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 印刷 2022年01月18日デイリー版4面

記者の視点/山田智史】中小型バルカー市況、堅調予測も「想定外」に備えを

 「(市況が)いつ落ち込むか内心びくびくしている」

 中小型バルカーを運航する海運会社の関係者はそう語る。

 昨年は海運関係者の予想に反し、石炭や穀物、非鉄鉱石などを運ぶ中小型バルカー市況は高騰した。年明け後は大型船市況の下落に引きずられる形で、中小型船も軟化している。ただ、足元の市況レベルは前年同期と比べて約2倍の水準で、依然として高水準を維持している。

 今年も新造船の供給量は限定的で、新型コロナウイルス感染再拡大により船舶稼働率が低い状態も続いているため、今のところ需給バランスが崩れる要因は見当たらない。だが、市況低迷の苦い記憶がまだ新しいのもあり、海運関係者は市況の行方に気をもんでいる。

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 改めて、昨年の中小型バルカー市況を振り返ってみる。

 調査会社トランプデータサービスによると、過去と比較可能な5万2000重量トン型ハンディマックスの2021年平均のスポット市況(主要航路平均)は日建て2万5580ドルだった。

 20年平均の7870ドルの3・3倍に急上昇し、52型の平均的な損益分岐点とされる1万ドル台前半の2倍近い高値となった。

 2万8000重量トン型ハンディサイズの21年平均のスポット市況も3・2倍の2万2335ドルに急騰。ハンディマックス、ハンディサイズ共に、08年以来となる13年ぶりの高値を付けた。

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 中小型バルカーのスポット市況が急激に回復したのは、新型コロナ感染拡大のあおりで船舶稼働率が低下したのが主因とみられている。

 新型コロナの感染拡大を食い止めるために、各国政府は水際対策を強化。それに伴い寄港制限が厳格化され、荷役効率が低下。また、定期検査のためのドック期間の長期化や船員交代のためのデビエーション(航路離脱)も船舶稼働率低下を助長した。

 さらに物流混乱に伴うコンテナ船のスペース逼迫(ひっぱく)を受けて、一部のコンテナ貨物がドライ船市場に流入したのも、中小型バルカーの需給タイト化に拍車を掛けた。

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 中小型バルカーのオペレーター(運航会社)は、一昨年まで市況低迷長期化による苦境にあえいでいた。海外オペの中には用船料の支払いに窮するところも多かった。1年余りの間に取り巻く環境は一変した。

 今年の市況はどうなるか。昨年の高値から一定の調整が入るにせよ、堅調に底堅く推移するとの見方が大勢を占める。一方で、昨年の市況高騰が想定外だったように、「予想しても当たらない」という声も聞かれる。

 AI(人工知能)などを駆使したとしても、市況を正確に予想することは難しいだろう。荷主の持続可能な成長に貢献するとの海運会社の使命を果たすには、市況変動の影響を受けにくい体制を構築し、安定的に輸送サービスを提供していくことに尽きる。