印刷 2021年07月27日デイリー版1面

新トップに聞く】商船三井ロジスティクス社長・八嶋浩一氏、売り上げ倍増へ連携・協業

商船三井ロジスティクス社長 八嶋 浩一氏
商船三井ロジスティクス社長 八嶋 浩一氏

 コロナ禍により、国際物流市場は激変している。そうした中、商船三井ロジスティクス(MLG)は当面の目標として売り上げ規模の倍増を挙げ、フォワーディング市場での存在感向上を目指す。そのために、商船三井グループ国内外各社との連携を強め、他社との協業も進める。営業面では航空貨物事業のさらなる強化はもとより、海上貨物事業を強化し、全体を底上げする考えだ。6月24日付で就任した八嶋浩一社長に、就任の抱負と今後の戦略を聞いた。(聞き手 梶原幸絵、幡野武彦)

 ――社長就任の抱負を。

 「モットーはシュバイツァー博士の“Success is not the key to happiness. Happiness is the key to success. If you love what you are doing, you will be successful.”。社員が当社でやりがいを持って働き、幸せだと思えるようにしていきたい。当社が世の中にどう貢献しているか、社会的な意義を皆で共有する。役職員同士が気軽に話し合い、共に仕事に取り組む組織風土を醸成し、結果として企業価値の向上と、社員一人一人のやりがいを共に達成することを目指したい」

■やりがい大前提

 ――当面の目標は。

 「売り上げの倍増だ。当社の売上高は約500億円(2021年3月期)だが、『社員のやりがい』を大前提に1000億円を目指す。これは今期最終年度となる中期経営計画の目標数値でもあるが、私の在任中に必ず達成したい最低ラインの目標と位置付ける」

 「22年3月期の売上高は前期を大幅に上回る見通しとなっている。ただしそれは運賃水準が高いためで、実力ではない。市況でかさ増しされたものではなく、『真水』で目標を達成したい」

 「今後視野に入れるべき課題は、脱炭素化とデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。脱炭素化の取り組みは今や企業経営に必須であり、より環境負荷の低い輸送モードの検証などを常に考えていく必要がある。DXについては中堅若手を中心に社員の意見を募り、まずはデジタル化のためのアクションを早急にとる。近い将来、例えばデジタルフォワーディングのように、フォワーダーの業務の在り方が変わるだろう。その流れをしっかり見極める」

■船社に協働提案

 ――1000億円を目指す理由は。

 「当社を含め商船三井グループは、物流事業ではライトアセットで顧客の要望に合わせてテーラーメードの物流を提案・構築する『マーケットイン』を志向し、着実に利益を上げてきた。ところが、そのビジネスモデルが昨年春からのコロナ禍で揺らいでいる」

 「提案型ビジネスは、十分な輸送スペースが取れてこそ力を発揮する。海上・航空ともに需給が極端に逼迫(ひっぱく)する中、スペースを押さえるには利益よりも売り上げ、物量とプロキュアメント(購買)が重要だ。残念ながら、当社は日本のフォワーダーの売り上げ規模としては第3集団にあり、トップ集団に水をあけられている。従って、まずは営業力を強化し、売り上げ規模の拡大を図る必要があるためだ」

 ――目標達成への戦略は。

 「当社の大きな強みの一つは、商船三井グループの一員ということにある。そこで、グループの経営資源、ノウハウ、ネットワークをさらに活用していく。例えば、商船三井と海外ネットワークを補完し合い、共同で営業するなど連携を強化する。商船三井が進出していない空白地域で当社が拠点を持っている所は、当社が商船三井の国代表を担っていきたい」

 「グループ内の業務の取り込みも積極的に進めたい。現状、外部に委託しているグループ各社の物流業務や海外でのハズバンディング(船舶代理店)業務なども当社が受託できれば、グループ経営の最適化にもつながるだろう。このほか、海外を中心にM&A(合併・買収)も検討する」

 ――購買の方針は。

 「キャリアーとの関係を強化するのはもちろん、協働により、お互いにウィン・ウィンになる提案をしていく必要がある。例えば、船社の輸入サービスの一環として、船社に代わって当社がきめ細やかなフォローをすることが考えられる。脱炭素化につながる提案もあり得るだろう」

■冷蔵貨物に注目

 ――航空フォワーディングをはじめ、各事業をどう舵取りするか。

 「当社は航空フォワーダーとして力を付けてきた。海上貨物の強化が課題であり、伸びしろがあるとも言える。海上貨物の利幅は航空に比べて小さいが、そこをしっかり押さえられれば安定した収益基盤になるだろう。そのために、海外を中心に営業力を強化する」

 「航空貨物に関しては、外資系荷主の開拓が有望だと見ている。顧客の中心は日系だが、この領域を広げようとすると競争の激しい『レッドオーシャン』に踏み込むことになりかねない」

 ――品目・産業別の取り組みは。

 「需要の拡大している電子部品や医薬品・ヘルスケアなどがターゲットになる。ただし医薬品の取り扱いにはライセンスが必要なので、対象となる地域を絞った上で取り組む」

 「輸入貨物の取り込みも課題になる。特に冷凍冷蔵貨物に注目しており、海外からの輸入、保管、配送手配までの一貫したソリューションの仕組みを考えたい」

 「当社の大きな強みの2つ目は、26カ国から成るグローバル海外ネットワークだ。そのネットワークを提供し、従前以上にグループ内外関係先と協業することで、顧客ニーズに応えていきたい」

■中印タイを強化

 ――海外事業で注目している地域は。

 「商船三井は現経営計画の地域戦略で、中国とインドに取り組む方針だ。当社の海外事業で中国は収益の柱であり、今後さらに強化する。インドには大きなポテンシャルがあるが、われわれのネットワークはそう強くないので、商船三井との協業などを切り口としていく。昨年1月に商船三井の物流事業を継承したタイも、さらに大きくしていきたい」

 ――6月、商船三井が資本業務提携する日本コンセプト社と合弁会社を設立し、同社の海外代理店業務を引き受けると発表した。

 「合弁会社が日本コンセプト社の海外代理店業務統括機能を担うことで、同社と商船三井グループの協業を加速する。当社にとっても非常に重要な案件なので、早期に軌道に乗せたい」

 やしま・こういち 83(昭和58)年慶大経卒、大阪商船三井船舶(現商船三井)入社。米シカゴ駐在や人事部長などを経て、13年執行役員。16年常務執行役員、19年専務執行役員アジア・中東・大洋州地域担当MOL(アジアオセアニア)マネージングダイレクターに就任。今年4月に商船三井ロジスティクス顧問、6月から現職。61歳。