印刷 2021年08月24日デイリー版4面

記者の視点/柏井あづみ】中小型船の脱炭素化、トレードパターン変革も注視

 邦船大手オペレーターによるLNG(液化天然ガス)燃料船の新造整備が本格化している。

 最近では6月中旬に日本郵船が自動車船計12隻のロット建造で日本シップヤード、新来島どっくと合意。商船三井も両造船所に自動車船計4隻の発注を決めた。7月下旬には郵船、商船三井、川崎汽船の3社がJFEスチールと新造ケープサイズバルカー各1隻の長期連続航海用船契約を締結している。

 これまで邦船社が導入を決めたLNG焚(だ)き外航船は自動車船、石炭船、ケープサイズの3船種。いずれも大型船で、特定航路を行き来する長期契約船という共通点がある。

 この背景にはLNG燃料のタンクスペースが重油の1・65倍と大きいことに加えて、燃料供給プロジェクトが極東やシンガポール、豪州、欧州などの主要ハブ港に限定されているといった制約条件が存在する。

 2025年ごろに実用化が見込まれるアンモニア燃料船もゼロエミッション化の有力な選択肢として期待されるが、燃料タンクスペースが重油の2・7倍必要なことから、導入は大型船に限られそうだ。

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 そこで疑問として湧いてくるのが、「中小型船のゼロエミッション化はどうするのか」という問題だ。

 LNG、アンモニア、水素など次世代の舶用燃料候補は、いずれもタンクスペースが増加し、遠洋航海する中小型船にとってハードルが高い。さらに燃料供給網の広がりに限界があるため、積み地・揚げ地が定まっていない中小型バルカーには採用が一層難しくなる。

 こうした点について、乾汽船の乾康之社長は今月11日掲載の日本海事新聞のインタビューで「特にハンディサイズは燃料タンクスペースが限られるため、LNGやアンモニアなどの新燃料の導入が難しい」と指摘。

 その上で「中小型船の低・脱炭素化の解が見えない中、国際貿易のGHG(温室効果ガス)削減が行き着く一つのシナリオとして、ゼロエミッションの超大型コンテナ船が遠洋航海を全て担う時代が到来するかもしれない」と予測した。

 GHG削減の観点では、中小型船で長距離の大洋航海を続けるメリットは小さく、「コンテナ化とゼロエミッション大型船を軸としたハブ&スポークが加速する可能性がある」との見立てだ。

 非常に大胆な仮説だが、脱炭素化は船舶の燃料・主機関だけでなく、トレードパターンにも大きな変化を及ぼすという重要な視点を提起している。

 もしゼロエミッション大型船によるハブ&スポークが現実になれば、中小型バルカーは近距離トレードに限定され、ビジネスモデルの大転換を迫られる。もちろん大型船から中小型船への積み替えコストなどの課題はあるが、海運に押し寄せるゼロエミッション化の波は、予想を超えた変革をもたらす可能性を秘める。

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 中小型船はこれからバイオ燃料をはじめ新しい環境技術の導入が進んでいく可能性はあるが、貨物1トン当たりのCO2(二酸化炭素)排出量などさまざまな観点から大型船が有利なことは間違いない。さらに一歩踏み込んで、風力を利用した大型船の超スロートレードも一つのトレンドになるかもしれない。

 IMO(国際海事機関)が掲げる50年までのGHG50%削減に向けては中小型船の低・脱炭素化は避けて通れない。今後、船舶の大型化をはじめトレードパターン変革の可能性も注視したい。