【Maritech 海事未来図】松田汽船、運航管理をデジタル化。Aisea Pro、全12隻に導入
石油化学薬品などの国内輸送を担う松田汽船(大阪市、松田治彦社長)がデジタル技術を積極的に活用している。同社が運航するケミカル船・特殊タンク船12隻に、アイディア(東京都渋谷区、下川部知洋社長)が開発した船舶の運航管理をデジタル化する「Aisea Pro(アイシアプロ)」を導入した。松田汽船はデジタル化を推進することで、運航管理業務の効率化や船員の働き方改革の実現を目指す。
松田汽船は本社が所在する大阪、主要な荷主が工場を構える新居浜(愛媛県)、顧客が集積する東京という3拠点で運航船を管理している。
運航船の動静管理は、これまでは海上の船長と陸上の運航管理担当者が電話で実施。その上で、電話とファクスを利用し、陸上の3拠点で全船の動静を共有していた。
運航船の動静管理は、顧客から預かった貨物を計画通りに運んでいるかどうかを確認する大事な業務になる。ただ、船員にとっても運航管理担当者にとっても負荷がかかっていた。
そこで今年3月から10月にかけて、運航船12隻にアイシアプロを順次導入。陸上の各拠点のパソコンと大型モニターで、全船の動静をリアルタイムで可視化できる体制が整った。
船員と運航管理担当者の業務負担を軽減できたほか、新型コロナウイルス禍で在宅勤務が増える中で、パソコンさえあれば在宅でも運航管理業務が行えるようになった。
松田ユフル専務取締役は「ペーパーレス化にもつながり、ESG(環境・社会・企業統治)経営の推進にも寄与している」とアイシアプロの導入効果を語る。
松田汽船はアイシアプロの導入を機に、船内カメラも設置した。
船橋(ブリッジ)に取り付けたカメラで撮影した映像を、陸上の運航管理担当者らと共有。運航効率の改善や安全管理の高度化につなげる狙いだ。
録画した航跡を振り返り、重大事故やトラブルにつながる恐れのあるヒヤリハットを発見することなどに活用できる可能性があるという。
松田専務は「船上の業務が見える化されることで、陸上社員の理解を深めることができる。貨物を顧客に届けることへの海陸の一体感を醸成できる」と期待感を示す。
アイディアが提供するアイシアプロは、船上にエージェントユニットと呼ばれる機器を設置し、船陸間の通信環境を構築する。それにより、本船の動静をはじめとする各種データを陸上と共有し、業務効率の改善などを実現するサービスになる。
アイディアは資本業務提携する東京海上日動火災保険と共に、アイシアプロの営業活動を展開している。また、日本気象協会や航海機器メーカー、エンジンメーカーなどと連携し、気象海象データを活用した最適運航支援や安全航行支援、機関トラブルの未然防止などの機能を開発している。