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 印刷 2021年11月30日デイリー版2面

Veson、ドライ貨物トレードを可視化。全世界1.4万のバース情報網羅

機械学習でリアルタイムのトレード分析が可能に
機械学習でリアルタイムのトレード分析が可能に

 不定期船向け運航管理システムのプラットフォームを提供するVeson Nautical(本社・米ボストン)は、各種ドライバルク貨物のトレードフローをリアルタイムで見える化する新たなサービスを開始する。ドライバルク船事業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を具現化する一つのツールとして注目されており、日本の海運会社も12月からトライアルを始める予定だ。

 「経験や勘のみに頼るのではなく、データに基づく意思決定が競争上の重要な差別化要因になりつつある」

 Veson Nauticalの日本代表を務める光田時雄氏はそう語る。

 Vesonが提供するドライバルク船を対象にしたデータソリューションサービスは、2019年設立のノルウェーのスタートアップ企業であるオーシャンボルト(本社・オスロ)が開発した。

 Vesonが今年9月にオーシャンボルトを買収したことを機に、オーシャンボルトの革新的なサービスを「ポジション・インテリジェンス・プラットフォーム」としてVesonが提供することになった。

■世界のバースを調査

 船主やオペレーター(運航会社)はオーシャンボルトが開発したサービスを利用することにより、各種ドライバルク貨物の海上荷動きをリアルタイムに把握できるようになる。船舶の供給量や港湾の混雑状況などを知ることもできる。

 それら精度の高いマーケット情報を基に、最適な航海計画を策定し、運航効率の改善による採算性向上や環境負荷の軽減を図ることが可能になる。また、市況予測の精度向上なども期待されている。

 バルカーで運ばれるドライバルク貨物は、鉄鉱石や石炭、穀物、非鉄金属など多岐にわたる。それらのトレードは、従来は各国が取りまとめる通関データが公表されるまで分からなかった。

 オーシャンボルトはドライバルク船が寄港する世界中の港のバースを丹念に調査。約1万4000のバース情報を電子海図上にプロットした。それにAIS(船舶自動識別装置)データを組み合わせ、独自開発したアルゴリズムに基づく機械学習も活用することにより、高精度のトレードフロー分析を実現している。

 オーシャンボルトは世界中で運航されている約1万2000隻のバルカーを追跡。年間で300億以上のデータを処理し、50億トンを超えるドライ貨物のトレード分析を行っている。貨物の品目数は140に上るという。日本では656のバースをカバーしている。

■ESGにも対応

 オーシャンボルトが提供するソリューションの分析精度や導入効果が高く評価され、サービス開始から2年余りしか経過していないにもかかわらず、香港のパシフィック・ベイスンをはじめとする世界の有力なドライバルク船社が相次いで採用している。

 船主やオペレーターだけでなく、荷主などの用船者も市場分析や販売戦略の立案などに活用している。Vesonはドライバルク船に関与する商社や金融機関、シンクタンクなども潜在的な顧客と見なし、新サービスを提案していく考えだ。

 オーシャンボルトは最近、顧客のESG(環境・社会・企業統治)の取り組みをサポートする新しい機能も開発した。

 米国のNPOサステナビリティ会計基準審議会(SASB)の基準に沿った情報開示を行おうとする場合、海洋保護区の航行に関わる報告書を提出することが求められる可能性がある。本船のAISデータなどを基に報告書の作成を自動化することで、ESG対応関連業務の効率化を支援する。

■VIPと連携へ

 Vesonは同社が独自開発した運航管理システム「Veson IMOS Platform」(VIP)と、オーシャンボルトのデータソリューションサービスのシームレスな連携に向けた検討も進めている。

 VIPは用船契約や収支管理、燃料管理など、不定期船の運航管理業務を網羅した基幹システムになる。フレート管理システムとしても効果的なため、世界の主要な海運会社や荷主が導入し、日本企業が採用するケースも増えている。

 VesonはVIPとオーシャンボルトが開発したソリューションを融合し、新たな価値の創出を目指している。ドライバルク船だけでなく、原油や石油製品などを運ぶタンカーを対象にした同様のサービスの開発も視野に入れている。

 ドライバルク船を巡っては、今年10月に市況が13年ぶりの高値を付けるなど、取り巻く事業環境が大きく変化している。それらの変化に機敏かつ柔軟に対応し、持続可能な事業体となるためには、精度の高いデータ分析に基づく意思決定が鍵を握る。