印刷 2022年03月22日デイリー版1面

ECL、今期経常78億円。過去最高、採算重視 選択と集中。在来貨物船3隻新造

長手社長(左)と高山副社長
長手社長(左)と高山副社長

 自動車船、在来貨物船を運航するイースタン・カーライナー(ECL、本社・東京都)の2022年3月期の連結経常利益が前期比10倍の78億円と過去最高を記録する見通しだ。マーケットの需給がタイト化する中、「採算を重視して航路を取捨選択し、運賃改善に注力した」(長手繁社長)ことが寄与。7年ぶりに新造船への投資も再開し、国内船主からの長期用船ベースで1万3000―1万4000重量トン級ツインデッカー3隻(来年4―10月竣工予定)の整備を決めた。

 「想定を上回る利益を確保できた。社内で具体的な経営方針や収支状況などの情報開示を図り、社員全員が明確なターゲットとそれぞれの役割を意識して力を注いだ成果だ」

 昨年6月にトップに就いた長手社長は就任1年目の手応えをそう語る。

 今期の連結営業利益は前期比8倍の80億円、純利益は23倍の67億円の大幅増益を見込む。

 セグメント別の営業損益は自動車船事業が22億円の黒字(前期は1億600万円の赤字)を予想。タイトなマーケットが続く中、ロシア向け建設機械・新車・中古車などが好調だった。スペース不足が深刻化しているコンテナ船からの貨物シフトも生じた。

 ECLの自動車船隊10隻は自社船比率が高く、コスト競争力に優位性がある。「高値のスポット用船を抑制し、自社船で航路を取捨選択しながら、収益を上げている」(長手社長)

■在来船も黒字化

 運航規模18―20隻の在来貨物船事業の営業損益も2億1900万円の黒字(前期は5億5000万円の赤字)に転換する見通し。

 日本積み―東南アジア揚げ鋼材輸送は運賃改善が思うように進まず、厳しい採算が続いた一方、インド航路や北米航路、東南アジア積み―バングラデシュ揚げプラント案件輸送などの三国間航路は高マーケットを反映した運賃改善が進んだ。

 国内子会社は計18億円を稼ぎ、ECLエージェンシー(本社・東京都)や優和シッピング(同・愛知県)などが好調だった。

 中国や韓国、東南アジア、インド、北米などに展開している海外現法14拠点の利益も21億円に積み上がった。

 ECLの単独ベースの営業損益は37億円の黒字(前期は8億7600万円の赤字)に転換。9期ぶりの単独黒字化となり、期初の利益目標10億円を大きく上回った。

 過去3年ストップしていた新卒採用も再開し、今春に6人の入社を予定している。

■中古買船2隻

 新造整備するツインデッカーは、新来島どっくで来年4―6月竣工予定の1万3400重量トン型2隻、檜垣造船で来年10月竣工予定の1万4000重量トン型1隻。国内船主から期間10年にわたり定期用船する。

 25年以降の契約船に適用される新造船燃費規制「EEDI」(エネルギー効率設計指標)フェーズ3に先行対応するエコ仕様船となる。

 「投資は2年間凍結しようと考えていたが、在来貨物船マーケットの逼迫(ひっぱく)を考慮し、日本建造の高品質なエコ船型が必要と決断した。来期の早い段階でさらに1隻の新造整備も検討している」(長手社長)

 中古買船にも踏み切り、国内船主から定期用船していた在来貨物船2隻を用船契約満了のタイミングで購入した。

 高山浩司副社長は「過去の水準から比べると割高だが、そのまま手放すと、中国船主などに売却されてしまう。これ以上、高値のスポット用船を強いられる状況は避けなければならないと考えた」と購入の背景を明かす。

■航路撤退も検討

 長手社長は在来貨物船事業の喫緊の課題に「鋼材運賃の改善」を挙げる。

 「往航(日本―東南アジア)のスポット用船料が1万6000―2万ドルに高騰する中、日本積み鋼材は数年前に決めた運賃水準からほとんど改善が進んでいない。海運会社にとって持続可能な事業環境ではなく、このままでは一部航路の撤退も真剣に検討せざるを得ない」(長手社長)

 ECLの在来貨物船事業は今期、日本積み鋼材を中心とする東南アジア往航で1億3800万円の損失を計上。インド・ベンガル地域および三国間での3億5800万円の利益でカバーした。

 ここ数年、在来貨物船マーケットでは、国内船主が日本製ツインデッカーを相次いで中国船主に売却。過去の海運不況で運航規模を絞り込んできた邦船オペレーターが、中国船主に高値のスポット用船料を支払って鋼材を輸送する状況が生まれている。

 「残念ながら、日本積み鋼材輸送が国内船主にとって魅力のない事業になっている。現在の運賃水準ではオペレーターが国内船主に十分な用船料を支払えない。今後、マーケットで船の取り合いが激しくなることが確実視され、日本鋼材の安定輸送が脅かされることを危惧している」(同)

■ロシア配船停止

 長手社長は来期の見通しについて「今期の数字がベンチマークになるが、船隊を絞っていることに加え、ロシア配船停止や燃料油高騰もあり、簡単ではない」と語る。

 欧米のロシア経済制裁を受け、ECLは2月末から日本―極東ロシア航路の配船を一時休止し、新規ブッキングの引き受けも停止した。今後、自動車船はアジアやベンガル湾中心に展開を図る。

 長手社長は「ロシア船舶代理店への送金ができなくなっており、運航面でも、制裁対象企業が日々変化するので船体保険のカバーなどが不透明だ。潜在リスクが大きすぎ、費用対効果の次元ではない。用船している船主もロシア配船に難色を示している」と極東ロシア航路の困難な現状を説明する。