ロシア鉄道回廊の可能性 -日本発欧州向けの新ルートへ-
 印刷 2021年11月17日デイリー版1面

インタビュー コロナ後への成長戦略】日本通運執行役員南アジア・オセアニアブロック地域総括・南アジア・オセアニア日本通運(NSAO)社長・田中博之氏、売上高3000億円へ改革実行

日本通運執行役員 南アジア・オセアニアブロック地域総括・南アジア・オセアニア日本通運(NSAO)社長 田中 博之氏
日本通運執行役員 南アジア・オセアニアブロック地域総括・南アジア・オセアニア日本通運(NSAO)社長 田中 博之氏

 日本通運の地域統括会社、南アジア・オセアニア日本通運(NSAO)は新たな成長戦略に取り組んでいる。M&A(合併・買収)も視野に、2028年には同地域の売上高3000億円を目指し、域内各国の目標を策定。非日系顧客の開拓をはじめ産業別の営業活動の強化、域内全体の事業ポートフォリオの最適化などの戦略を進めている。組織再編や人材戦略の改革に着手するなど事業基盤も再構築し、成長スピードを加速する。

(聞き手 梶原幸絵)

■市場上回る成長

 ――事業概況を。

 「フォワーディングでは今年に入って海運・航空とも貨物取扱量が19年の水準を上回り、好調を維持している。19―23年度のグループ経営計画に掲げる『ボリューム戦略』の下、物量拡大を最優先に取り組んできた結果、当社の取扱量は市場の成長率を上回る伸びを見せている」

 「物量拡大のために、まずはスペース確保を先行させ、発着地で売り切っている。以前は物量の見込みに合わせてスペースを確保していたが、考え方を逆にした。また、グループ全体の事業や顧客との関係から、局所的に赤字になっても戦略的に取り組むよう改めた」

 ――コンテナ輸送の逼迫(ひっぱく)にどう対処しているか。

 「本社海外事業本部の『グローバルNVOCCセンター(GNC)』で船社6社と集中購買を行っており、NSAOとしてもプリファードキャリアー(優先船社)8社と関係を構築し、両者で連携してあらかじめ週次で一定量のスペースを押さえている」

 「来年には、GNCはNSAOが本社を置くシンガポールに移ってくる。集中購買を強化し、市況が安定すれば物量を背景に適正価格で購買できるようにしていく」

■M&Aも視野

 ――注力していく戦略は。

 「南アジア・オセアニアの20年の売上高は1147億円だったが、28年には3000億円を目指す。グループの長期ビジョンで掲げている同年の海外売上高目標は、M&Aによる成長を含めて1兆2000億円。そこからブレークダウンし、当地域の目標を設定した」

 「12年のNSAO設立から19年まで、当地域の年平均成長率は6・3%だったが、28年に向けてはM&Aも視野に入れ毎年10%成長を目指していく」

 ――事業ポートフォリオについてはどう考えているか。

 「現状は航空貨物の売り上げ構成比が高いときには50%近くだが、28年には航空貨物で35%、海運で30%、ロジスティクスなどで25%を考えている。航空への依存度を減らし、健全なポートフォリオを形成する」

■3カ国で事業拡大

 ――力を入れる国・地域は。

 「インド、インドネシア、ベトナムの拡大余地が大きい。国別の目標設定は、各国の人口やGDP(国内総生産)、産業立地と物流市場の規模などからゼロベースで検討した。以前はこれまでの実績に基づき、目標数値を算定していたが、考え方を転換した」

 「われわれは日系製造業に歩調を合わせ、海外事業を拡大してきた。しかし、グローバル市場で存在感を持つためには、日系のお客さまばかりでなく物流市場全体を捉えなければならない。先の3カ国での事業はそれぞれの市場規模を考えればもっと大きくてもよいはずなので、経営資源をしっかり充てて伸ばしていきたい」

