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 印刷 2022年01月06日デイリー版4面

年頭所感】日本舶用工業会会長・木下茂樹、GX・DXの対応 急務

日本舶用工業会会長 木下 茂樹氏
日本舶用工業会会長 木下 茂樹氏

 昨年を振り返ると、新型コロナウイルス感染症の影響に翻弄(ほんろう)されながらも次第にワクチン接種も進み、国や地域による温度差はあるものの世界経済は回復基調に転じました。こうした中、需要の急回復と供給制約により、経済や生活を支える基幹輸送手段として海運の重要性が強く認識され、海上運賃の上昇と新造船発注量の増大につながりました。材料価格の高騰や諸外国との競争など、依然として懸念材料は多いものの、造船・舶用工業の経営環境にも光明が見えた年となりました。

 また、世界が脱炭素化への動きをさらに加速した年でもあり、11月にはCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)において岸田文雄首相が改めて「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けた決意表明を行いました。また、日本政府および日本船主協会が、国際海運分野でも同様の目標を掲げるべきであることを表明し、IMO(国際海事機関)で他国との共同提案を行いました。さらに、内航海運においても、政府が設けた検討会の場で今後の取り組みの方向性が示されました。

 これらの目標達成に向けて、国内では政府のグリーンイノベーション基金や日本財団支援によるゼロエミッション船の開発がスタートしました。さらには、もう一つの大きな目標である自動運航船の実現に向けても、政府支援策や日本財団の「MEGURI2040プロジェクト」の下で、今春にも複数の実証実験が行われる予定です。

 このように、海事産業を取り巻くビジネス環境は大きな変革期を迎えており、GX(グリーントランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応が急務となっています。このため、海外の優れた点は取り入れつつ、わが国海運・造船・舶用業界が連携し、オールジャパンで国際競争を勝ち抜くための取り組みを進めることが肝要です。

 当会は、こうした課題への取り組みにおいて技術面などで中心的な役割を果たすべき立場にあると自負しており、長年にわたり顧客の信頼を獲得してきた高い品質や技術力、きめ細かなアフターサービス力などを基礎としつつ、一層の競争力強化を図り、高品質の舶用製品の安定供給という社会的使命を果たし、世界の海事産業の発展に貢献してまいる所存です。

 このため、本年も「日舶工アクションプラン」に基づき、「グローバル展開の推進」「海洋開発など新分野の市場開拓」「人材確保・養成対策の推進」「技術開発の活性化」「わが国海事クラスターとの連携強化」を事業の柱とし、各種事業を実施してまいります。

 グローバル展開の推進については、オンライン活用などウィズコロナとDXに即した取り組みを強化し、対象とする市場ごとに展示会やセミナーなど最適なアプローチを進めてまいります。また、今年4月に開催される国際海事展「SEA JAPAN 2022」では、日本の海事クラスターが結集してテーマゾーンを設置し、日本の海事分野の総合力・技術力を内外にアピールすることとしています。

 海洋開発分野では、日本製舶用機器のパッケージで構成するオフショア支援船(OSV)基本設計図面を活用した新造船の建造実現に向けて活動するほか、世界最大のオフショア展示会への出展などに取り組む予定です。

 さらに、今後成長が見込まれる新興国などの海外漁船市場への参入や、防衛装備品の輸出についても関係者の協力を得て取り組みを強化してまいります。

 技術開発の活性化については、ユーザーニーズに対応した新製品の技術開発に加え、業界全体の共通課題であるIMO関連の安全環境規制対応や、異業種との連携強化などの取り組みを進めてまいります。

 特に、GHG(温室効果ガス)対策としての新燃料への転換は、船舶の仕様や運航形態の変革をもたらす100年に1度の出来事であり、今後のわが国造船・舶用業界の国際競争力強化の成否を分けるものとなります。このため、エンジンだけでなく船内プラント全体の開発への取り組みを推進してまいります。

 加えて、自動運航船に関しては、自動化・省力化機器の開発、機器などの状態監視や予防保全に関する検討を進め、その早期実現に貢献してまいります。