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 印刷 2021年04月26日デイリー版1面

常石造船、三井E&Sに49%出資。図面供与・ガス燃料化で協業。資本提携で最終合意

 三井E&S造船を傘下に持つ三井E&Sホールディングスと常石造船は23日、三井E&S造船の発行済み株式数の49%を10月1日付で常石造船に譲渡することで最終合意したと発表した。資本提携実行後の具体的な取り組みは明らかにしていない。だが、エンジニアリング会社への転換を加速している三井E&S造船が、国内外に工場を持つ常石造船に対し、設計図面の供与や既存船型のガス燃料化支援など、技術サービスを提供する形で協業を深めるとみられる。

 株式譲渡契約書を23日付で締結した。競争当局の承認を経て譲渡を実行する。

 三井E&S造船と常石造船は2018年、商船事業分野で業務提携契約を締結。これまで設計開発力やコスト競争力の強化、これらを通じた受注の拡大などに協力して取り組んできた。

 両社は今回の資本提携で協力関係を深化させ、互いの商品営業力、設計力、研究開発力、グローバル生産能力をより一層活用。これにより、「グローバル競争に勝ち抜ける造船事業会社としての競争力強化を可能とし、両社の商船事業の持続的な成長を実現する」としている。

 常石造船は三井E&S造船との協業により、GHG(温室効果ガス)削減のための次世代燃料船の開発を加速したい考え。またデジタル技術による自動運航船の研究や、船舶の推進性能向上に向けた研究を実施・実用化するとしている。

 小型船事業については三井E&S造船子会社の新潟造船と、常石グループの三保造船所による共同設計や船台融通などの実施を目指す。

■国内外造船所に技術提案継続か

 【解説】三井E&S造船と常石造船は18年5月、商船事業分野の業務提携を締結。設計・調達・生産の各分野で連携を図ってきた。今回資本提携に踏み込むことで、相乗効果をさらに高める。

 具体的な取り組みは明らかにしていない。だが、三井E&S造船は「設計開発力の強みを生かしたファブレス(工場を持たない)事業に注力」する方針を掲げ、エンジニアリング会社への転換を加速していることから、三井E&S造船が常石造船に対し、船舶設計などの技術サービスを提供していくとみられる。

 想定される具体策は大きく3つ。1つ目が、常石造船が主力のバルカーでメニューを持たない船型の三井E&S造船による設計図面供与だ。

 三井E&S造船は昨年末、中国の合弁造船所YAMIC(江蘇揚子三井造船)に、6万6000重量トン型(66型)バルカーの図面を供与する協定を初めて締結した。同様の協定を今後、常石造船と複数の船型で結ぶ可能性がある。

 バルカーで特に有力な候補には、三井E&S造船が持つ2つの特殊船型、幅広浅喫水の環境対応の66型と、国内港湾向けに全長を抑えた58型が挙げられる。

 2つ目が、三井E&S造船の技術を生かした常石造船の既存設計船のガス燃料化だ。

 常石造船は今月、LNG(液化天然ガス)焚(だ)き82型バルカーを開発したと発表した。同社はこのほか、複数の船種でLNG燃料船を開発する方針を示しており、ガス船の自社建造で培ったガスのハンドリングを強みとする三井E&S造船と今後、ガス焚き船の設計で連携を強める公算が大きい。

 3つ目は、常石造船が建造する新規船種での協業だ。常石造船は国内工場で、小型LPG(液化石油ガス)船、RORO船、小型客船を新たに手掛けたい考え。小型LPG船は三井E&S造船に自社設計船があるため、常石造船がその図面を活用する可能性がある。

 今後の焦点は常石造船が三井E&S造船に49%出資する10月以降、三井E&S造船が常石造船以外の造船所に対しても、エンジニアリングサービスを制限なく提供していくのか、という点だ。

 三井E&S造船は「国内外の造船所に広く、図面供与や設計受託など技術を生かしたサービスを提案していく」として昨秋以降、日本や中国などの複数の造船所に技術サービスの営業を展開してきた。

 その結果として尾道造船と現在、新造船燃費規制「EEDI(エネルギー効率設計指標)フェーズ3」をクリアした40型バルカーの共同開発を進めている。

 三井E&S造船は常石造船との資本提携後も、図面供与や設計受託の対象を、常石造船やYAMICに限ることなく、技術提案を国内外の造船所に広く行うのか。この点に、三井E&S造船のエンジニアリング会社化への本気度が表れることになりそうだ。

(松下優介)