアによるウクライナ侵攻など、未曽有の状況が続く中、海運マーケットに新たなプレーヤーが台頭する可能性はゼロではない。

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 運賃高騰を背景とした拡大戦略が一過性のものとなるのか、市況の動向と共に長期的に注目する必要があるだろう。