ゴールドマン・サックス証券ウェビナー
 印刷 2021年04月15日デイリー版1面

インタビュー コロナ禍前後でコンテナ市場激変】ONEジャパン社長・中井拓志氏、「運賃・スペース・ハコ」一体で

ONEジャパン社長 中井 拓志氏
ONEジャパン社長 中井 拓志氏

 新型コロナウイルス感染拡大の前と後で大きく変化した日本発着のコンテナ輸送市場。巣ごもり需要でアジア発欧米諸国向け荷動きが急伸し、日本発着でのコンテナ不足などこれまでの安定した状況から大きく変わりつつある。日本市場で最大シェアを持つオーシャンネットワークエクスプレス(ONE)ジャパンへの期待も高まる中、4月1日付で就任した中井拓志社長に今後の方針などについて聞いた。(聞き手 幡野武彦)

 ――ONEジャパンの新社長に就任した抱負から伺いたい。

 「基本的に事業は継続性が大切だと思っている。木戸貴文前社長とは、ONEジャパンの設立前の準備期間から計4年も一緒にやってきた。初年度からさまざまなプロジェクトを進めてきたが、これからもその路線を継承し、さらに成果を上げていくのが第一の目標だと思っている」

 「ただし、天災を含めた外部環境の変化は常にあるので、そのときは的確に対応する必要が出てくる。そうした変化に際してはちゅうちょなく舵を切ることも常に念頭に置いている」

■デジタル化が課題

 ――まだ十分ではない取り組みはあるか。

 「よく例えとして使うが、登山中に頂上が見えてようやく到着したと思ったらその先にはまた山頂が、というのは登山をしている人ならよく実感すると思う。それと同じで、一つ課題を克服してもまた新しいトピックスが出てくる。それがビジネスだと思う」

 「具体的な課題としては、デジタル化になるのではないか。ONEはいまグローバル全体でデジタルトランスフォーメーションを進めているが、日本もその波に後れを取らないようにしないといけない。ブッキングのウェブ化などはかなり進んだが、ウェブによる見積もりから契約、ブッキングまで行えるインスタント(即時)ブッキングである『ONE QUOTE』などはこれから。日本でもスポット貨物のセールスチャネルの一つとして導入し、しっかり根付かせたい。これは短期間で済むものではない」

 「ウェブブッキング導入などで大切なのは、社内の業務プロセスも標準化して変えていかないといけないことだ。顧客がウェブ上でブッキングをしたら、すぐスペースやコンテナ提供も確約できるような仕組みが必要になる。当然ながらそれはマニュアル操作ではなく、自動的に動く仕組みだ。そうしたことが出来上がったら、次は電子BL(船荷証券)の普及も待ったなしになるだろう」

 ――営業面の施策は。

 「日本は成熟市場なので、アジア地域のように貨物が右肩上がりで増えていくことは想定しづらい。その中でどうするか。ONEジャパンとしてはこれまで地方港展開や北関東インランドコンテナデポ(ICD)活用など、邦船時代にはあまり手掛けられない分野への展開を進めてきた。これらのプロジェクトは2018年度後半からスタートしていま継続中だが、かなり効果が出てきた。しっかりと継続したい」

■輸出入でバランス

 ――これらの展開で留意することは。

 「営業拡大というと輸出に目が行きがちだが、大切なのはバランス。例えば地方港での営業拡大に際し、輸出から入ると空コンテナをポジショニングするコストが発生するなど採算が苦しくなる。まずは輸入の取り込みからスタートし、それが定着したら輸出貨物を集荷して輸入で生じた空コンテナを使っていく。そうやっていけばうまく回り始めるだろう」

 ――北関東ICDはどうか。

 「これはもともと東京オリンピック・パラリンピック期間中に影響を受ける東京港周辺道路の混雑対策の側面が強かったが、コロナ禍によって需要が減ったことで販促のプロモーションなども停止した経緯がある。ただし、荷動きも戻ってきたのでまた積極的にやっていきたい」

