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 印刷 2021年06月21日デイリー版3面

インターリンク・東京海上日動ウェビナー、カーゴクレーム基礎を解説。仁井弁護士「強い証拠、効果的に収集を」

オンラインで講演する仁井弁護士
オンラインで講演する仁井弁護士

 国際輸送に関するリスクヘッジを専門とする保険代理店インターリンク(東京都港区)と東京海上日動火災保険は16日、荷主と運送人の責任範囲とカーゴクレーム(損害賠償請求)の基礎を解説するウェブセミナーを開いた。岡部・山口法律事務所の仁井稔大弁護士が貨物事故の際に荷主が証明すべきポイントと検討すべき運送人の抗弁、主張を立証するための証拠の収集方法を説明した。フォワーダーを含め、荷主と運送人約90人が視聴した。

 仁井弁護士は「貨物事故の際、保険を使うこともできるが、自社に責任がないのであれば強い証拠を効果的に集め、防御することも必要。そうしなければ保険料が上がることになる」と適切な証拠を集める重要性を、具体例を交えながら解説した。立証に有力なのは、相手方の作った証拠、第三者の作った証拠、機械的証拠(写真やビデオ、トラッキング記録)だという。

 同弁護士によると、荷主がカーゴクレームで証明すべきポイントは、 1.運送契約 2.運送人の責任区間での事故発生 3.損害の発生――。 1.はBL(船荷証券)や運送状で確認し、 2.は責任区間の表現、運送の開始時正常と終了時異常、 3.は損害を証明する必要がある。

 写真は終了時異常と損害を示すのに有効だが、撮り方に工夫がいる。周囲の風景と本船の全体からコンテナ、コンテナ内、貨物の外装、中身の貨物へと撮影していくとよいという。

 どの事案でも検討すべき運送人の抗弁は、 1.時効が過ぎている 2.ノーティスオブクレーム(事故通知状)が正しくない 3.責任制限金額までしか賠償されない――の3点。

  1.の時効の管理は客観的な記録が残る本船、航空機の到着時から起算する形にすると確実性が高いという。 2.については、航空輸送では貨物受領時から14日以内に出していなければ損害賠償請求権を失うので「航空輸送では究極的に重要」(仁井弁護士)。 3.ではIMF(国際通貨基金)のSDR(特別引き出し権)を使って計算し、計算が正しいと立証することになる。損害額が責任制限金額の上限を超えた分は、運送人は免責になる。

 講演後の質疑応答では多くの質問が寄せられ、仁井弁護士は一つ一つ丁寧に回答。視聴者の理解につなげていた。