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 印刷 2022年02月10日デイリー版2面

インタビュー 海運版CVC始動】MOL PLUS代表・阪本拓也氏、スタートアップ4社に投資

MOL PLUS代表 阪本 拓也氏
MOL PLUS代表 阪本 拓也氏

 商船三井が100%出資して昨年4月に設立したコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)「MOL PLUS」(エムオーエル・プラス)。設立から1年足らずで国内外のスタートアップ企業4社への投資を決めた。MOL PLUSの阪本拓也代表に投資方針などを聞いた。

 (聞き手 山田智史)

 ――改めてMOL PLUSの役割を教えてほしい。

 「スタートアップ企業が持つ斬新なアイデアやテクノロジーと商船三井グループのリソースを掛け合わせ、海運業と社会に新しい価値をプラスすることがわれわれのミッションになる」

 「脱炭素化やデジタル化の潮流を背景に、海運業界は変革期にある。商船三井のビジネス形態も変容しつつある。商船三井が新事業を創出するために必要なもので、内側から生み出すことが難しい技術などについて、それらを提供できる可能性を秘めたスタートアップ企業を発掘したい」

■社会実装を支援

 ――これまでの投資実績は。

 「スタートアップ企業に直接投資するケースと、スタートアップ企業に投資することをなりわいとするベンチャーキャピタル(VC)に出資するケースがある」

 「直接投資では、金属有機構造体(MOF)を活用した新機能材料の開発を手掛ける京都大学発のスタートアップ企業Atomis(アトミス、京都市)と、再生可能エネルギー由来の電力取引プラットフォームを運営するデジタルグリッド(東京都千代田区)の2社に出資した」

 「VCへの出資としては、ユーグレナ(東京都港区)とリバネス(同新宿区)の合弁会社リアルテックホールディングス(同墨田区)が運営するリアルテックファンドと、英レインメーキングが運営する海運・物流領域に特化したモーションベンチャーズファンド(シンガポール)に出資した」

 「MOL PLUSの出資枠40億円のうち、7割を直接投資、3割をVCへの投資に充てていくつもりだ。VCに出資するだけでなく、VCが発掘したスタートアップ企業にわれわれも一緒に出資する可能性もある。実際、意思決定済みの直接投資の3件目と4件目はそういった事例になる」

 ――スタートアップ企業と協業する可能性も探っている。

 「スタートアップ企業が持つ新しい技術や製品の社会実装を支援していくことは、出資者としての役割の一つだ。商船三井グループのリソースを活用し、海運・海洋分野での事業創造をサポートしていく」

 「AtomisとはMOL PLUSの出資に合わせ、商船三井テクノトレードが船舶向け水素サプライチェーン構築におけるMOFの利活用などに関する共同検討で合意した」

■価値向上に貢献

 ――投資判断で重視していることは何か。

 「スタートアップ企業が持つアイデアやテクノロジー、潜在的な市場規模、商船三井グループとのシナジー(相乗効果)などを基に審査する。具体的な成果が出てくるまでには長い年月がかかる。そのため、起業家の方と一緒に頑張っていきたいと思えるかどうかも重視している」

 「われわれも商船三井グループとして、いかにスタートアップ企業のバリューアップに貢献できるかということを具体的に示す必要がある。ぜひ出資者になってもらいたいと思ってもらえることが、長期的なパートナーシップ関係の構築には欠かせない」

 ――スタートアップ企業からの反応はどうか。

 「スタートアップ企業が集まるカンファレンスに積極的に参加し、情報収集している。その場で起業家の方々から海運業に関心を示される機会が多い。これまで海運業との接点がなかったためだ。スタートアップ企業と海運業をはじめとする海事産業の懸け橋になれればいいと思う。投資実行案件が増え、検討案件も増えているため、2年目以降はメンバーも拡充したいと考えている」

 【略歴】さかもと・たくや 12(平成24)年京大農卒、商船三井入社。鉄鋼原料船部やシンガポール法人出向、自動車船部を経て、社内起業制度で「海運版CVCの設立」を提案。21年4月から現職。大阪府出身、32歳。