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 印刷 2022年01月06日デイリー版4面

年頭所感】日本中小型造船工業会会長・越智勝彦、未来見据えイノベに挑戦

日本中小型造船工業会会長 越智 勝彦氏
日本中小型造船工業会会長 越智 勝彦氏

 2021年は新型コロナウイルスとの闘いが2年目となり、緊急事態宣言や全国的な外出自粛要請が長期化しました。コロナの影響による厳しい業況はいましばらく続きそうですが、雇用調整助成金の特例措置が延長されましたことにつきましては、当業界としても大変ありがたく、ご尽力していただきました国会議員の先生方、国の関係者の皆さまに厚く感謝申し上げます。

 中小型造船業は、昨年の春以降、新造船の一部の船種においては多少の受注回復が見られたものの、依然として低迷を続けている船種も多くあることに加え、過去に例を見ない鋼材価格の高騰と供給遅延に直面し、建造工程管理や資金繰りに大きな影響を受けています。

 一方で、50年のカーボンニュートラルをはじめとする世界規模での脱炭素社会に向けた動きが顕著となり、船舶においても、水素、アンモニア、電池など新たな燃料に対応したエンジンや推進システムの開発が目下の課題となりました。

 こうした中、海事産業強化法成立を受けて、国土交通省海事局が昨年8月に開始した事業基盤強化計画の認定制度において、11月末までに当会員による計画を含む11件が認定されました。

 造船・舶用事業者と海運事業者が共同で特定船舶の計画・技術開発・建造を行うことで好循環を創出し、認定を受けた双方の事業者には財政融資資金によるツーステップローンの活用、税制の特例などが適用され、内航船・外航船ともに優遇を受けることができるものです。このような制度が広く活用され、造船・海運業界ともにシナジー(相乗効果)が生まれることを期待しております。

 中小型造船業は、国内外の海上交通の維持・発展に貢献するとともに、地場産業として地域の経済と雇用を支える役割を果たしております。

 当工業会では、さらなる生産性向上を目指し、昨年から設計部門が小規模な会社で威力を発揮するシームレスな設計システムの共同開発やサプライチェーンの横断的な効率化などの検討を始めたところです。内航船舶の代替建造促進や新たな需要創出に向けて、環境規制対応や省人化による船員負担軽減のための新技術開発など、これまで以上にさまざまな分野で柔軟に取り組んでいかなければなりません。

 当工業会では長年にわたり日本財団からご支援を頂いています。

 コロナ禍が長引く中での厳しい業況を踏まえ、早期に無利子融資制度を創設いただき、多くの会員造船所が活用しました。また、環境負荷低減、省力化などに優れた船舶、船型の開発や、技術者、技能者不足を克服し、設計・製造の現場における生産性を格段に向上させる造船所に対し必要な費用の一部を助成する「先進船舶の開発・実証助成プログラム」も設立していただきました。

 本プログラムの実施に当たっては、50年カーボンニュートラル、内航船省人化などの中長期的な課題に対し、中小型造船業として従来の体制や思考の枠にとらわれない解決策を打ち出すため、日本財団の直接の指導の下、中小造船所が協力して目的別の3コンソーシアムを形成し、会社独自の枠から抜け出し、特に異分野企業との交流による知見の吸収や協働などを行う取り組みを始めたところです。

 昨年から中小型船に特有のアルミ溶接技術者の育成を実施しており、会員造船所など10社に講師を派遣して研修を実施しています。低・脱炭素船などの新しい燃料・推進機関・機器などに対応した設計、工作などの技術に対応できる人材育成にも注力してまいります。

 人材育成分野では進水式や造船所の見学会、小中学校で授業として造船・海運を総体的に学ぶ海事産業ものづくり体験講座の実施を通じて、次世代を担う子供たちへ造船業の魅力を発信しています。

 また、日本海事協会の支援による全国6カ所の地域造船技能研修センターでの新人研修および専門技能研修への協力など幅広く取り組んでいるところです。

 人材育成と共に中小型造船業界において欠かせないのが短納期需要に応える設計・建造工程管理と労働安全衛生対策です。当工業会では日本財団のご支援を受けて、AI(人工知能)活用による適切かつ短納期の設計工程を作成するシステムの構築を引き続き実施していきます。優秀な人材の定着には安心・安全な職場を維持することが不可欠であり、専門家による安全衛生教育、会員相互の工場点検活動を継続し、さらなる労働災害の防止に努めてまいります。