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 印刷 2021年05月27日デイリー版1面

インタビュー 生産能力拡大】日本貨物航空社長・大鹿仁史氏、三国間・EC取り込む

日本貨物航空社長 大鹿 仁史氏
日本貨物航空社長 大鹿 仁史氏

 日本貨物航空(NCA)は2020年度(21年3月期)、経常利益が332億円と過去最高を記録した。大鹿仁史社長は「生産体制(スペース供給)を維持し、旺盛な需要を取り込むことができた」と語る。新型コロナウイルス禍による世界的な貨物スペースの不足を受けて、他社運航機材を活用した供給量の拡大や三国間輸送に注力。海外子会社を利用したEC(電子商取引)貨物の需要も狙う。大鹿社長に戦略を聞いた。

(聞き手 佐々木マヤ)

 ――20年度のマーケットの振り返りとNCAの取り組みを教えてほしい。

 「航空貨物市場では、新型コロナウイルス感染症の影響により、昨年3月半ばごろから国際旅客便が一斉に減便し、貨物スペースが急減した。当初は供給減(に伴う運賃高騰)に支えられていたが、昨年秋以降、日本発を中心に自動車関連の需要も上向き、ピークシーズンに当たる第3四半期を過ぎても高水準で推移した。コンテナ不足を背景とした海上からのシフトも年明けから大幅に増えており、今もなお需給逼迫(ひっぱく)が続いている」

 「このマーケットにおけるNCAの取り組みとしては、しっかりとスペースを供給できたことに尽きる。当社では生産能力を企業としての最大の課題と捉えており、ここ2年間は生産体制の強化に注力してきた。定時運航率やイレギュラー発生率など生産系のKPI(重要業績評価指標)は設定した目標をほぼクリア。その結果、定期便に加えNCA単体でチャーター・臨時便を133便運航できた」

 「他社運航機材の活用も大きい。自社運航のボーイング747―8F型8機に加え、当社がアトラスエア(米国)とASL(ベルギー)に運航をお願いしているボーイング747―400F型機での日本を経由しない三国間運航を最大活用し、旺盛な需要を取り込んだ」

 「一方で、コロナの影響により入出国制限による乗員稼働の低下や、想定以上の物量の増加と作業者の感染などによる上屋の混雑といった生産面での大きな制約も受けた。当社では自営拠点のうち成田、米シカゴでの上屋のスペース確保や一部業務の他社への委託、顧客の協力を得てのインタクト輸送比率の増加などオペレーション体制の維持に努めた」

■顧客基盤を多角化

 ――航空業界はマーケットに左右されやすい。貨物専業会社として安定的に収益を上げるために、注力すべき課題は。

 「定期便による貨物輸送を維持するだけでなく、マーケットが急速に緩んだ場合にも耐え得るビジネスを増やす必要がある。狙っているのはEC系の需要。大手通販会社やそれに近い業態で計画された貨物を持っている顧客にアプローチしていく」

 「代表例が海外デジタルフォワーダーとの契約締結だ。19年7月から、香港子会社プラスロジスティクスソリューションズ(以下、プラス社)を通じて、長期にわたり機材と運航サービスを提供。事業ポートフォリオを定期便以外にも分散することで、数年前に比べ明らかに企業体質は強くなっている」

 「今後もプラス社を利用し、同様のEC関連顧客を数年単位の長期契約で獲得したい。NCAの機材をプラス社の三国間輸送に活用する」

 ――機材の内訳は。

 「NCAの機材は商業上、自社運航機がB747―8F型8機、他社運航機材がB747―400F型6機の合計14機体制となる。NCAは既存顧客を中心とした定期便、プラス社はEC関連顧客をはじめとする三国間輸送と、運用の差別化を図る」

 「NCAの生産能力を増強し自社運航機材の稼働を高めることで定期便事業の規模を維持しつつ、プラス社の三国間事業を増やしていきたい。その結果、事業全体としてのボラティリティー耐性を高めていく」

■米・中依存脱却へ

 ――定期便の強化策は。

 「国土交通省航空局は操縦士を含む乗務員の疲労管理制度の段階的な導入を進めており、今年12月末までに準備の整った航空会社から順次適用する。これに対し、当社では現行の生産能力を維持するため、昨年から人材確保を活発に行うなど準備を整えている」

 「NCAの事業モデルは中国、米国の比重が高いため、少しでもその依存度を下げていくことが重要と考えている。来年度以降にベトナム路線の開設を目指す。台湾は既にアトラスと共同運航しているが、自社運航を検討している。また他航空会社と提携し、メキシコなど中南米のネットワークも強化したい」

 ――今期の見通しについて。

 「海上輸送からは、これまでに考えられない貨物量がシフトしてきているが、勢いはいつまでも続かないだろう。供給面も全世界では旅客便の回復ペースが鈍く、コロナ前の19年度比でマイナスが続くが、東アジア―米国に限ると供給がプラスに転じており、想定以上に容量は増えている。旅客便が貨物需要の高い路線にシフトしていることも大きな要因とみている」

 「燃料油価格の上昇も含め現段階では前期よりは減益を想定。経常利益200億円を計画している」

 おおしか・ひとし 82(昭和57)年東大法卒、日本郵船入社。16年同社常務経営委員兼日本貨物航空専務取締役、18年4月から現職。東京都出身、62歳。