MOLwebinar0702
 印刷 2021年06月04日デイリー版1面

海運トップに聞く21年度の舵取り】(2)商船三井社長・橋本剛氏、次世代燃料船 投資加速

商船三井社長 橋本 剛氏
商船三井社長 橋本 剛氏

 ――前期に連結経常利益1336億円(前の期比2・4倍)の大幅増益を達成し、今期は経常益1000億円を見込む。好業績で確保したキャッシュをどう活用するか。

 「財務内容が改善し、経営の自由度が広がっているが、基本的な考え方は変わらない。当社が進めてきた地域戦略、環境戦略に立脚した事業展開を加速させる」

 「環境戦略では、LNG(液化天然ガス)船やFSRU(浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備)、発電船をはじめとした、石炭・石油からガスへのエネルギーシフトを捉えるビジネスが一つの重点投資分野だ」

 「さらにバルカーや自動車船など大型船中心に既存フリートを次世代燃料に入れ替えていく。ここにきてアンモニア燃料の機運が急速に高まっているが、毒性や燃焼時の窒素酸化物(NOX)発生の課題もあり、当面はLNG燃料が中心になる。ただ、LNG一辺倒ではなく、視野を広く持って燃料転換にドライブを掛ける」

 「高運賃の長期契約を獲得して新造整備するのが理想だが、全てがそううまくはいかない。ある程度の先行発注も必要だ。将来的な炭素税などの導入の可能性を踏まえると、荷主から見ても次世代燃料船の経済的メリットは間違いなく出てくる」

 「再生可能エネルギー関連では洋上風力関連事業中心にM&A(合併・買収)も含めて投資を進める。キャッシュフローのレベルを見て財務規律を維持しながら成長投資を続ける」

■クリーン全方位に

 ――成長戦略として「海洋クリーンエネルギー事業へのトランスフォーメーション」を打ち出した。

 「クリーンエネルギーには選択肢が多く、どこがお金を稼げる事業になるか、正直言ってまだわからない。水素、アンモニア、メタネーションなど全方位に取り組んでいく」

 「アンモニアは陸上の発電燃料として有望だ。LNGよりも輸送・保管が容易という利点があり、特に石炭の代替として数百万トン規模のアンモニア輸送需要が期待できる。当社は最近、アンモニア輸送事業を再開しており、強みを発揮したい」

■ドライに伸びしろ

 ――経営計画「ローリングプラン2021」では23年度にドライバルク船で130億円、エネルギー・海洋で390億円の経常利益を見込む。

 「ドライバルクは足元の市況が好調で、変動の中心点が上がっている。日本向け貨物需要の漸減は避けられないが、世界全体の中期的な鉄鋼原料需要には落ちる要素はあまりない。加えて中小型バルカーが運ぶ穀物、肥料、チップ、パルプの需要にも伸びしろがある。鉄鋼原料船事業や商船三井ドライバルクが一定のプロフィットセンターとなると期待している」

 「エネルギー・海洋事業はロシア北極圏のプロジェクトで好採算の長期商権を積み上げており、カントリーリスクはあるものの、ポートフォリオの中身は良い。中国関連ビジネスも伸びている。エネルギー・海洋を中心とした利益構造に、コンテナ船事業会社オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)が一定の貢献を続けてくれれば、当社の経営は盤石になる」

 ――自動車船の収益をどう立て直すか。

 「当社の自動車船部門のポートフォリオは日本出しの依存度が高く、インドやメキシコ、タイなどの三国間トレードでも利益を上げられる体質にならないといけない。複雑な物流から利益を上げるために、絶えざる変革と最適化が不可欠だ。利益を稼ぐ余地は十分にある」

 ――ONEの中長期的な運営方針をどう考えるか。

 「ONEの将来ビジョンや運営方針は、当社を含めた株主3社の共通かつ最大の課題だ。ONEが会社として独り立ちできるよう組織体制やアセットの保有形態、船舶管理体制など検討課題は多岐にわたる。他の株主2社と大きな意見の相違はなく、ONEが策定中の中期経営計画を基礎に方針を定めることになる」

 ――ONEへの海外コンテナターミナル(CT)の譲渡作業は。

 「今期中には実現できるだろう。当初計画ではONE発足時に、親会社3社が保有する海外CTは現物出資の形で譲渡予定だったが、作業に時間がかかってしまった。譲渡による損益への影響額は簿価との差になるのでわからないが、ONEからキャッシュが入ってくることになる」

■配当性向見直す

 ――各事業をキャッシュフロー貢献の視点から再評価しようとしている。

 「長期安定利益を稼ぐLNG・海洋事業は経営安定化に重要だが、投資に対して償却期間が長く、毎年のキャッシュ貢献はそれほど大きくない。投資額も大きく、なかなか世間一般が期待する利回りを実現するのは難しい」

 「投資キャッシュフロー抑制の観点では、ドライバルクやタンカー、自動車船などの従来型ビジネスで、用船を活用しながらオペレーションで利益を上げる事業モデルが効率に優れる。船主との協力やリース、プロジェクトファイナンスなどさまざまな手法を活用し資本効率を高めていく」

 「キャッシュなしには、配当は増やせない。当社の配当性向はいま20%程度だが、上場企業の平均は30―35%に上がってきている。財務で一定の改善を達成次第、配当性向を見直したい」

 ――デジタル化の取り組みは。

 「全社的な取り組みとして、まず運航船のブロードバンド化を思い切って進めていきたい。既に自社船は完了し、これから用船について船主とともに考えていく」

(随時掲載)

 はしもと・たけし 82(昭和57)年京大文卒、大阪商船三井船舶(現商船三井)入社。09年執行役員、12年常務執行役員、15年取締役常務執行役員、16年取締役専務執行役員、19年代表取締役副社長、今年4月から現職。東京都出身、63歳。