 「北関東には輸出入貨物が多く、ICD活用は顧客にとっても利便性が高い。また余計なドレージ輸送の削減にもつながるので、環境負荷低減の側面からのニーズが高いとみている」

 ――コンテナ不足が深刻だが、アジア発に対して日本が「買い負けている」要素もあるのではないか。

 「それは船社によってさまざま。確かにスポット比率の高いアジア発の方が、いまのような市場環境だと有利かもしれない。そこはONEジャパンとしてシンガポール本社に日本の立場をしっかり伝えて、スペースやコンテナを供給できるようにする。それには一定の長期契約・安定貨物の規模(貨物量)が必要。規模を持つことで日本発着のサービスネットワークも維持される。ネットワーク維持のため規模を追求し、その結果としてシェアがあるのではないか」

 ――昨年のコロナ反動増による需給逼迫(ひっぱく)を踏まえ、今年の運賃交渉では相互に約束した本数をかなり細かく決めていると聞く。

 「船社によって対応に差はあるが、顧客側も昨年の混乱を嫌って今年はスペースやコンテナなどの安定供給を重視する姿勢を見せている。それに対して当社も、『運賃、サービス=スペース、ハコ(コンテナ)』を三位一体となってしっかり提供できるようやっていきたい」

■秋まで継続も

 ――このコンテナ不足はいつまで続くのか。

 「見通すことは難しいが、スエズ運河座礁事故もありしばらくは続くのではないか。米国西岸港湾の混雑は継続したままだ。一方で米国の小売業売上高などは好調に推移する。5月に入ればまた夏場の繁忙期に向けて、荷動きは盛り上がるだろう。今の状態で繁忙期に突入すれば混乱は避けられず、秋まで続く可能性もある」

 「運賃市況は高止まりしているとはいえ、この状況は船社にとっては実は苦しい。荷動きが急激に増減するとサービスレベルを維持できず、サプライチェーンのさまざまなところで支障が出る。例えば北欧州―日本・アジア―北米西岸サービスのFP1も、北米西岸港湾の混雑起因のスケジュール乱れが続き、顧客からはお叱りを受けるが、臨時船の投入など打てる手は全て打ってもいかんともし難い状況だ。劇的に改善する手段はなく、あとは地道に改善していくしかない」

■船積み計画集約

 ――業務改善なども進めている。

 「ONE(オーシャンネットワークエクスプレス)では昨年1年間かけて、全ての日本発着サービスのコンテナ積み付けプランニング業務を、熊本県にあるコンテナ積み付けプランニングセンター『次世代海上コンテナ輸送研究所(AOCTEL)』に集約した。ONEジャパンではAOCTELと密接に連携し、日々のオペレーション業務での改善活動を進めている。今のような需給逼迫(ひっぱく)下では、1本でも多く船積みすることが商売に直結する」

 「港湾関係では昨年春からターミナル・パートナーシップ・プロジェクト(TPP)を開始した。当社、パートナー会社(ターミナルオペレーター)、AOCTELなどが集まり、それぞれの立場で課題や改善要請などを行うものだ。残念ながらコロナ禍のためオンラインでの開催にとどまっているが、なるべく早く一堂に集まってさらに連携できるよう進めていきたい」

■南本牧に一元化

 ――横浜港では利用ターミナルを南本牧に集約した。

 「これまで横浜港では複数ターミナルを利用してきたが、4月から南本牧に一元化した。これで荷役作業の効率化やターミナル内でのトランシップなど柔軟な一体運営を実現。顧客側にとっても空コンテナのピックアップや搬出入なども1カ所となって利便性も大いに高まった。今後は他の港でもこうした効率的な運営体制を目指したい」

 なかい・たくじ 80(昭和55)年同志社大商卒、山下新日本汽船入社。91年日本郵船入社。08年経営委員などを経て、17年10月ONEジャパン取締役専務執行役員。21年4月から現職。63歳。