印刷 2021年10月08日デイリー版3面

米グレイオレンジ・コーリCEO、三菱商事とRaaS拡大。ロボット拡充、「MFC」も提案

講演するコーリCEO
講演するコーリCEO

 インド発の物流ロボットシステム会社GreyOrange(グレイオレンジ、本社・米国アトランタ)は、日本事業を強化している。先月末に棚搬送ロボットの新モデルを日本市場に投入したのに加え、ロボットをサービスとして提供するRaaSを三菱商事とともに拡大する考え。小売業がEC(電子商取引)の需要に対応するための「マイクロフルフィルメントセンター」(MFC)の物流モデルも提案する。

 先月末、両社が開いたウェブセミナーで、グレイオレンジのサメイ・コーリCEO(最高経営責任者)が講演し、明らかにした。

 コーリCEOによると、棚搬送ロボット「レンジャーGTP」(旧名称・バトラー)の新モデル「レンジャーGTP3・0」は、従来型から動作速度を2倍に高め、動作安定度を6―10%向上。処理量を15%引き上げた。サイズを小型化した上、専用保管棚の1台当たりの保管効率も5%向上した。運用・保守コストも削減できるという。

 三菱商事が月額制のRaaSで倉庫ロボットを貸し出す「ロボウェア」でレンジャーGTPを提供しているのに加え、今後はロボウェアでの取り扱いロボットを拡充する。パレット搬送ロボット「レンジャーIL」の提供を近く本格化し、小口仕分けロボットの「レンジャー・ムーブスマート」、ケース搬送ロボット「レンジャーTTP」も提供する計画。

 三菱商事とは4―5年にわたり、戦略的なパートナーとして協業してきた。コーリCEOは導入の初期費用を抑制でき、物量の波動に合わせて柔軟にロボットを増減できるRaaSのメリットを強調し、「RaaSによって人とロボットの作業を統合し、倉庫の効率を向上できる」と話した。

 MFCは、欧米の小売業で導入が進んでいるという。実店舗を含め消費者に近い場所に小規模な物流拠点を設置し、庫内運営にロボットなど自動化設備を活用する物流モデルで、ECの配送スピードや配送料などに対する消費者のニーズを満たす。

 複数の販売チャネルを融合させるオムニチャネルにも対応でき、小売業はサプライチェーン(SC)の柔軟性の確保とコスト削減が可能になるという。

 コーリCEOはこのほか、自社の物流ロボット、AI(人工知能)を活用し庫内とロボットを統合管理する独自のソフトウエア「グレイマター」の概要と運用例を紹介した。

 グレイオレンジは2011年にインドで設立。19年、米国に本社を移転した。世界での導入実績はロボット数が3500台以上、現場数が80拠点以上。日本を含む16カ国で事業を展開し、地域別の売り上げ構成比は北米が77%を占め、業種別では73%が小売業への売り上げとなっている。

■本紙単独インタビュー、ソフトウエアで他社と差別化

 コーリCEOは本紙のインタビューに応じ、日本での事業展開や同社の優位性などを説明した。概要は次の通り。

(梶原幸絵)

 ――日本での導入実績は。

 「(販売、RaaSの合計で)ロボットの導入数は約300台、現場数は10―20拠点。日本ではこれまで事業基盤の構築に力を入れ、特に過去2年間はロボウェアとのパートナーシップでより良いサービスを目指し、基礎的な部分に投資してきた。結果、昨年は新規顧客1―2社と契約し、今年度上期の新規契約数は3社になるなど拡大スピードが加速している」

 「ローカルチームの強化にも力を入れている。日本法人の従業員数は約15人。営業やプロジェクトマネジメント、ソリューションコンサルタント、運用設計、カスタマーサポート、保守を担うオンサイトエンジニアなどの人材がそろっている」

 ――他社とどう差別化するか。

 「当社の優位性はグレイマターにある。数あるロボットメーカーの中でも、ソリューションプロバイダーとして展開していたり、ソフトウエアを提供している企業はそれほどない。SC分野では単にロボットを作るだけではなく、ロボットを管理するソフトウエアが非常に重要になる」

 「ソフトウエアの機能で重要なのがオーダーのオーケストレーションだ。次にどのオーダーをどこで処理するかなどの最適化がKPI(重要業績評価指標)、UPH(時間当たりのピック数)、スループット(処理量)の違いとして現れる。現状、アマゾン・ロボティクスを除けば当社のソリューションと同水準のKPIを満たせる競合はないだろう」

 ――日本市場をどう見ているか。

 「日本は当社にとってトップ3の市場と位置付けている。労働人口が減少する中で、人件費を管理しバランスを取っていかねばならないが、そのバランスが取れている。人材の質が高く、業務プロセスなども整備されている」

 「コロナ後も日本は大きな優位性を保つだろう。オムニチャネルの管理やEC、店舗運営などで以前から先進的な取り組みが進んでおり、(コロナ禍による変化への)備えができている」

 ――MFCのモデルは日本にも適用できるか。

 「MFCは近隣の人口が多いほどメリットが出る。日本は非常に高密度な市場であり、MFCに非常に適している」

 ――セミナーでは自律型の完全無人倉庫に否定的な考えを示した。理由は。

 「人とロボットの調和を重視している。製造と違ってSC分野では、人間がやるべき領域がある。グレイマターは人とロボットが協働するオーケストレーションを作り出すものだ」