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 印刷 2021年04月09日デイリー版1面

伊藤忠商事、中古バルカー収益貢献。買船戦略が奏功、15隻強。スポット市況高を享受

伊藤忠は保有船事業の拡充に力を入れる
伊藤忠は保有船事業の拡充に力を入れる

 伊藤忠商事が2019年春から2年間で購入した中古バルカーがスポット用船市況上昇の追い風を受け収益に貢献し始めている。中古船相場の低迷期に購入を進めたことで、コスト競争力に優れた船舶を確保。マーケット連動の貸船契約への投入が奏功し、2月以降の用船市況上昇を一部の船舶が享受し始めた。商社船舶部が従来主力としてきたトレーディング(新造船・中古船・用船の仲介)事業の需要が停滞する中、伊藤忠は保有船事業を拡大すべく船隊の拡充に動いている。

 伊藤忠の船舶海洋部は19年春ごろからバルカーの中古買船を開始。当時、国内商社による中古船購入はほぼ前例がなかったが、中古船相場の割安感を捉えて、新しく策定した独自の投資ガイドラインに基づき買船を進めた。

 今年初めまでにカムサマックスを中心にハンディマックス、ハンディサイズを含めて中古バルカー計15隻強を購入。藤本博和部長は「歴史的に見て、中古船価格が比較的低い時期に調達できた」と振り返る。

 購入したバルカーは船舶保有子会社アイメックスの船隊に加わったほか、一部をギリシャ船主大手との合弁会社にも投入。研修生を派遣しギリシャ船主の優れたマーケット観に基づく船の回し方などを吸収している。

 伊藤忠の保有船事業は現在、共有を含めて45隻強を擁する。ここにきて中古船価格が上昇していることを受けて保有船3隻の売却を決定し、「船隊運営サイクルの理想である『安く買って、高く売る』ことを実行できている」(藤本氏)。

 アイメックスは従来の船舶保有・管理事業に加えてこの4月、同社内に新組織を設立。本社から3人の若手を投入し、中古船取引と用船仲介に集中して取り組む体制を構築している。

■広島に駐在員

 伊藤忠が保有船事業の高度化に注力する背景には、商社の船舶ビジネスが直面する市場環境の激変がある。日本の新造船受注減少や用船短期化を背景に、従来主力のトレーディング事業だけでは成長が難しくなっているためだ。

 新しいマーケット環境に対応し、伊藤忠は4月から船舶海洋部の組織を機能別に再編。「トレーディング」「保有船」「海洋・LNG船保有」で課を組成し、ビジネスセグメント別に専門性と機動力を一段と高めて新規ビジネス開拓にまい進する。

 営業ネットワーク面では、昨年4月から中四国地区への船舶海洋部スタッフの常駐を開始。伊藤忠中四国支社(広島市)の機械課に4月から1人増員し3人を配置、関西から九州、四国地方をカバーしている。

 これまでは東京からの出張ベースで対応していたが、「どうしても距離と時間にギャップが生じていた」(同)。特にコロナ禍で出張が難しくなったことで、船主や造船所、舶用メーカー、地銀など海事産業が集積する地域における現地拠点の重要性が増している。常駐者は置かないが、愛媛県今治地区にも出張所を新設し、出張者の拠点を整えた。

■次世代船を開発

 伊藤忠は中古船購入の一方、日本造船の受注復活に向けて次世代燃料船の開発プロジェクトに参画している。

 昨年4月、今治造船、三井E&Sマシナリー、日本海事協会(NK)、独MANエナジー・ソリューションズなどと共に「アンモニア焚(だ)きゼロエミッション船」開発計画を立ち上げた。さらに需要の増加を見込み、燃料アンモニアのサプライチェーンの構築にも取り組んでいる。

 中韓造船に先駆け25年前半からアンモニア燃料と低硫黄油を選択可能な2元燃料船10隻の建造を計画し、保有船を段階的に代替する方針。普及促進に向け、経済産業省の「グリーンイノベーション基金」の活用も視野に入れる。

 このほか、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献として、フードロス低減を主眼に食品の鮮度保持システム「DENBA」の普及にも注力。食品ロス低減にとどまらず、船舶への搭載による船員の食環境向上や倉庫・トラック輸送などコールドチェーン(低温物流)への投入も展開中だ。