ロシア鉄道回廊の可能性 -日本発欧州向けの新ルートへ-
 印刷 2021年11月05日デイリー版2面

旭海運、船内塗料を抗菌化。船員の労働環境に配慮

本船に抗菌シールを配布する竹之下氏(右)
本船に抗菌シールを配布する竹之下氏(右)
抗菌塗料を採用した「日春丸」
抗菌塗料を採用した「日春丸」

 旭海運(東京都港区、根元聡社長)は神戸製鋼所が開発した高機能抗菌材「KENIFINE(ケニファイン)」を活用し、船内の抗菌・抗ウイルス化を推進している。自社保有の8万重量トン級バルカー「旭丸」で実証実験を行い効果を確認できたため、他の社船、管理船にも順次採用していく計画だ。ケニファインを配合した塗料を船橋などに塗布し、安全運航の現場を担う船員が安心して働ける環境づくりを目指す。

 ケニファインは神戸製鋼が独自開発した高機能抗菌材で、抗菌効果の即効性や持続性、防カビ性などが特長だ。抗菌シール、塗料、めっき処理などの使い方があり、水回りのぬめりを防ぐ効果もある。

 今年2月に神戸製鋼はケニファインがインフルエンザやSARS(重症急性呼吸器症候群)の原因となるウイルスだけでなく、新型コロナウイルスの感染力を低下させることも確認した。

 旭海運は神戸製鋼向けの鉄鋼原料輸送に従事する「旭丸」で、陸上とは異なる環境下でケニファインの効果があるかどうかを検証。船橋や居住区のドアや手すり、受話器などを抗菌加工し、航海後に第三者機関の検査を受け抗菌効果が確認された。

 「旭丸」で効果が検証できたため、他の管理船にもケニファイン含有の抗菌シール「ハルジェネックX」を25枚ずつ配布。乗組員の不安軽減につながることが評価され、追加でほしいという要望も寄せられたという。

「ハルジェネックX」は神戸製鋼のライセンスを受け高秋化学(新潟県燕市)が製造。ケニファインの粉末を含有する特殊インクで印刷することにより、付着した菌の増殖を抑制する。縦30センチ、横21センチの無色透明のシールで、貼る場所に合わせてカットして使用する。

 旭海運は抗菌シールの配布に加えて、ケニファイン配合塗料の採用も計画している。

 新型コロナウイルス禍の収束の兆しが見られない中で、万全な対策を取っていても船内で感染者が発生するリスクはある。寄港時に外部の関係者が出入りし、ウイルスを持ち込む恐れなどもあるためだ。

 そこで訪船者が通る舷梯(げんてい)、エントランス、通路、事務室にケニファイン配合塗料を塗布し、感染リスクの抑制を図る考えだ。船橋や事務室、ジムルームの床などにも塗る予定となっている。

 神戸製鋼の有力協力会社であるYK商会(兵庫県加古川市)と共同で、ケニファイン配合塗料の塗り方の英語版マニュアルも作成した。ケニファインを塗料に混ぜると比重が重くなり、塗り方が適切でないと抗菌効果が弱まる可能性があるという。

 船内で塗装作業を担うのは、フィリピン人などの外国人船員が中心になる。英語版のマニュアルを用意し正しい塗り方を理解してもらうことで、ケニファインの効果を高める狙いだ。

 船内の衛生環境の向上に、ケニファインを活用する動きは他社でも広がりつつある。

 神戸製鋼グループの神鋼物流(神戸市)は、加古川製鉄所と神戸製鉄所間の鉄鋼半製品輸送に投入するRORO船「日春丸」の浴室にケニファイン配合塗料を塗布した。防カビ効果が見込まれ、乗組員の作業負担軽減につながることが期待されている。

 旭海運は神戸製鋼のインダストリアルキャリアとして、同社向け鉄鋼原料、発電燃料などの輸送を軸に事業を展開している。

 現在はパナマックスやケープサイズなど中大型バルカーを中心に13隻を管理・運航し、それらに配乗する船員約400人を抱えている。

 竹之下登顧問は「船員は経済活動や人々の暮らしを支えるエッセンシャルワーカー。船員が安心して働ける環境を整備することは、安全運航や輸送サービスの安定化に欠かせない」と語る。

 運航船のさらなる衛生環境の向上に向けて、衛生用品大手サラヤ(大阪市)の関係者を本船に招き、助言を求める計画もある。「衛生のプロに現場を見てもらうことで、新しい気づきがあると思う」と竹之下氏は乗組員への安心の提供に注力する方針を示す。