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 印刷 2021年04月14日デイリー版1面

インタビュー 船舶融資の舵取り】広島銀行船舶ファイナンス部長・吉崎能章氏、新燃料船でSDGs後押し

広島銀行船舶ファイナンス部長 吉崎 能章氏
広島銀行船舶ファイナンス部長 吉崎 能章氏

 広島銀行(本店・広島市)は瀬戸内の海事産業と地域経済への貢献を理念に掲げ、地方銀行として船舶融資で国内トップクラスの実績を誇る。4月1日付で船舶ファイナンス部長に就任した吉崎能章氏に事業方針を聞いた。(聞き手 柏井あづみ)

■融資残高7200億円

 ――部長就任に当たっての抱負は。

 「われわれは地元の船主や造船関連企業をはじめ顧客に恵まれており、この取引を継続することが地域の発展につながる。非常に重要な仕事であり、しっかり務めたい」

 「船舶ファイナンス部は基本的には黒子の存在であり、船舶融資の大方針の立案や融資審査、リスク管理を担い、顧客との日々の関係構築は各営業店の支店長や担当者が取り組んでいる。われわれの強みの一つには役員から各支店の若手まで海運・造船への理解が深く、船舶ファイナンス分野の人材が充実していることがある」

 「今年3月末の当行の造船・海運貸付残高は速報値で7200億円規模と1年前に比べて150億円増えた。このうち外航船主向けは6000億円弱で、円安効果もあって約140億円増加し過去最高を更新している」

 ――基本的な融資姿勢は。

 「船主には根強いリプレース需要があり、われわれも地元造船所の仕事をサポートしたい思いが強い。当行の船舶関連融資残高はこれから増えていくと思っている。顧客としっかり話をしていけば、前向きなチャンスもいろいろ出てくるはずだ」

■市況高で新造案件

 ――船舶ファイナンス市場の現状を聞きたい。

 「昨年はコロナ禍で厳しい環境だったが、ここにきて用船市況上昇というポジティブな兆しがあり、幾つかバルカーの新造案件が聞こえ始めている。これまで新造用船のタイミングを見計らっていた海外オペレーターが動き始めた感があり、用船期間も一時期より長くなりつつある。ただ、提示されている用船レートはまだ厳しく、船主は依然として新造船価と用船料のミスマッチを感じているはずだ」

 ――邦船オペレーターの新造用船需要はどうか。

 「LNG(液化天然ガス)燃料焚(だ)きをはじめ次世代環境船プロジェクトが検討されている。具体的な商談はこれからだが、瀬戸内船主の投資機会になることを期待したい」

 「新燃料船は高額投資になり、船員確保など船舶管理面の課題はあるが、間違いなくSDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた重要な取り組みであり、可能な限り前向きに検討したい」

 「用船は長期契約が前提であり、例えばLNG焚きメガコンテナ船は用船期間7年では厳しく、最低でも10年は必要。新技術の普及にはオペレーターも含めて業界全体で協力してリスクを分け合う必要がある」

 ――従来の重油焚き船舶の陳腐化リスクをどう見るか。

 「船舶燃料が転換していく時間軸に関わる問題であり、現段階でYES、NOを断定することは難しい。個別の船だけでなく、船主の経営全体でSDGsにどう取り組むかが問われる。例えば重油焚きの案件であっても、保有船隊の中でCO2(二酸化炭素)排出量が多い高齢船を売却し、最新のエコ船型にリプレースする計画ならば、SDGsに貢献できる」

 ――中国造船所への発注船に対する融資姿勢は。

 「中国建造や海外船主向けなど、われわれの地元の顧客と離れた案件を伸ばすことは考えていない。ただ、船主の危機感や変化の必要性は感じており、相談があれば、よく話を聞いて個別に検討していく」

 ――数年前まで盛んだった欧州船主と日本船主のセールス&BBCバック(売船後の再裸用船)の動向は。

 「当社も一部手掛けたが、最近は案件がかなり減ってきている。昨春にドル金利が下がり、円との金利差が縮小したことで、海外船主にとっての魅力が小さくなったのではないか。また一時期、船舶融資に消極的だった海外の金融機関も元に戻りつつあるようだ」

 ――昨夏にモーリシャス、3月にスエズ運河で、日本船主の保有船の大規模な座礁事故が発生した。

 「海難リスクは海運の宿命だが、船主責任制限条約や各種保険など、船主を保護する仕組みが存在する。こうした船主のリスクコントロールについてファイナンサーが正しく理解をしないと、シップファイナンスが成立しなくなってしまう。事故直後には一方的な臆測が飛び交うことがあるが、正確な知識を基に情報を見極め、トラブル時に顧客にいかに寄り添い、解決を図れるかが問われる」

■造船支援へ連携

 ――造船向け融資環境は。

 「新造船の手持ち工事量減少が深刻な課題だ。多くの造船所が昨秋から操業をスローダウンしており、売り上げが3割以上減っている関連企業もある。造船業は構内協力会社やブロック製作企業、舶用メーカーを含め、非常に裾野が広く、地域経済の根幹を支えている」

 「当行も船主の投資サポートで需要を高めるなど造船業の力になりたい。ただ、一企業、一金融機関で解決できる問題ではない。他の地銀とも知恵を出し合いながら、地方自治体をはじめ広く連携し、支援の可能性を探りたい」

 よしざき・よしあき 93(平成5)年広島大卒、広島銀行入行。今治支店、本店営業部、融資部を経て、17年船舶ファイナンス室長、今年4月1日から現職。50歳。