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 印刷 2021年06月11日デイリー版4面

コロナ禍2年目の船員支援】MTS事務局長・アンドリュー・ライト氏、感染対策徹底し訪船継続

MTS事務局長 アンドリュー・ライト氏
MTS事務局長 アンドリュー・ライト氏

 英国発祥の船員支援の慈善(チャリティー)団体MTS(ミッション・ツー・シーフェアラーズ)は新型コロナウイルスの感染が続く中、感染防止策を徹底した上で、訪船などの船員サポートを継続してきた。アンドリュー・ライト事務局長に昨年から続くコロナ禍での船員支援などについて聞いた。(聞き手 鈴木隆史)

 ――新型コロナの感染が広がる中で、世界の船員が置かれた状況をどう捉えているか。

 「パンデミック(世界的大流行)から1年以上が経過したが、われわれは今なお船員とその家族らが直面している窮状を痛感している。各国の水際対策の強化やフライト(航空機による移動)の停滞で、船員交代は難航している。もっともひどい時には世界で40万人もの船員が契約期間を超えて、長期乗船を強いられていた」

 「南太平洋の島しょ国の船員らの中には、下船できてもフライトが確保できず、港などで立ち往生を余儀なくされるケースもあった」

 「一方で、交代難により長期乗船者と同様の規模の待機船員も発生。乗船できないことで彼らは深刻な経済的な打撃を受けた。また、下船できず必要な物資を購入できなかったり、船内のWi―Fiにアクセスできず家族と連絡が取れないなどの問題もあった。クルーズ部門では数多くの船員が職を失った。感染が広がり始めたばかりのころは、特に新たに乗り組む船員の感染防止策も不十分で、家族らは心配を募らせていた。このように、船員とその家族、それぞれのストレスレベルは高いものとなった」

■交代需要が半減

 ――足元での船員を取り巻く環境はどうか。

 「船員交代の問題は完全には解消されてはいないが、徐々に改善しており、契約終了後も引き続き30日以上乗船している船員は、昨年末までに20万人に減少した。ただ、驚くべきことに一部の国ではいまだ船員のキーワーカーとしての立場を否定し続けている。新たな変異株も発生し、世界的な移動規制はまだ続いている。多くの国で入港制限があり、船員は所属する会社の指針や船長の判断などを参考にしつつも、最終的な下船、上陸のリスクは自らが負っている。クルーズ再開の道のりも遠く、状況は依然厳しい」

 「船員の間でもワクチン接種への期待や関心が高まっているが、一方で困惑する声も聞かれる。『どうやってワクチン接種を受けるのか』『そもそも接種するべきかどうか』『2回目以降の接種はどうしたらいいのか』『考えられる副作用は』などだ」

■エジプトに拠点

 ――コロナ禍でのMTSの取り組みは。

 「われわれは50カ国・約200の港で船員支援の活動を展開している。ボランティアスタッフやチャプレン(聖職者)が数多く在籍している。その規模は拡大し続けており、今年初めにはエジプトのポートサイドに拠点を新設した。また、120以上の船員センターを運営し、船員と各地域のコミュニティーとの結び付きを強める役割も果たしている。コロナ禍では船員センターの運営やバスの運行、個人用防護具(PPE)の手配などで平時より負担が増したのだが、海運業界をはじめ多くの組織から多額の寄付をいただき助けられた。大変感謝している」

 「訪船活動はコロナ禍でさまざまな制約がある中でも感染防止策を徹底し、継続している。われわれが出向くことのできる範囲については、ギャングウエー(船に通じる通路)までとし、船員らと安全な距離を取り、マスクを着けた状態でのフェース・ツー・フェース(マスク・ツー・マスク)でコミュニケーションを図っている」

 「訪船時には船員らの要望を聞き、彼らの私物の買い物代行などをしている。具体的には、お菓子やせっけん、シャンプー、データカードなど、船員らの生活を豊かにするものだ。チャプレンの中には25足もの靴を届けた者もいた」

 「また、24時間体制でチャプレンとのチャットができるデジタルサービスを提供しているほか、独自の幸福度指数を導入し、船員のケアに役立てている。さらに、フィリピンやインドなどの船員の家族に対して、緊急の食糧パッケージを送り届けたりもした。コロナ禍という危機を通じて、われわれは船員支援に資する良質な仕事を成し遂げたと自負している」

 「われわれはパンデミックの教訓を学び、新たな未来に向けて船員への強力で効果的な支援を継続する。そのために、海運業界をはじめとする関係者とのパートナーシップを強化、成長させていきたい」