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 印刷 2021年04月27日デイリー版1面

国際海運ゼロエミ化へ、風力推進船 開発加速。GHG削減戦略 待ったなし

表・グラフ

 海上物流のゼロエミッション化に向け、風力推進船の開発プロジェクトが世界的に加速している。船上に設置する風力推進システムとしては、帆船のマストのような翼帆(ウイングセール)型や、マグヌス効果と呼ばれる物理現象を推進力に利用する円筒帆(ローターセール)型などがある。実船搭載も始まっており、今年1月にはシーカーゴが運航するRORO船「SC Connector」に、フィンランドのエンジニアリング企業ノルスパワーが開発した、角度調整が可能な円筒帆がレトロフィット(既存船への搭載)で設置された。

 海運業界では、大幅なGHG(温室効果ガス)排出の削減を可能にする技術を早急に確立する必要性が高まっている。

 IMO(国際海事機関)の調査によれば、2012年時点における国際海運全体からのCO2(二酸化炭素)排出量は約8億トン。同機関は50年までに08年比でGHG排出量を50%削減し、今世紀中早期にゼロとすることを目指す「GHG削減戦略」を18年に採択しており、造船所や舶用メーカーなどはこの戦略に沿った環境対応船の開発を行ってきた。

■強まる脱炭素化要求

 しかし、今月21日に開かれた気候変動サミットの特別会合で、米国のジョン・ケリー特使が「国際海運からのGHG排出量を50年までにゼロにする」という提言をするなど、脱炭素化に向けた圧力がさらに強まる可能性が高い。

 風力推進は風という自然の力を航行に活用し、ゼロカーボン燃料などと組み合わせることで、大幅なGHG排出量削減を可能にする技術として期待されている。

 ノルウェーの肥料大手ヤラ・インターナショナル子会社のヤラ・マリン・テクノロジーズは19日、翼帆型の風力推進装置「ウインド・ウイングス」の販売に向け、海洋エンジニアリングのコンサルタント会社であるBARテクノロジーズ(BARTech)とパートナーシップ契約を結んだと発表した。同システムは、22年に米カーギルの船舶に搭載することが決まっている。

 ウインド・ウイングスは、厳しい入港スケジュールを守りながらCO2の排出量を削減するという海運業界の課題に対応するために開発された。高さ45メートルの硬翼帆を甲板に取り付け、風力推進と航路の最適化を組み合わせることで、バルカーやタンカーなどの大型船舶の燃料消費量を最大で30%削減する。現在、ノルウェー船級協会DNVからの基本承認(AIP)取得に向け、手続きなどを進めている。

 日本では東北電力が、商船三井と大島造船所が研究開発を進めてきた硬翼帆「ウインドチャレンジャー」を石炭専用船に採用することを決定し、22年から運航を始める計画を立てている。韓国では大宇造船海洋が、DNVからVLCC(大型原油タンカー)とLNG(液化天然ガス)船に設置可能なローターセールシステムのAIPを取得。現代重工業などが開発したウイングセールもDNVからAIPを付与されている。

 ローターセールでは、国際的な共同開発プロジェクトもある。ドイツの不定期船大手オルデンドルフ・キャリアーズと英アネモイ・マリン・テクノロジーズ、英船級協会ロイド・レジスター(LR)、中国船舶集団(CSSC)傘下の上海船舶研究設計院(SDARI)は、22年の開発完了を目指し、角度調整が可能なローターセールをバルカーに搭載する計画を進めている。