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 印刷 2022年01月14日デイリー版1面

インタビュー 船舶管理大手 日本拠点開設】フリートマネジメント社長・キショア・ラジヴァンシー氏。日本保有船130隻を管理

フリートマネジメント社長 キショア・ラジヴァンシー氏
フリートマネジメント社長 キショア・ラジヴァンシー氏

 香港の船舶管理大手フリートマネジメントは昨年秋、東京都港区に日本事務所(代表者=秋澤邦英バイスプレジデント)を開設した。世界2位の船舶管理隻数を誇る同社のキショア・ラジヴァンシー社長に日本での事業展開やグループの重点戦略を書面インタビューした。(柏井あづみ)

 ――フリートマネジメントのグループ概要を聞きたい。

 「当社は1994年に創業した世界第2位の独立系船舶管理会社だ。船舶管理隻数は約600隻に達し、約2万4000人の船員と1000人の陸上専門家に支えられている」

 「グローバル網として東京事務所を含め13カ国に27事務所を展開。香港の本社オフィスは世界最大の管理隻数を誇り、約400隻を手掛けている。その他の200隻はシンガポール、ロンドン、キプロス、インド、アムステルダムの各拠点で管理している。乗組員の出身国・地域トップ5は、インド、フィリピン、中国、東欧、韓国だ」

 「主力の船舶管理サービスに加えて、近年は新造船の建造監督部門が急速に伸長している。約15年前の同部門設立以来、250隻以上の新造船の建造を監督し、現在は約80隻の建造監督を実施中だ。この中には現在発注されている2元燃料タンカーの2・5%に相当する隻数の建造監督業務が含まれる」

 ――船舶管理事業の特徴は。

 「船員から陸上従業員に至る約2万5000人が生み出す大きなエネルギーとコミットメントにより600隻の船舶管理を実現させている」

 「現在、当社はバルカー251隻、タンカー257隻、コンテナ船78隻、自動車船と冷凍船14隻の船舶管理を請け負っており、世界の船主126社に多様なサービスを提供している」

 「管理船の中には世界最大級のケミカルタンカー、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト船、最新鋭の18万立方メートル型LNG(液化天然ガス)船、VLOC(大型鉱石船)、メガコンテナ船なども含まれている」

 「さらにはLPG(液化石油ガス)燃料、LNG燃料、メタノール燃料と現在利用可能な3種類の燃料を使用する2元燃料船も管理している」

■日本の成長支える

 ――日本での事業展開は。

 「日本は27年前、私たちを最初に両手を広げて歓迎してくれた市場であり、今でも船舶管理事業において最大かつ最重要な市場だ。現在、日系船主の保有船でメガコンテナ船、ばら積み船、2元燃料ケミカルタンカーまで約130隻を管理させていただいている」

 「日本は船主の質が高く、多様性も他の市場とは異なる。船舶の設計、造船、船舶保有、運航の各分野で真のパイオニアでありリーダーだ。また、他の追随を許さない海上保険・金融市場も存在する。最高の安全性と技術に準拠した優れた船舶管理サービスに対する需要は高く、当社の提案できる価値は非常に高いと考えている」

 「日本事務所の開設によって、この関係をさらに強固なものにしていきたい。海運業界の規制は常に進化し、より複雑になっているが、日本の顧客がこれらの課題をチャンスに変え、成長への道を歩むのを支援するための体制をわれわれは整えている」

■2元燃料21隻監督

 ――次世代燃料における取り組みは。

 「現在、LNG、メタノール、LPGなどに対応した2元燃料エンジン搭載船を9隻管理している。さらに21隻の2元燃料エンジン搭載船の新造船建造監督業務を受託していることはわれわれの励みになっている」

 「1年以上前からAPモラー・マースク、ケッペル・オフショア&マリン、マースクゼロカーボンシッピング研究所、住友商事、米国船級協会ABSと共同で、シンガポールにおいてアンモニアの燃料化とアンモニアバンカリングの開発に取り組んできた。近くアンモニアバンカー船開発に関するHAZOP(ハザード操作性解析)に基づく安全性評価が始まる予定だ」

 ――近年の海難事故の傾向をどのように分析し、対策をとっていくか。

 「データ上では、海難事故の全体数は減少しているかもしれないが、実際、海上にはかつてないほど多くの船舶があり、また船舶の大型化が進み、管理も複雑になってきている。港湾や混雑した海域でも船員は迅速な航行を求められており、またCOVID―19の登場により船員へのメンタルヘルスが安全に影響を及ぼすことも明らかにされた」

 「乗組員の継続的なトレーニングが不可欠であり、われわれはここに多大な投資をしている。インドの研修所『FMTI』では、大型船の操船、液体・ガス輸送に必要な高度な技術、電子・デュアルフューエルエンジンなどを効率的に習得するためにシミュレーターを使ったトレーニングを乗組員に提供している」

■PARISで受賞

 ――デジタル技術による船舶管理の高度化にどう取り組んでいるか。

 「デジタル技術の革新が海運業界を変えようとしている。約20年前に当社は受賞歴のあるデジタルプラットフォーム『PARIS』(Planning and Reporting Infrastructure for Ships)を発表した。パイオニアとしての当時から20年たった今でもPARISのテクノロジープラットフォームは目的にかなっており、以前にも増して今日必要なものとなっている」

 「次世代のPARIS2.0は、デジタル技術とデータを既存業務にシームレスに統合するデジタルエコシステムだ。船舶検査リポートのデジタル化、データ分析、法定基準や業界標準に照らしたベンチマーキングなどの機能を有し、船舶性能の最適化、安全および環境基準の順守を容易にしている」