印刷 2022年01月06日デイリー版1面

商社に聞く 船舶事業の新潮流】(6)三井物産 モビリティ第二本部輸送機械第一部長・濱田昭仁氏、同第二部長・村田浩一氏、同第三部長・平井正明氏、同第四部長・久保田堅介氏。鋼材価格の行方が焦点

(右から)濱田氏、村田氏、平井氏、久保田氏
(右から)濱田氏、村田氏、平井氏、久保田氏

 ――2021年の造船・用船マーケットを振り返ってどうか。

 「船種や船型によって差異はあるが、ここ数年は新造船の供給量が少なく新規発注も限定的だったため、新造船・用船・中古船の市況がいずれも大きく上昇した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、20年は新規投資が手控えられた反動もあり、21年は船主・用船者ともに需要が旺盛で動きも活発だった」

 「新造船価格も大幅に上昇した。用船・中古船市況が高騰した部分もあるが、鋼材を中心とする資機材のコストが上昇した影響が大きい。また、21年の特徴的な動きとしては、欧州のプレーヤーを中心により環境対策を意識した投資行動が一層鮮明になってきたことが挙げられる」

■堅調な市況を予想

 ――22年の見通しは。

 「用船市況については、好調だった21年の調整局面で若干の下落は想定するものの、引き続きドライバルク船、コンテナ船は高水準で推移すると予想している。タンカーは22年後半からの回復を見込む」

 「新造船市況については、鋼材の値上がりが造船所の採算面で深刻な問題になりつつある。鋼材価格の今後の行方が一つの焦点になる。環境対応などのコスト増を誰がどのように負担するか、関係者が議論を深めることも課題になるだろう」

 ――21年の事業活動に対する評価は。

 「新造船の営業、中古船の仲介など成約はそれなりに増えた。ただ、鋼材価格の上昇に伴い新造船価が上昇したため、年後半は商談が鈍化した。売船しても再投資が難しいため、中古売船も一服した。保有船事業では資産価値の上昇を好機と判断し売船を進めた」

 「LNG(液化天然ガス)船の保有事業は、FSRU(浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備)も含め約20隻に関与している。当社はLNGをゼロエミッションに至る移行期の燃料と見なしている。社内のエネルギー部門とも連携し、長期契約が付く船などに選択的に取り組む」

■海のGoogle

 ――商社に求められる役割について、どのように考えるか。

 「造船業界では、中国では二大国営造船所が統合し、韓国でも現代重工業と大宇造船海洋が統合するなど大型再編が進行した」

 「そういった中で、われわれも本邦造船業や海事クラスターが世界で競争力を維持できるように、微力ながら努力していきたい」

 ――三井物産と三井E&S造船、揚子江船業が共同出資する中国の江蘇揚子三井造船(YAMIC)の現況は。

 「YAMICは市況が良かったため、8万2000重量トン型を中心にバルカーの受注を重ねた」

 ――三井物産も出資する米国のベアリング社と共同で、AI(人工知能)を活用し船舶運航の最適化支援を開始した。

 「ベアリング社が開発した深層学習ベースの船舶性能モデルを利用して、過去の航海データを基に燃料消費量を伏せて燃費を予測したところ、99%の精度で予測することができた。従来型の手法では80―90%の精度が限界だった。海運会社からは『革命的』との評価を受けている」

 「ベアリング社は設立当初から、『海のGoogle』を目指している。AIで気象を予測し、航路・航行速度が最適化できれば、本当の意味での最適航路を提案できる。まだまだ課題も多いが、モビリティ第二本部で手掛ける宇宙事業とも協力し、新たな展開も狙っていきたい」

■新燃料を研究

 ――デンマークの海運大手APモラー・マースクほかパートナーが設立した環境技術に関する研究開発組織「Maersk Mc-Kinney Moller Center(MMMC)」に参加した。

 「50年のGHG(温室効果ガス)ネットゼロに向けて、水素やアンモニア、メタノール、バイオ燃料などの代替燃料が注目されている。当社も海運の切り口だけでなく、全社的に注力している。実用化には技術、供給能力、経済性などが課題になる。サプライチェーン全体で実現可能性を検証する必要がある」

 「マースクの研究所は、海運業界のサプライチェーン全体での連携を通じて、代替燃料や新たな船舶運航技術の研究開発・実用化を進めることを目的としている」

 「そのほか環境関連では穀物メジャーの米カーギルと共に、各種省エネ技術を実船に搭載し、その効果を検証することで、省エネ機器などの普及を目指している」

=おわり

 (この連載は柏井あづみ、山田智史、松下優介、鈴木隆史が担当しました)

 はまだ・あきひと 92(平成4)年入社。船舶海外事業部アジア・極東室長、OMCシッピング出向(在シンガポール)、船舶営業部新造船プロジェクト第三室長などを経て21年12月から現職。

 むらた・こういち 93(平成5)年入社。東洋船舶出向、船舶営業部新造船プロジェクト第二室長、経営企画部企画室次長(法務部企画・国内ビジネス推進兼務)などを経て20年6月から現職。

 ひらい・まさあき 91(平成3)年入社。船舶事業開発部社船・事業開発室室長、中東三井物産業務部部長、東洋船舶出向などを経て21年10月から現職。

 くぼた・けんすけ 95(平成7)年入社。MITSUI&CO.EUROPE、船舶営業部新造船プロジェクト第一室、人事総務部人事企画室などを経て21年10月から現職。