印刷 2022年01月07日デイリー版1面

インタビュー 港湾デジタル化】日本港湾コンサルタント社長・高橋浩二氏、ニーズ捉え最適解

日本港湾コンサルタント社長 高橋 浩二氏
日本港湾コンサルタント社長 高橋 浩二氏

 今年度から国土交通省が進める港湾関連データ連携基盤「Cyber Port(サイバーポート)」の第1次運用が開始されるなど港湾物流の電子化が進展している。国内外で長年、港湾や海岸などの総合コンサルティングを手掛けている日本港湾コンサルタント(JPC)は昨年11月、港湾のデジタル化に特化した新会社「ジェイピーシーソリューションズ(JPCS)」を設立。JPCの高橋浩二社長にその狙いと、港湾のデジタル化の動向について聞いた。

(聞き手 幡野武彦、浦野綾)

■新会社で機動力

 ――11月1日、新会社JPCSが発足した。

 「港のデジタル化に向けた投資の加速化を目的に、JPCSを設立した。9月にデジタル庁が発足するなど日本国内でデジタル化を推進する機運が高まる中、デジタル分野に新たに取り組むためには機動力が不可欠だった」

 「港湾のデジタル技術に関して世界で通用する日本の企業がほとんどない中、弊社は、世界に1000人以上のIT技術者を抱え、コンテナターミナル(CT)のTOS(ターミナルオペレーティングシステム)分野で世界第2位の実績を持つ韓国のサイバーロジテック社と手を組んでいる。フォワーディングシステムやシミュレーション、エミュレーションなど幅広い技術を持つ同社と共にトライ&エラーを繰り返しながら、スピードや突破力を上げていく」

 ――JPCSで提供するサービスは。

 「フォワーディングシステム『OPUS Logistics』を提供している。同システムは、物流業務を一気通貫で管理・効率化できるもので、日本のユーザーニーズに合わせてカスタマイズできるのが特長だ。既に大手日系企業にも導入している」

 「国交省が推進するサイバーポートは現在、フォワーダーなどのユーザーをつなぐ接点に対するフォローが手薄な状況だ。『OPUS Logistics』は、サイバーポートと各ユーザーとの接点をフォローし、利用する現場の方の利便性向上に貢献するため、フォワーディングシステムでのニッチな部分をケアしていく」

 「同システムは、既に世界で400社以上の導入実績があり信頼性が高い。これを日本版に商習慣・言語をアレンジして提供している」

■CT自動化に対応

 ――CTの自動化への対応は。

 「デジタルの主流となるデジタルツイン(仮想空間に再現した複製)やCTの完全自動化の分野にも対応する。日本にはCTの完全自動化に対応できる技術が現時点ではない。CTの完全自動化を実現するためには、国が自主開発をするか、海外の技術を取り入れて日本版を作り上げるか、民間に任せるかを判断する必要がある」

 「JPCSでは国土交通省の政策にのっとった対応をし、荷役機器メーカーなど日本の港湾のプレーヤーと相互補完しながら日本の持つ高度なノウハウを最大限に生かせるように今後の体制構築に向けた協議を進めていきたい」

 ――日本の港湾の自動化に向けては。

 「CTの自動化を実現するためには、港の特徴に応じた導入ステップがある。例えば、RTG(タイヤ式トランスファークレーン)の運転席を室内に移動するだけのものから、1人の遠隔操作者でRTGを複数台動かしたり、完全自動化も考えられる」

 「JPCSは、自動化ターミナル設計や物流システムの導入サポートなどのコンサルティングに加え、TOSやRTGなどの港湾機器、遠隔操作コントローラーを的確にマッチングし、最適なソリューションを展開するなど、各港の特性に即したデジタル化の方策を提案する」

 「また、現在稼働中の港湾で新たに遠隔操作技術を導入する場合や、全自動ターミナルを一から作り上げる場合のいずれのケースにおいても、顧客ニーズに合わせて対応していく」

 ――日本企業特有のニーズや利用者が重視するポイントは。

 「安全面への配慮から自動翻訳ではない正しい日本語で確認できることは強く求められている。港湾の現場では正確に意味が伝わらないと重大事故につながる危険性があるからだ」

 「セキュリティーを非常に重視する企業が多いのも特色だ。信頼性を確保するため、こうしたニーズにも柔軟に対応している」

■現場の安全性向上

 ――世界の港湾ターミナルの自動化の動向は。

 「欧州ではコロナ禍で港湾労働を担う移民が入国できなくなるという事態も発生し、自動化の動きが加速度的に進展している。関連する企業の営業合戦となっている様相だ」

 「中国や東南アジア、オーストラリアでも港湾の自動化を手掛ける大手企業が勢力を拡大し、世界で競争が激化している。一方、日本に着目すると、その動きは非常に穏やかだというのが実情だ」

 ――港湾の自動化によって生み出される効果は。

 「労働環境の安全性向上に大きく貢献する。天候にも左右されず、事故の危険性などを回避しながら作業ができるという利点がある。釜山港では遠隔操作RTGの導入により、1人当たり3機を稼働することができるようになった。港湾現場での女性や障害者の活躍、事故でやむなく港湾の仕事を去らざるを得なかった方々などの再雇用にもつながると考えている」

 「完全自動化を行っている世界の港湾でもそうであるように、現場技術の継承や向上、トラブル対応、メンテナンスなど有人で対応すべき部分は必ず発生する。自動化と言っても現場には必ず人が必要となると考えている」

 たかはし・こうじ 82(昭和57)年運輸省(現国土交通省)入省。関東地方整備局港湾空港部長、港湾局計画課長、中部地方整備局副局長などを歴任。19年から現職。65歳。