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 印刷 2022年01月05日デイリー版7面

新年号 コンテナ物流・港湾編】オーシャンネットワークエクスプレス(ONE) ジェレミー・ニクソンCEOに聞く:好調な荷動き、旧正月明けも続く。50年までのネットゼロめざす

ジェレミー・ニクソン氏
ジェレミー・ニクソン氏
横浜港南本牧ターミナルに入港したONEの1万4000TEU型コンテナ船(写真提供・ONEジャパン)
横浜港南本牧ターミナルに入港したONEの1万4000TEU型コンテナ船(写真提供・ONEジャパン)

 2020年から始まった新型コロナウイルス感染拡大は、世界的なサプライチェーン(SC)の混乱という予期せぬ状況を生み出し、依然としてその収束時期は見えてこない。そうしたコロナ禍が生み出した旺盛な貨物需要によってコンテナ船の輸送需要が逼迫(ひっぱく)。コンテナ運賃は空前の高値を記録し、コンテナ船社は軒並み空前の好業績を上げている。邦船3社コンテナ船事業統合会社オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)も同様にこの状況を享受し、サービス開始から4年目にして安定した事業基盤を構築しつつある。とはいえ、市況高騰もいつまで続くか見えない中、コンテナ船経営はこれからが難しい舵取りになる。ONEのトップを務めるジェレミー・ニクソンCEO(最高経営責任者)に、今のSC混乱の背景や同社が取り組むべき諸課題などについて聞いた。

 ――21年を振り返った感想は。

 「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)と陸側SCの制約に影響された1年だったと感じている」

 ――21年4―9月期は記録的な業績となった。

 「陸側オペレーションでのボトルネックが港湾に波及した結果、海上コンテナ輸送の遅延に波及。配船サービスの遅延が結果として船腹供給量の削減につながり、需給が逼迫した。一方で世界のコンテナ荷動きは21年7―9月、対前年比3―5%の増加で推移するなど旺盛な貨物需要で各航路満船の状況が継続した。こうした状況下、コンテナ運賃が歴史的な高値を付けたことが業績を大きく押し上げた」

 ――今の世界的なSCの混乱はしばらく続くのか。

 「世界的な新型コロナウイルス感染拡大はまだ収束したわけではない。最近では新型コロナウイルスの新たな変異株『オミクロン型』の登場はそれを表している。コロナ禍の影は21年度にとどまらず、おそらく22年度に入っても一定程度、影響が残るのではないか。そうした状況下、もはや海上コンテナ輸送スペースは以前のような手軽に確保できる『コモディティー』ではなくなっている。そしてユーザーである荷主サイドとしても、ロジスティクスにおいて何が重要かというのは価格(コスト)ではなく安定したサービス品質だということを強く認識したのではないか」

■混乱解消は陸側が鍵

 ――今の世界的なSCの混乱は、海上輸送ではなく陸上側と指摘するが、正常化するため必要な条件は何か。

 「世界的なコンテナ物流において、出荷地側であるアジア側では港湾インフラを含めておおむね、問題ないと考えている。課題となるのは北米や欧州など需要地側となる。需要地での倉庫保管やトラック輸送、港湾など陸側SCにおける各分野での労働力不足が大きなボトルネックになっており、それらの解決が正常化のためには必要だ」

 ――陸側の問題として象徴的なのは、米国西岸ロサンゼルス(LA)・ロングビーチ(LB)両港の滞船問題がある。昨年11月下旬からようやく滞船も減少傾向となったが、抜本的な解決に向けて必要なことは何か。

 「現在の両港のインフラを見る限り、アジアからの大量の輸入コンテナを十分に取り扱える能力を有しているとは言い難い。LA・LB両港が滞留コンテナの早期搬出を促すための課徴金制度が本当に問題解決につながるかは議論の余地があるところだ」

