印刷 2022年02月28日デイリー版1面

ウクライナ危機】海運に警戒感 強まる。海外ドライ船が被弾、邦船社は運航船 退避。主要商業港が封鎖へ

黒海の運航船のトレードマップ(ベッセルズ・バリュー提供)
黒海の運航船のトレードマップ(ベッセルズ・バリュー提供)

 ロシアがウクライナに軍事侵攻したことを受けて、海運業界が警戒感を強めている。黒海とアゾフ海に面する主要な商業港が封鎖されたほか、トルコ船社が運航する中型バルカーが黒海を航行中に被弾したとの情報もある。邦船社はウクライナの港に寄港している船舶に退避を促している。一方、現時点で日本や欧米が関与するLNG(液化天然ガス)プロジェクトや同国発のエネルギー輸送への影響は報告されていない。

 P&I保険(船主責任保険)によると、黒海とアゾフ海に面する主要港湾が封鎖された。これを受け、コンテナ船やドライバルク船などに影響が出始めている。

 ウクライナは小麦やトウモロコシの主要な輸出国。鉄鉱石や鋼材なども輸出している。港湾が封鎖されれば荷役が滞るため、「黒海エリアから退去する動きが出ている」(穀物商社関係者)という。

 欧米諸国がロシアに経済制裁を課したことで、「同国から原油などを輸入するのを手控える動きが広がる可能性もある」(海運関係者)と、エネルギートレードへの影響も注目される。

■オデッサ沖で被弾

 一般商船の直接的な被害も報告されている。

 複数の海外紙によると、黒海のオデッサ港沖で現地時間24日午後2時、トルコ船主ヤサ・シッピング保有の6万1000重量トン型バルカー「Yasa Jupiter」に砲弾とみられる飛翔体が着弾した。

 ブリッジに近い5番貨物倉のハッチカバーに着弾したとの情報があり、負傷者はいなかったが、ブリッジ全面のガラス窓が破壊された。

 英国の船価鑑定大手ベッセルズ・バリューによると、同船は2019年竣工のマーシャル諸島籍船。英トレードウィンズ紙によると、同船は米穀物大手カーギルが定期用船し、独船主オルデンドルフ・キャリアーズが再用船している模様だ。

 同船は23日昼にウクライナのドニプロバグスキー港を出港し、黒海を南下中に砲撃を受けたとみられる。25日午前時点では黒海から退避するため、トルコ海峡の入り口に差し掛かっている。

 穀物市場の関係者は「現地は危険な状況であり、一般商船は黒海からの退避を急いでいる」と話す。

■ドライ市況押し下げか

 ドライバルク船市況にとっては、市況の押し下げ要因になる可能性がある。

 ウクライナは小麦やトウモロコシの主要な輸出国だが、港湾封鎖で出荷が止まれば輸送需要の減退要因になるためだ。

 「特に大西洋の市況にマイナス影響が出る恐れがある」(海運関係者)

 また、穀物関連の荷主の中にはロシアやウクライナからの調達を様子見する動きもある。それらも市況の下押し要因になり得る。

 一方で、港湾封鎖が長引いた場合、市況にプラスの作用が働く可能性もある。ウクライナから小麦を輸入していた国は、北米や豪州など遠隔地から輸入しなければならず、トンマイルが伸びて船腹需要を押し上げるシナリオも想定されるためだ。

 ロシア侵攻前時点での米農務省の予測によると、21―22穀物年度(21年7月―22年6月)の小麦輸出量見通しはウクライナ2400万トン、ロシア3500万トン。21年10月―22年9月のトウモロコシ輸出量はウクライナ3350万トン、ロシア450万トンが見込まれていた。

 ウクライナは穀物のほか、鋼材の供給国でもある。中小型バルカーで西欧などに出荷されている。

 鉄鉱石の輸出国でもある。邦船社のケープサイズの配船実績もある。

 邦船勢も黒海に面するユジニー港からアジア向けの鉄鉱石輸送を手掛けており、それらトレードへの影響も出てくる模様だ。

■ロシア原油を敬遠

 ロシア産原油トレードへの影響について、邦船関係者は「ロシアが欧米の制裁対象国となったため、同国からの調達を敬遠する荷主が出てくるだろう。足元は制裁の見通しによって状況が目まぐるしく変わっている」と話す。

 その上で「原油の供給逼迫(ひっぱく)、価格が上昇基調にある中で、(荷主には)在庫を抱えたいという機運も高まっているのではないか」と語り、ロシア以外のソースからの調達増の可能性を指摘する。

 ロシアは世界2位の原油輸出量を誇る産油国。日本の原油輸入量に占めるロシア産は4%程度で、アフラマックスなどの中小型タンカーで輸送されている。

 一方、VLCC(大型原油タンカー)のスポット市況は反発している。ロシア軍がウクライナに侵攻した24日の中東―中国の運賃はWS(ワールドスケール)39を付け、前日のWS30台前半から数ポイント上昇した。

 ただ、主因はバンカー(船舶燃料油)価格の急騰と見られ、ブローカー関係者は「船腹需給の改善に起因する上昇ではないとみている」と話す。

 ロシアの侵攻に伴い、今後も原油とバンカー価格の高騰が予想され、足元のVLSFO(低硫黄重油)は過去最高のトン当たり800ドルに迫る勢いを見せている。