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 印刷 2021年06月10日デイリー版1面

MariTech 海事未来図】川崎汽船、船舶DXの基盤整備へ。デジタルフラッグシップ就航

次世代環境対応船「CENTURY HIGHWAY GREEN」は最新のデジタル技術も採用
次世代環境対応船「CENTURY HIGHWAY GREEN」は最新のデジタル技術も採用

 川崎汽船が船舶のデジタル化を推進する。今年3月に竣工したLNG(液化天然ガス)燃料自動車船「CENTURY HIGHWAY GREEN」には今後のデジタル化への基盤作りに向けて、さまざまなデジタル機器を搭載している。船内Wi―Fiの拡充を図り、ウェブカメラを利用した船内の遠隔監視体制を構築。接岸中に高速通信ネットワークを活用し、船内作業の高度化を目指す実証試験も行う。本船でこれらのデジタル技術を検証し、安全性向上や業務効率改善などの効果が確認できれば他船にも広げていく。

 「今後、船舶のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進めていくためのテストケースになる」

 先進技術担当の新井大介常務執行役員は、「CENTURY HIGHWAY GREEN」に最新デジタル技術を搭載した意義についてそう語る。

 外航船の船内でWi―Fiが利用できるのは、一般的には船橋(ブリッジ)を含む居住区に限られる。本船では居住区に加えて、貨物デッキや機関室にもWi―Fiを導入した。

 貨物デッキや機関室に複数台のウェブカメラを設置。船内Wi―Fiを介して、荷役や機関室の様子を離れた場所にあるパソコンや携帯情報端末でモニターできるようになった。

 自動車船では、貨物である車両は梱包されずに自走でそのまま積み込まれる。そのためダメージに細心の注意を払う必要がある。積み付けの状況を遠隔監視することで、より安全で効率的な荷役と輸送を追求する。

 船員の働き方改革への効果も期待される。ブリッジなど別の場所から船内を監視できるようになれば、貨物デッキや機関室へ実際に出向く回数を減らせる。船員の負担が軽減され、その分安全管理業務に集中できる。

 エンジン関係などの不具合が発生した際に、ブリッジや陸上のオフィスと即座に情報を共有することも可能になる。異常を早期に発見できれば安全管理体制の強化にもつながる。

 さらには、ウェブカメラで録画したものを船員教育に活用することも可能となる。

■着岸中は高速通信

 「CENTURY HIGHWAY GREEN」は、港に着岸中に高速・大容量の陸上の携帯電話回線(4G/LTE通信)が利用できる通信ソリューションも採用している。

 外航船の通信システムは衛星通信が一般的だが、「海上の通信環境は陸上よりも10年遅れているといわれている。船陸間でやりとりするデータを増やそうとすると通信環境がボトルネックになる」(内田洋AI・デジタライゼーション戦略グループ長)。

 そこでフィンランドのノキアが開発し、海外の鉱山採掘現場や港湾などで採用実績がある産業用通信ソリューションを導入。船舶での有効性を検証する。日本で同ソリューションが導入されるのは初めて。

 これにより、寄港中は4G/LTE回線の使用が可能となり、衛星通信の10倍以上の大容量通信が可能になる。陸上と同レベルの高速、大容量通信の実現により、船内作業や荷役を陸上のオフィスから遠隔支援することなどを想定している。

■世界初、遠隔検査適応

 「CENTURY HIGHWAY GREEN」は船内や船陸間の通信設備を大幅に増強していることが評価され、遠隔検査に適応していることを証明する船級符号の付記(ノーテーション)を日本海事協会(NK)から取得した。同付記を新造船で取得するのは世界初になる。

 川崎汽船は川崎重工業グループと共同開発した統合船舶運航・性能管理システム「K―IMS」をベースに、船舶のデジタル化を推進。K―IMS搭載船は自社管理船を中心に用船を含めて160隻まで増えた。

 部門横断的なプロジェクト「K―SMART」も立ち上げ、船舶のデジタライゼーションについて関係者が集中的に議論。DXによる船内作業の効率化や自動運航技術を含む船上の働き方改革の実現を目指す次世代船の構想を練っている。

 新井氏は「船舶のDXに関わる基盤を整備し、輸送品質の改善や安全運航管理の高度化、船上の働き方改革を実現していきたい」と語る。