 「それよりも、政府や主要なステークホルダー(利害関係者)による物流インフラへの投資や生産性向上が必要となる。そして北米での次の課題は、22年4―5月にも行われるILWU(国際港湾倉庫労働組合)とPMA(太平洋海事協会)による労働協約更改交渉の動向だ。この交渉の行方次第では再び、西岸港湾ターミナルの運営状況が不安定化する可能性がある」

 ――10月末に公表した“ONEイニシアチブ”では、今の旺盛な荷動き需要は22年2月の旧正月まで続くと予想している。その先はどう見るか。

 「引き続き状況をしっかり注視し続けている。しかしながら、これまでのSC混乱により、陸上の在庫率は過去の平均を下回る状況だ。2月の中国の旧正月休み明け以降は通常なら荷動きは落ち込むのが一般的だが、いつもよりも堅調に推移するのではとみている」

■運賃より安定性を重視

 ――SCの混乱が続く中、22年度のコンテナ運賃交渉はどんな傾向になると考えているのか。

 「これだけ海上コンテナ輸送の需給逼迫が続く中、サービス品質と安定性がより重視されると思っている。複数年契約や固定スペース契約に対する荷主の関心は非常に高いと感じている」

 ――ONEとしての環境戦略について、どういったことに重点を置いているのか。

 「ONEとしては、環境の持続可能性を維持することは単なる課題の一つではなく、全社に関わることであり、ビジネスパートナーや顧客とのオペレーションや商業レベルでも強い関心を持って対応する必要がある。そのためには最先端技術や環境規制に対する最新情報を常に把握していく必要がある」

■全社で環境課題に対応

 「その一環として21年8月にシンガポール海事港湾庁が設立した海事脱炭素化国際センター(GCMD、 Global Centre for Maritime Decarbonisation)の創設メンバーとなった。ONEとしては、我々の運航船隊の脱炭素化に関することや、企業として排出するGHG(温室効果ガス)削減に焦点を当てたプロジェクトの研究に取り組んでいる」

 ――次世代の船舶用燃料に関するONEとしての考え方は。

 「現在、環境に配慮したグリーンな船舶用燃料を安定して確保でき、さらに技術的にも安定してコンテナ船に使用できるかというかといえば、まだまだ初期の段階といえる。しかし、われわれは50年までに船舶からのGHG排出量ネットゼロを達成できると考えている。またネットゼロに向けて、30年までに次世代船舶とその燃料を試験的に行うことができると思っている。現時点でONEとしては、水素、アンモニア、メタノールという3種類を次世代船舶燃料として研究している」

 ――他のコンテナ船社と比べてONEの強みはどこにあるのか。

 「当社は18年4月のサービス開始から4年目となっている。この4年間で新会社を立ち上げ、事業を安定化させ、そしていま非常に強固な財務体質を構築した。イノベーションやチームワーク、デジタル化への対応などを常に追求し、最近では各種業務のデジタル化を推進する『ROOTプロジェクト』を通じてカスタマーサービスとEコマース(電子商取引)の能力をさらに強化することに注力している」

■システム投資を継続

 ――今後、中長期的にONEが成長するために必要なものは何か。

 「ONE発足前の邦船3社コンテナ船事業部門時代には、一般的に船舶への投資が不足していた。現在は安定的かつ体系的な方法によって船隊整備を進めているところだ。引き続き基幹船隊の強化とコスト競争力の向上に努めている。さらにONEとしては基幹システムとデジタル化への投資を継続していく必要もある。コンテナやターミナルでのコスト競争力強化もある。やるべき課題は数多いが、これらは環境に配慮した形で取り組んでいく必要がある」

 ――投資計画を含めた中長期ビジョンを取りまとめていると聞いている。発表時期はいつのタイミングになるのか。

 「21年度末(22年3月末)までに、新しい中期経営計画を公表しようといま準備を進めているところだ」

 Jeremy Nixon 86年英ウェールズ大卒。P&Oネドロイド、マースクラインを経て、08年日本郵船入社。12年NYKグループ・サウスアジア定期船事業部門CEO、13年経営委員。17年7月から現職。