最新版_2022年の海上コンテナ輸送(満員御礼)
 印刷 2021年12月02日デイリー版4面

記者の視点/佐々木マヤ】PI構想―物流資源共有へ一歩。誰もが使いやすい仕組みを

 企業・業界の垣根を越えて物流資源を共有し、効率化を図るフィジカルインターネット(PI)構想が、実現に向け一歩踏み出した。10月、官民共同による同構想の実現会議の初会合がオンラインで開催。年度内にも2040年までのロードマップ(行程表)を作成する方針で、長期的な物流効率化に向けた議論が本格化している。

 PIは、RFID(電子タグ)に代表されるIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)技術を活用することで貨物や倉庫、車両の空き情報などを可視化し、パレットなど規格化された容器に詰められた貨物を複数企業のトラックや物流センターを経由して運ぶ、共同輸配送システムの構想。海外では欧米を中心に研究が進んでおり、約130の企業・研究機関などが参画するALICE(欧州物流革新協力連盟)では、50年のゼロエミッションを目指し、30年を目標にPIの実現を目指している。

 日本では19年9月、ヤマトグループ総合研究所が米ジョージア工科大学フィジカルインターネットセンターと覚書を締結。日本でのPIの認知向上、物流業界での革新的なシステム構築に取り組んでいる。

 実現会議設立の背景には、物流危機がある。業界ではEC(電子商取引)の拡大による宅配便の急増や少子高齢化による構造的なドライバー不足が課題に上る。カーボンニュートラル(炭素排出量の実質ゼロ化)の要求も物流供給を圧迫。30年には物流需要の約36%が輸送不可能な状況に陥るという試算もある。効率化によるコスト圧縮が求められる中、同会議を通じてより長期的な視点から課題解決を狙う。

 会議ではゴール・イメージなどを議論する。第1回会議の参加者からの言葉で印象的だったのは、日本製PIの「ガラパゴス化」。日本市場に合わせたPIを今後作っていく中で国際規格から外れたものを作ってしまわないよう、考慮すべきという意見だ。「究極の物流効率化」とも呼ばれるPIの仕組みが、国内輸送だけにとどまるのはもったいない。慎重に議論を進め、誰もが使いやすい仕組みを作ることが必要だ。

 今後、業界別のワーキンググループ(WG)を設けて30年を目標とするアクションプランも作る。第2回会議ではスーパーマーケット、第3回会議では百貨店のWG設置について説明があった。産業ごとのWGを作ることで、業界別のシステムの導入・更新などに配慮。実現をイメージしやすくすることで、目標の達成を目指す。

 実現会議は「官民物流標準化懇談会」「SIPスマート物流サービス」とも連携する。6月に閣議決定された総合物流施策大綱(21―25年度)では、取り組むべき大きな柱の一つとして物流DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた物流標準化を提言。懇談会を通じて大綱の足元の課題に対応するとともに、PI実現に向けた長期的な取り組みを進めることで、将来的な日本の物流がより良いものになることを期待したい。