 「中でもインドを重視している。日系自動車メーカーの一部がインドを基点にアフリカ展開を図るなど、同国は中東、東アフリカに近く、両地域との貿易もさかんでつながりが深い。インドを押さえた上で、グループの欧州ブロックと連携し自動車産業を中心にアフリカを攻略していきたい。インド自体も非常に大きなマーケットだ。フォワーディングに加え、自動車関連のロジスティクスの案件も多い」

■5産業に注力

 ――産業別のアプローチは。

 「各国の実情に合わせながら、経営計画で挙げている電機・電子、自動車、アパレル、医薬品、半導体全てに力を入れる。例えば、医薬品であれば新薬はシンガポール、後発薬やワクチンはインドやバングラデシュを中心に取り組む形だ。アパレルについては、イタリアのグループ会社のノウハウを生かしてハイファッション向けの拡販を始めた」

 「5産業への取り組みをやり抜き、23年の目標を達成し、28年に向けては5産業の強みに磨きをかけながら、国ごとに特徴を打ち出す。コールドチェーン(低温物流)など新たなプラットフォーム(PF)の構築も検討したい」

■営業体制見直し

 ――課題としている非日系企業の開拓にどう取り組むか。

 「非日系企業の売上構成比は現在3割超だが、5割以上を目指している。そのために高度人材を雇い入れ、組織を強靭(きょうじん)化し、来年以降、欧米系のメガフォワーダーと互角に戦える基盤を構築する」

 「まずは営業体制の見直しだ。NSAOに1月1日付で、域内の営業を統括する『リージョナル・セールス・ストラテジー・ヘッドクオーター(営業戦略本部)』を新設した。新たに雇用した欧米系のメガフォワーダー出身者を本部長に充て、NSAOと各事業会社の営業体制を拡充している。本部長は前職でアジア太平洋地域の営業トップを務めたカナダ人。M&A(合併・買収)後のPMI(統合プロセス)の経験も持つ」

 「域内全体の営業を管理するシステムも構築する。ターゲットを定め、一連の営業活動を管理する『パイプライン管理』を一層強化する」

■高度人材を招聘

 ――外部からも積極的に人材を登用する。

 「HR(人的資源)戦略も、高度人材を入れて抜本的に見直す。厳しい戦いを勝ち残るために、変わらなければいけないのは明らかだ。日系の良い点を残しながら、ダイバーシティー(多様性)と多国籍化を進めて優秀な人材を確保する」

 「各事業会社とNSAO間、事業会社間で人が異動するなど、各社の人材がもっと活躍できるよう人事・評価・給与体系を再整備したい。コロナ禍でリモート勤務が普及したので、転勤を伴わずとも異動を可能にできるだろう」

 「10月1日には、NSAOに『リージョナル・コーポレート・ストラテジー・ヘッドクオーター(コーポレート戦略本部)』の機能を拡充した。HR戦略やリスクマネジメント、安全・品質管理などを担い、本社と連携して事業の拡大を下支えする」

 「将来にわたって大量の貨物を取り扱うため、組織、施設、IT面全てを強化する。業務品質、安全性、リードタイムなどサービスレベルも上げ、グループ全体に貢献する」

■業務効率化を追求

 ――デジタル化への対応は。

 「社内ではリモートワーク時でも社内処理を行うことができる手続きの電子化、RPA(定型業務の自動化)の活用、生産性のKPI(重要業績評価指標)の策定などを進めている。域内の人件費は年々上がっているので、効率を追求して人数を適正化し、1人当たりの給与を上げなければならない」

 「業務の標準化も進めている。数年後にはドキュメント業務や貨物追跡情報の管理業務などを集約し、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)化を進め、業務運営の精度向上とローコスト化を図りたい」

 「ロジスティクス事業では、事業会社のシンガポール日本通運で庫内の自動化とオペレーションのペーパーレス化を進めている。来年初めには同社の本社倉庫にロボット倉庫『オートストア』を導入する予定だ」

 たなか・ひろゆき 86(昭和61)年関西学院大法卒、日本通運入社。オランダ日本通運営業開発部長兼航空貨物部長、航空事業支店国際貨物部長などを経て、19年4月執行役員。21年4月から現職。59歳。