印刷 2021年10月12日デイリー版1面

インタビュー 今造グループと連携強化】中国塗料社長・伊達健士氏。舶用塗料 共同開発へ

中国塗料社長 伊達 健士氏
中国塗料社長 伊達 健士氏

 環境規制が強化される中、海事業界で塗料の役割は重要性を増す。6月に中国塗料社長に就任した伊達健士氏に、今後の戦略を聞いた。

(聞き手 浅野一歩)

■30年までに世界一

 ――5月に発表した改定版の長期ビジョンと、2021年度からの中期経営計画の概要は。

 「前回の中期計画は期間を3年としていたが、今回の『CMP New Century Plan 2』は25年度までの5年間を対象とした。IMO(国際海事機関)では国際海運からのGHG(温室効果ガス)に関して、30年に燃費効率を08年比40%改善することで排出量を削減するという目標を示した。30年は一つの節目の時期と捉えており、当社の長期ビジョンもこの30年に焦点を当て、前半の5年間をこのたびの中期計画とした」

 「売り上げ目標としては、25年度に1100億円(20年度実績824億円)を設定した。このうち、主力の船舶用塗料では、同750億円(同686億円)を目指す」

 「長期ビジョンでは、30年までになりたい姿として『船舶用塗料で世界トップシェア』を盛り込んだ。現在は欧州メーカーが世界首位で、当社は2位グループに位置すると考えており、売上高の差は、100億円程度と見込んでいる。この差を埋め、上回りたい」

 「今回の中計では、環境対応、SDGs(持続可能な開発目標)の観点が入っていることが、これまでと大きく異なっている。塗料の配合面では大気汚染の一因となるVOC(揮発性有機化合物)の削減を目標としている。また、船舶から排出されるGHGの削減に貢献できる塗料として、高性能な低燃費型防汚塗料を積極的に拡販する計画を立てている」

 「再生可能エネルギー需要の高まりを受けて開発が進む浮体式洋上風力発電施設向けの塗料開発にも注力している。ドックに入って定期的に修繕ができる船舶と比べ、洋上風発は一度立てたらマイナーメンテナンスしかできない。そのため非常に高い防食性能が求められているが、当社の製品はそうした厳しい基準をクリアし、NORSOK(ノルウェー標準海洋規格)の認定も取得した。国内ではまだ限定的だが年間200―300本も立てられるようになれば一つのベンチマークになってくるのではないか」

 ――今治造船グループと業務提携契約を締結したが、その理由は。

 「環境対応製品の開発を促進することが目的。今治造船グループとはこれまでも定期的に技術交流しており、関係強化の素地があった。日本最大の造船会社と連携することで顧客ニーズをより効率的に製品開発に反映することが可能になる。環境対応製品を共同で開発し、広く国内外の市場に投入することで海事業界の価値向上に貢献する」

 ――今治造船と、同社子会社の正栄汽船が中国塗料の株式を取得したが、なぜか。

 「業務提携が形だけにならないよう、関係をより強化することを目的としている」

■工程短縮めざす

 ――今治造船グループと具体的に何をするのか。

 「環境対応型の塗料、具体的には低燃費型防汚塗料や低VOC塗料、塗装工程の短縮が可能な塗料などを共同で開発していく。今治造船グループの工場でショッププライマーやマルチパーパスプライマーなどの造船現場での作業性や性能を確認する。低燃費防汚塗料についても就航後のパフォーマンスを検証し、さらなる開発につなげる」

 ――合弁会社の設立も想定しているが、どのような会社になるのか。

 「現時点で何も決まっていないが、例えば開発した製品の塗装方法などで特許を取得する場合、合弁会社を設立して対応することも考えられる」

■船底汚損を最小化

 ――海事業界でもデジタル化が進んでいるが、具体的な取り組みは。

 「船体性能を可視化するサービスとして独自のモニタリング・解析プログラム『CMP―MAP』を提供している。船舶がどの海域で、何ノットで航行しているか、また波高や風速といったデータを収集し、燃料消費量などから燃費性能を検証することで、防汚塗料が船舶のパフォーマンスにどのように貢献しているかを確認いただける」

 「また、塗料タイプの変更による燃費効率の改善案の提案もできる。例えば新造時に想定していた航路や巡行速力から変更があった場合、運航条件に応じた最適な船底防汚塗料へと替えることで船底汚損のリスクを最小限に抑えられ、不必要なアンダーウオータークリーニングやブラストなどのコストを削減することが可能になる。スピードロスの発生時に塗料が要因なのか、オペレーションが要因なのかも検証でき、塗料性能の保証の際にも活用できる」

 ――世界的に進む海運の環境規制への対応について教えてほしい。

 「IMOで採択されたEEXI規制(既存船の燃費規制)により、23年1月以降は新基準をクリアしていない船舶には、例えば減速運航などの対応が義務付けられる。減速運航は船底の汚損リスクを高める。また就航船には燃費格付け制度のCII(炭素効率指標)が適用され、低評価船は燃費改善対策が必要となる。これら規制への対応策の一例として、当社の高性能防汚塗料『SEAFLO NEO CF PREMIUM』が提案できる。この製品は薬学技術を基に開発された耐フジツボ性が非常に高い防汚剤Selektopeを使用した低燃費型防汚塗料で、防汚性能を高めつつ、塗膜表面平滑技術による摩擦抵抗低減効果により燃料消費の低減も可能になる。トータルコストを考えれば導入メリットが大きく、船舶の燃費対策としてご選択いただけるよう積極的に拡販していきたい」

 だて・けんし 95(平成7)年関西学院大経卒、中国塗料入社。18年4月営業本部長、7月執行役員営業本部長、20年7月上席執行役員営業本部長を経て、21年6月に営業本部長兼務で代表取締役社長に就任。50歳。